日本人間ドック協会がまとめた、「2015年全国集計結果」によると、人間ドック総受診者は316万人で、そのうち「肝機能異常」*は33.2%で「高コレステロール」(33.4%)に続く多さであり、受診者の約3人に1人が肝機能異常を指摘されていることがわかりました。
*“肝機能異常”に関する判定は各施設による判断をもとに集計
(日本人間ドック学会からのコメント)
そこで今回は「肝機能異常」に着目し、その問題や改善方法についてご紹介したいと思います。
●肝機能異常の現状
人間ドック受診者約316万人のうち、「肝機能異常」を示したのは約105万人にのぼり、2年連続で100万人を超えました。
性別でみると、「肝機能異常」は男性が40.2%、女性が22.8%、
男性は50代(42.8%)が最も多く、次いで40代(41.0%)、
女性は60歳以上(29.0%)と50代(26.5%)が平均数値を上回っていました。
●肝臓の機能と肝機能異常
肝臓は胃や小腸・大腸から吸収された栄養素を化学反応させ、エネルギーをグルコース(ブドウ糖)の形で取り出し、余剰エネルギーを肝臓自体や筋肉、脂肪細胞で蓄えやすい形に変化させています。
また、胃や小腸・大腸から吸収された栄養素を蓄える大切な臓器です。
肝臓の機能が低下すると、まず栄養素の供給が滞り、さらに毒素や老廃物が排泄されず体内に蓄積され、悪化すると疲労感や倦怠感が出てきます
肝疾患には急性ウイルス性肝炎、劇症肝炎、慢性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎[NASH]、アルコール性肝炎、肝硬変、胆汁うっ滞性肝疾患、遺伝性の肝障害などがあります。
以前は、「お酒を飲みすぎると肝臓を悪くする」といわれ、事実アルコールが原因の肝炎もあります。
ですが、最近は「非アルコール性脂肪性肝炎[NASH]」による肝機能異常が急増しています。
[NASH]は基本的に糖尿病・肥満・脂質異常症、インスリン抵抗性が原因と言われており、脂肪肝から脂肪性肝炎までの肝疾患の一群を表し、慢性の肝炎および肝硬変に移行することもあるため注意が必要です
●肝臓を労わる意識を
肝臓の機能が低下すると、疲労感や倦怠感などの症状が出るだけでなく、そのまま放置すると肝硬変や肝がんへとつながる可能性があります
そうなってしまう前に、健診などで「肝機能異常」を指摘された際には、肝臓を労わる意識を持つように出来ると良いと思います。
ここで肝臓を労わる生活習慣、栄養素をご紹介します。
◇生活習慣
・(過体重の場合)適正体重を目安とした減量
・適正なエネルギーの摂取
・アルコール量の見直し
・ビタミン、ミネラルの積極的な摂取
・規則正しい生活をこころがける
・適度な運動
◇栄養素(肝臓を労わる栄養素)
肝臓を労わる栄養素として挙げられるのは、以下の栄養素です。
代謝に必要なたんぱく質を摂取するとともに、活性酸素や過酸化物、ウイルスなどから疲弊した肝臓を保護してくれる働きのある栄養素を摂ると良いと思います
体の中の「肝要」な臓器なので、日ごろから意識してケアを心掛けたいものです
(あ)
国立成育医療研究センター 肝臓とは
厚生労働省 肝臓の役割 (http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/dl/s0619-5d01-32.pdf)
厚生労働省 肝疾患に関する留意事項 (http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11303000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Roudoueiseika/0000153747.pdf)
脂肪肝を防ぐ食生活と治療を考える (https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/3/105_406/_pdf)
経静脈栄養Vol.21 慢性肝疾患における血清亜鉛およびセレン濃度の測定とその臨床的意義 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspen/21/Supplement/21_Supplement_s123/_pdf)
クラウス13版 栄養学と食餌療法大事典
栄養の基本がわかる図解事典(成美堂出版)