前々回とその前のブログでは、DOHaD(ドハド)に関連した内容を書きました
・胎児・乳児の栄養と疾患の起源(DOHaD)
・妊娠早期に妊娠糖尿病になった女性の子は自閉症リスクが高い?
胎児・乳児の栄養と疾患の起源(DOHaD)でも書きましたが、胎児の遺伝子のエピジェネティックな変化には葉酸という栄養素が非常に重要だと言われています
ただ、葉酸については「天然の葉酸じゃないとダメ!」といった意見をお持ちの方もいらっしゃるようです
今回と次回の2回は、「葉酸は天然型が優れている?」と題し、合成の葉酸と天然の葉酸についてまとめたいと思います
●妊娠可能な年齢の女性の葉酸摂取量について
妊娠可能な年齢の女性については、以前から十分に葉酸をとる必要があることは指摘されています。
また、最新版の「日本人の食事摂取基準2015年版」においても葉酸については以下のような注意書きがあります
『妊娠を計画してい女性、又は、妊娠の可能性がある女性は、神経管閉鎖障害のリスクの低減のために、付加的に400μg/日のプテロイルモノグルタミン酸の摂取が望まれる』
プテロイルモノグルタミン酸とは合成の葉酸のことですが、厚労省は栄養補助食品に安易に頼るべきではないとしながらも、エビデンスをもとにして考えた場合には栄養補助食品での摂取も選択肢のひとつとしています。
ただ忘れてはいけないこととしては、高容量の葉酸摂取はビタミンB12欠乏の診断を困難にするだけでなく、悪影響(神経障害)も報告され始めているため、医師の管理下にあるべき状態を除いて上限量を超えて摂取することは避ける必要があります
<女性の葉酸の耐容上限量>
・15~29歳 : 900μg/日
・30~69歳 : 1,000μg/日
●栄養補助食品と合成葉酸
一般的に、下図のような構造をしたプテロイルモノグルタミン酸のことを「葉酸(folic acid)」と言い、栄養補助食品のほとんどは人工的に合成されたプテロイルモノグルタミン酸を使用しています。
<葉酸(folic acid)の構造式>
葉酸(folic acid)は天然葉酸に比べて安定しているだけでなく、葉酸は小腸でプテロイルモノグルタミン酸の形で吸収されるため、吸収されやすい特徴があります。
なお、日本人の食事摂取基準の葉酸の値は葉酸(folic acid)で摂取した場合の数値です。
●天然葉酸の特徴
通常私たちが食べ物から摂取している葉酸は、ほとんどがグルタミン酸が複数結合したポリグルタミン酸型をしており「葉酸(folate)」と呼ばれます。
葉酸(folate)は、熱に弱いため調理中に半分近くが分解してしまうか、水溶性のために茹で汁に流れ出てしまうと言われています
さらに、体内への吸収率は約50%で摂取量の半分程度しか体内で利用できないと考えられています。
このように安定性の良くない天然型の葉酸(folate)は、栄養補助食品として利用した場合にも賞味期限内での有効成分の含有量保証が難しいと言えます
●市販葉酸サプリメントの実態
最近では、インターネット上で「天然型の葉酸」が入っているとうたっているサプリメントの広告を見かけるようになりました。
しかし、上記でもご説明した通り、天然型の葉酸(folate)は安定性が悪いため本当に有効成分量が含まれているのかは疑問です
平成23年5月に、国民生活センターから発表された資料(胎児の正常な発達に役立つ「葉酸」を摂取できるとうたった健康食品)によると、26銘柄のうち1銘柄は葉酸の含有量が栄養表示基準を下回っていたそうです。
また、原料として天然型の葉酸を配合しているものでは含まれていた葉酸のほとんどが葉酸(folate)ではなく葉酸(folic acid)で、天然型の葉酸が摂取できるわけではないことが明かとなっています
葉酸が多く含まれる食品には、レバーやウニ、緑黄色野菜などがあります。
特に妊娠を希望している女性や妊娠の可能性のある方は、葉酸だけでなくその他のビタミン、ミネラルもたくさん補給できるレバーや緑黄色野菜を積極的に食べたいですね
ただ、食事に神経質になりすぎてしまうことがストレスになってしまう場合もあるため、大変な場合には信頼のおけるサプリメントを活用するのもひとつの手だと思います
さて最後になりますが、ヘルシーパスは明日からゴールデンウィーク休みに入ります。
5月2日(土)~5月6日(水)は商品の発送、お問い合わせ対応などができませんのでご了承くださいませ。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い申し上げます
(さ)
<参考>
・厚生労働省HP
・日本人の所持摂取基準2015年版
・独立行政法人 国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報
・日本人の水溶性ビタミン必要量に関する基礎研究(葉酸)