日々進化し、おいしさと鮮度を長期間保つ冷凍食品。
廃棄物が出にくく調理が簡単、味も変わりにくいため、時短や食品ロス対策としても注目されています🧐✨
栄養バランスを考えて、タンパク質や彩りを足すなど、活用されている方も多いのではないでしょうか?
今回は、最近注目の『冷凍食品』についてご紹介します📢✨
目次
冷凍食品の利用実態
令和4年の消費者動向調査では、年代が低くなるほど『献立の考案を簡便化したい』割合が多く、中でも『冷凍食品を活用している』と答えた割合が約4割をこえていました。
冷凍食品が、いかに便利で身近な存在であるかがわかりますね☺🍴
【 食の簡便化のために家庭で実践していること 】
1⃣『冷凍食品を活用』(44.4%)
2⃣『レトルト食品・缶詰・瓶詰を活用』(34.5%)
3⃣『品数・材料を少なくする』(32.3%)
【 購入量の多い冷凍食品 】
1⃣『そのまま食べられる調理食品』(18.3%)
2⃣『水産加工品』(15.8%)
3⃣『肉類』(13.3%)
『忙しい』(37.0%)、『面倒』(19.6%)、『家事以外に時間を使いたい』(19.2%)という理由が多く、さらには例年の猛暑などで『自宅で簡単に済ませる』ことが習慣化しているようです。
冷凍食品の加工技術
最近では、本格的なメニュー『冷凍グルメ』のオンラインショップや冷凍食品専門店が登場するなど『時短』『日持ち』『食品ロスの削減』などをキーワードに充実しています。
こだわりの技術が、出来立てのおいしさを保つ秘密のようです。
すべての工程が重要
品質を保つために『①冷凍前調理 ②冷凍加工 ➂冷凍保存 ④解凍』の過程はどれも重要とされています。
一つでも失敗すると、味や食感のすべてが台無しになってしまいます。
『冷凍前調理』や『急速冷凍』について、食品メーカーのこだわりの一例をご紹介します。
ほうれん草
その日に採れた葉物野菜を、収穫後30分以内に工場に持ち込み新鮮なまま冷凍。
3分という短い時間で急速凍結することで、中の組織が壊れることなくおいしさや鮮度を保つ。
冷凍餃子
食材の食感を活かすため、素材をカットするサイズ、具材の混ぜ合わせや調味料の投入順といった全工程を調整。
-30度から-35度以下で1時間程度の急速冷凍することで、調理した際に最高の状態で味わえる。
急速凍結とは?
食品を凍らせた場合、ー1度程度から凍り始めて、-5度でほぼ凍結します。
食品中の水分は、この温度帯で氷結晶となりますが、この温度帯を通過する時間が長い緩慢凍結の場合は、食品中で氷結晶が大きくなり、食品の組織が壊れてしまいます。
急速凍結はこの温度帯を急速(ほぼ30分以内)に通過させ、組織の損傷を極力少なくする凍結方法です。
『自然解凍OK』も可能に
1999年には、凍ったまま弁当箱に入れれば昼に食べ頃になる『自然解凍OK』の商品が誕生しました。
自然解凍できる商品は、食べるまでに細菌(微生物)が増殖しないように「35℃で9時間保存(夏季の過酷な条件)を考慮した上で、細菌試験、味・風味・食感の官能試験を行い、クリアすること」が基準とされています。
製造過程でも厳格な取り扱いが定められ、その規格に沿って、一般的な衛生管理手法に加えて、HACCP※による衛生管理などのもと製造されています。
※HACCP…安全な食品を製造するために「原料の入荷から製造、出荷までのいくつもの工程で危害要因となるポイントをチェックする衛生管理の手法」。
家庭でできる冷凍保存のポイント
忙しいとき、困った時の一品に!プラスできる野菜やタンパク源があるととても便利です。
美味しくいただくには、それぞれの食材に合った解凍・調理をすることが大切です。
失敗しない保存方法
保存する際に気を付ける5つのポイントをご紹介します。
① しっかり包む
乾燥や脂肪の酸化を防ぐため、ラップやポリ袋などでできるだけ空気を遮断する。
② なるべく速く凍らせる
食品をあらかじめ冷やし、熱伝導性のよい容器に食品の厚さを薄くして並べて、冷凍室の温度調節を最も冷える状態にセットして凍結!
