糖質制限と高タンパク質食摂取が流行っていますね
厳しい糖質制限をしてタンパク質を過剰摂取してしまうことにおいては賛否両論ですが、高タンパク質食を摂ることで肝臓の脂肪を減らすことができるかもしれないようです
今回は、「高タンパク質食摂取と肝臓の脂肪」について調べている論文をご紹介します
●高タンパク質食は肝臓の脂肪を減らす
「2型糖尿病の患者が高タンパク質食を摂ったところ、6週間以内に、肝臓脂肪が最大で48%減少した」という内容のドイツ糖尿病研究センターからの研究報告です
【目的】
肝臓に過剰に脂肪が蓄積してしまう非アルコール性脂肪肝は、肥満やインスリン抵抗性と密接に関連しており、心血管疾患や2型糖尿病と関連していると言われている。
また、肝臓の脂肪蓄積には食事が関与しており、特に動物性タンパク質、炭水化物、および飽和脂肪の含有量が多い高カロリーである西洋型の食事は、肝臓の脂肪蓄積を促進する。
高タンパク質食はメチオニンや分岐鎖アミノ酸(BCAA)が豊富であり、インスリン抵抗性を誘発させる可能性があるが、肝臓脂肪を減少させる事が示唆されている。
そこで、2型糖尿病および非アルコール性脂肪肝を有する人における、メチオニンおよびBCAAの含有量が異なる「動物性タンパク質」と「植物性タンパク質」をそれぞれ多く含む食事の効果を調べた。
【対象】
2型糖尿病と非アルコール性脂肪肝を有する49~78歳の男女37名。
【方法】
2013年6月から2015年3月までの期間追跡した前向きコホート研究。
対象者を、肉や魚、乳製品の多く使用した「動物性タンパク質食群」と主にマメ科の植物を多く使用した「植物性タンパク質食群」の2群に分け、カロリー制限なしで6週間食事を摂ってもらった。
なお、食事の内容はカロリー量が等しく、栄養素組成も同じであった(タンパク質:30%、炭水化物:40%、脂質:30%)。
そして、研究の開始時および終了時には体格指数、体組成、腰囲、安静時エネルギー消費量、呼吸指数、体脂肪、肝臓脂肪などの他、血中のグルコース、インスリン、肝酵素、炎症マーカー、遊離脂肪酸、遊離アミノ酸のレベル、全身インスリン感受性などを測定した。
【結果】
・動物性タンパク質食群が48.0%、植物性タンパク質食群が35.7%と肝臓の脂肪が有意に減少し、相対的な肝臓脂肪の減少は空腹時血糖と空腹時のインスリンの相対的な減少と関連していた。
・両群ともにγ-GTやASTの間に有意差はなく、AST/ALT比は1未満であり、肝機能は食事による影響は受けていなかった。
・全身のインスリン感受性は両群ともに改善し、それは肝臓脂肪の減少と有意に関連したいた。
・植物性タンパク質食よりも動物性タンパク質食を食べた後の方が血中のBCAAとメチオニン濃度が高く、植物性タンパク質食群ではアスパラギンとアルギニンが増大した。
・炎症性マーカーにおいては、動物性タンパク質食群ではIL-18が、植物性タンパク質食群ではTNFαが減少した。
【まとめ】
2型糖尿病患者において、高タンパク質食によって肝臓脂肪が減少し、インスリン抵抗性および肝臓の炎症を改善する可能性がある。
<論文要旨>
http://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(16)35229-5/abstract
一般的には、タンパク質の必要量は体重1㎏あたり1g程度だと言われており、体重が60㎏の人の場合には1日に60gのタンパク質の摂取が勧められます。
もし、今回の試験の食事内容(タンパク質のエネルギー比が30%、炭水化物が40%、脂肪が30%)で2,500kcalの食事を摂った場合は、タンパク質を187.5g、炭水化物を250g、脂質を83g食べることになり、かなりの高タンパク質食であることが分かります
2型糖尿病の方が高タンパク質食による食事療法を行う場合には、医師の管理下で様子を見ながら行う必要がありますが、腎疾患がない場合には試してみる価値はあるかもしれないですね
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット(http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=57317&-lay=lay&-Find)
・日本人の食事摂取基準 2015年版