まだまだココナッツオイルが流行していますね
ココナッツオイルには中鎖脂肪酸が豊富で、この中鎖脂肪酸からできるケトン体に様々な効果が期待されています
さて「ケトン体」という言葉をが出てきましたが、そもそもケトン体とは何かご存知でしょうか
そこで今回は「ケトン体」について簡単にご紹介します
●ケトン体とは
カルボニル基と2個の炭化水素基とが結合した化合物の総称で、一般式はR-C=O-R′で表されます。
体内ではアセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンなどがケトン体と呼ばれます。
ケトン体は脂肪の合成や分解などの代謝中間物質で、通常はほとんど血中には存在していません。
しかし、糖尿病や糖質制限、絶食など、脳や筋肉のエネルギー源である「グルコース」が利用できない場合に、代わりのエネルギー源として使われます。
●脂肪酸とケトン体
何らかの理由でグルコースが体で使われなくなると、血糖値を維持するために、まずは肝臓に蓄えられているグリコーゲンが使われます
しかし、肝臓のグリコーゲンは18~24時間程度でなくなってしまうため、次は脂肪細胞に蓄えられている脂肪(脂肪酸)や筋肉(タンパク質)がエネルギー源となります。
脂肪酸がケトン体となって働くまでの流れは以下の通りです
①脂肪酸はそのままでは脳のエネルギーとして使えないため、脂肪細胞から切り離された脂肪酸(パルミチン酸)は血液中のアルブミンとくっついて肝臓に運ばれる。
②肝臓の細胞(肝細胞)に脂肪酸が取り込まれると、カルニチンシャトルと呼ばれる入口からミトコンドリア内に入り、脂肪酸はアセチルCoAまで分解される(β酸化)。
③アセチルCoAからは、ケトン体であるアセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸が作られ、これらが肝臓から放出されて血流にのり、筋肉や脳のエネルギー源として使われる。
※ケトン体をエネルギー源にすることで、筋肉をエネルギー源にすること(筋肉の分解)を抑えることができます。
※アセト酢酸からできるアセトンもケトン体ですが、脳や筋肉のエネルギー源にはならず呼気から排泄されます。
アセトンを含む呼気は、甘いフルーツが腐ったようなに臭いがします。
ココナッツオイルに多い中鎖脂肪酸は、小腸から吸収された後にコレステロールには取り込まれずに血流にのって肝臓に運ばれます。
また、肝臓ではカルニチンシャトルを介さずにミトコンドリアに入って分解され、ケトン体として素早くエネルギー源となります。
そのため、ココナッツオイルは「油なのに摂っても太らない」、「中性脂肪やコレステロールを上げない」、「糖尿病や認知症に良い」などの効果が期待できると言われています。
ここまでの話では、ケトン体はとても良いものに思えますね。
しかし、糖尿病や脱水の状態でケトン体が増えると、体は強い酸性に傾き、脱水症状や意識障害などひどい場合には死に至る大変危険な状態(ケトアシドーシス)になってしまうことがあります
特に1型糖尿病の方や2型糖尿病の方で清涼飲料水の飲みすぎ(ペットボトル症候群)は注意が必要です
※ケトーシスという言葉がありますが、ケトーシスはケトン体が多い状態、ケトアシドーシスはケトン体が多くなりすぎて危険な状態を指します。
油は奥が深いですね~
(さ)
<参考>
・イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版
・栄養学と食事療法大辞典(ガイアブックス)
・一目でわかる 医科生化学(メディカル・サイエンス・ニュートリション)
・肥満と脂肪エネルギー代謝-メタボリックシンドロームへの戦略-(建帛社)
・http://ketogenic-diet.org/practice/practices-4.html
・労働者健康福祉機構 中国労災病院 中央検査部HP(http://www.chugokuh.rofuku.go.jp/kensa/ippan/testape.html)
・公益社団法人 日本薬学会HP(http://www.pharm.or.jp/dictionary/wiki.cgi?%E3%82%B1%E3%83%88%E3%82%A2%E3%82%B7%E3%83%89%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%B9)