冷凍室の急速凍結機能があれば、それを利用する。
➂ 冷凍室内は隙間を少なく
凍った食品自体が保冷剤の役目を果たし、お互いを冷やし合います。
隙間がある場合には、保冷剤などを活用するのもおすすめです。
④ 扉の開閉は短く
冷凍室内の温度上昇を防ぎ、電気代の節約にもなります。
➂ 早めに使い切る
緩慢凍結による組織の痛みや保存中の品温変化により品質低下が早く進む場合があるので、2~3週間以内に使い切る。
食材に応じた解凍・調理方法
美味しく楽しむために、それぞれの食材に合った解凍・調理をしましょう。
生鮮品
(魚介類や肉類など、生のまま凍結し、解凍すると元の状態に戻るもの)
● 半解凍状態になったら、すぐに調理。解凍しすぎないことが大切。
● 水産冷凍食品は、表面に氷の膜がついているので、水っぽくならないようにペーパータオルなどで水気を十分にふき取ってから調理する。
野菜類
● 凍ったまま直接加熱する。
● ほとんどの冷凍野菜はブランチング(急速凍結する前に生鮮品を調理する場合の7割から8割程度の加熱処理を行うこと)してあるので、加熱時間は生野菜の2~3割の時間でOK。
果実類
● 冷凍果実は、涼しいところで自然解凍し、解凍しすぎない状態で食べる。
● 外気に触れると酸化してビタミンなどの栄養分が失われるため、なるべく包装のまま解凍する。
● 生の果実より品質変化が早いので、食べる分だけ解凍する。
冷凍によるデメリット
とても便利な冷凍食品ですが、中には合わない食材もあります。
昇華と酸化
冷凍した食品は、微生物が増えないので腐ることはありませんが、科学的な反応によって品質は落ちてしまうことがあります。
代表的なのが、冷凍室の乾燥による「昇華」です。
氷がいきなり水蒸気になるため、氷だった部分に穴が開き、食べ物の成分が空気に触れて色が悪くなったり、においが発生したり、スカスカになって食感が変わったりします。
もう一つは、脂が空気に触れて起こる「酸化」です。
色が変わったり、嫌な味がするようになったりします。
【 冷凍保存に不向きな食品 】
1⃣ 水分の多い野菜や果物(きゅうり、レタス、トマト、メロン、スイカなど)
2⃣ 乳製品(ヨーグルト、クリーム、カスタード、やわらかいチーズ)
3⃣ 生の卵(殻付きの卵、ゆで卵)
4⃣ ゼラチンを使った食品(ゼリーやババロア:ゼラチンは冷凍すると固まらなくなるため)
5⃣ こんにゃく(水分が多く含まれているため、解凍時に水分が流れ出て縮んだゴムのようになる)
栄養は損なわれる?
冷凍野菜は、ブランチングの時点で栄養素を損失してしまう可能性があります。
そのため、市販の冷凍野菜は、栄養の損失を最小限に抑える工夫がされているものもあります。
① 急速冷凍する(-18度以下で冷凍保存中の栄養価は、長期間維持される)
② 栄養価が高い旬の時期に収穫したものを冷凍保存
③ 収穫して、短時間のうちに冷凍 など
(2007年にアメリカで行われた調査によると、ブロッコリーに含まれるビタミンCは、収穫して1週間たつと約50%減少するのに対し、収穫してすぐに冷凍した場合は、1年たっても10%近くしか減少していなかったとの報告もあります。)
添加物の使用は?
冷凍食品は一般的に「-18度以下で保存」され、この温度では腐敗や食中毒の原因となる細菌が活動できません。
そのため、保存料を使用していない商品もあります。
しかし、保存料以外の目的で添加物を使用している商品もあります。
使用の有無は商品ごとに異なるため、詳しくはパッケージ裏面の原材料名表示をご確認ください。
まとめ
「バランスの良い食事を1日3食準備するのは難しい」という声はよく聞かれます。
現代では『簡単で時短』が求められ、冷凍食品の活用は忙しい日々の強い味方です。
しかし、効率を優先するだけでなく、自分に必要な栄養素が十分かどうかも意識することが大切です☺✨
必要に応じて、不足しがちな栄養素を補うことも検討しましょう。
日本政策金融公庫 消費者動向調査 2022
鈴木徹 Nippon Suisan Gakkaishi 82(6),952 2016
農林水産省 aff 607号「冷凍食品とフリーズドライ食品」2021
はっしー
管理栄養士