最近、一般の方でも遺伝子検査が簡単に受けられるようになり、自分の遺伝子について興味を持つ方が増えているかもしれません
でも、そもそも遺伝子とは何かご存知ですか
そこで今回は「遺伝子とは何か?どんな働きをするのか?」などについて、できるだけ簡単にまとめたいと思います
●遺伝子って何?
私たちの体は筋肉や骨、皮膚などから成り、酵素やホルモンなどが働くことで生きています。
これらのほとんどはタンパク質が材料になっており、ヒトの体をつくり出して生命を維持するためには、「いつ、どこで、どれだけ、どんな性質のタンパク質をつくるのか」という情報がとても重要であり、そのタンパク質の設計情報が遺伝子です
遺伝子は体内にある約60兆個もの細胞ひとつひとつに存在し、その本体は「DNA(デオキシリボ核酸)」と呼ばれる物質です。
ひとつの細胞内にあるDNAをつなぎ合わせると、計算上ではなんと長さが約2mほどもあるそうです
そのため、DNAはヒストンと呼ばれるタンパク質に巻き付いてコンパクトに凝集し、46本の棒状の染色体を作り出して核内に収まっています。
[染色体は22対(44本)の常染色体と、雄雌を決定づける1対(2本)の性染色体の合計23対(46本)]
●DNAについて
DNAはリン酸と糖(デオキシリボース)と塩基が結合してできたヌクレオチドという分子が鎖のようにつながってできています
塩基には、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類あり、AとGがプリン塩基、CとTはピリミジン塩基と呼ばれます。
痛風で気にされる方が多いプリン体とはこのプリン塩基のことで、細胞中には必ず存在するため、同じ重さでも細胞の数が多い食品ほどプリン体量は多いと考えられます。
(例:魚卵のプリン体量の比較 うに > いくら)
DNAは1本の鎖のままだともつれやすくて不安定ですが、塩基のうち「AとT」と「CとG」はそれぞれ引き寄せあう(水素結合する)ため、DNAは2本の鎖が引き寄せあうことで安定した形をとっています。
そして、この2本の鎖がらせん状に絡み合うことでDNAはさらに安定した構造をつくっています
<DNAのらせん構造>
●タンパク質の作られ方
それでは、私たちが生きていくうえで重要なタンパク質はいったいどのようにして作られるのでしょうか
DNA情報をもとにタンパク質ができるまでを、大きく2つの段階に分けてご紹介します
①DNAからメッセンジャーRNA(mRNA)へ情報を転写
DNAは核内に存在しますが、タンパク質は核の外でつくられます。
そのため、DNAからタンパク質をつくるためには、長いDNAから必要な部分だけを読み取る(転写する)必要があります
実際には、DNAという本に書かれている文字(塩基:A,G,T,C)を似たような文字を使って転写します
この転写するものはRNA(hnRNA)と呼ばれ、DNAと同じようにリン酸と糖と塩基でできていますが、糖と塩基が異なります[糖はリボースで、塩基はTの代わりにU(ウラシル)]。
しかし、hnRNAに転写された塩基が全てタンパク質の設計に関わっているわけではないため、タンパク質の設計に関わらない部分(イントロン)が切り離されて(スプライシング)、タンパク質の設計に関わる部分のみ(エクソン)がつながってメッセンジャーRNA(mRNA)となります
②mRNAからタンパク質へ翻訳
DNAのタンパク質情報を転写したmRNAは核の外へ出てきて、タンパク質を作り出す工場であるリボソームがくっつきます
mRNAにはA,G,U,Cの4種類の塩基が並んでいますが、AUGと並んでいる部分がタンパク質の合成開始を指定する開始コドンと呼ばれ、アミノ酸のメチオニンが対応します
開始コドン以降は3塩基ずつ区切ってコドンと呼ばれる暗号で解釈され、それぞれのコドンに対応するアミノ酸が転移RNA(tRNA)によって運ばれてくっついていき、タンパク質がつくり出されます
いかがでしょうか
本当に簡単にまとめてしまったため、生物が苦手な方にはちょっと難しい内容だったかもしれませんね
ちなみに、長いDNAのうちタンパク質の設計情報を担っているのは2~3%しかないようで、それ以外の98~97%の部分はどんな意味があるのかはまだ完全に分かっていません
遺伝子って興味深いですね
次回は最近注目を集めているマイクロRNA(miRNA)についてご紹介したいと思います
(さ)
<参考>
・中国労災病院中央検査部のホームページ
・イラストレイテッド ハーパー・生化学 [原書29版]
・イラストレイヤー 生化学 第6版
・好きになる 分子生物学 (多田富雄:監修、萩原清文:著)