【気になる菌シリーズ】アッカーマンシア・ムシニフィラについて


腸内には1,000種類以上、100兆個、重さにして1.5〜2kgの細菌が生息しているといわれていますが、今回はやせ型の人に多く存在するといわれる「アッカーマンシア・ムシニフィラ」について紹介します😍✨

アッカーマンシア・ムシニフィラって何?

アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)はベルコミクロビウム(Verrucomicrobia)門に属するグラム陰性の偏性嫌気性細菌です。
2004年にデリエンらによって健康なヒトの糞便から発見され、新菌属アッカーマンシアとして提唱されました。
ヒト、マウス、チンパンジー、馬、豚などの動物の腸管に存在することが確認されており、特に結腸に多く、健康な成人では菌叢全体の0.5–5%を占めることや、生後1カ月の乳児糞便から検出されはじめ、ヒトのライフステージで糞便中の量が変動する なども知られています!

アッカーマンシア・ムシニフィラは、ムチンを好み分解するという特徴があります。
このムチンとは、粘膜を覆う粘性糖タンパク質で、胃や大腸では厚く、小腸では薄く断続的に覆い、胃と大腸では数百 µm から 1 mm 近くになるとされています。
アッカーマンシア・ムシニフィラはムチンを取り込み分解しますが、ムチンを産生させる役割もあるため、腸内で繁殖すると、腸の壁の厚さが増し、腸管バリア機能の強化に関与すると考えられています😳💡

アッカーマンシア・ムシニフィラの効果

アッカーマンシア・ムシニフィラの気になる効果について、いくつかピックアップしてみました!

肥満改善効果

成人32名を対象に、アッカーマンシア・ムシニフィラ サプリメントの生菌群、 死菌群、プラセボ群に分け、毎日朝食前に3ヵ月間摂取することによる安全性、忍容性、 メタボリック・パラメータなどを検討しました。
(アッカーマンシア・ムシニフィラ サプリメントは、100億個のアッ カーマンシア・ムシニフィラの生菌または死菌(70℃で30分間加熱)をグリセロールに混入して作製し、プラセボ群には同量のグリセロールを用いています。)

服用3ヵ月前後のパラメータを変化率で比較すると、死菌群はプラセボ群よりも、総コレステロール、体重、脂肪重量、ヒップ周囲などが低下しました。
試験により、肥満者に対するアッカーマンシア・ムシニフィラの安全性、忍容性、有効性が確認され、また、生菌群と比較し、死菌群でより有意な効果を示しました
(中島孝哉et al.;アンチ・エイジング医学 日本抗加齢医学会 Vol15.No6 76)

2型糖尿病の予防

成人男性116名を対象に、参加者を1年間追跡して、血糖コントロールの推移を調査しました。
参加者に糖負荷試験を行い、血糖コントロールの状態によって、①血糖コントロールが徐々に改善群、②血糖値がずっと正常群、③血糖コントロールが徐々に悪化群、④血糖値がずっと高い(空腹時血糖値が高い)群に分けました。
参加者の便を調べ腸内フローラの状態を調べたところ、①と②の血糖コントロールが良好な群では腸内細菌が多くみられ、代謝や免疫といった、からだの機能に良い影響を与える善玉菌が多いことが判明し、③と④の群では悪玉菌が増えていることが確認されました。

特に、血糖値がずっと正常だった男性は、腸内にアッカーマンシア・ムシニフィラ が大量にあることが分かり、腸内細菌が”糖尿病になりやすい体質”を左右している可能性があります。
糖尿病ネットワーク

長寿効果

日本は世界一の長寿大国だと言われていますが、中でも奄美群島は「長寿の島」とも呼ばれています。
95歳以上の44名を対象に、糞便を採取し腸内細菌叢の特徴と健康状態との関係を検討しました。
その結果、国内の既知のデータと比較し奄美長寿者の腸内細菌叢は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、メタノブレビバクター(Methanobrevibacter)属、アッカーマンシア(Akkermansia)属の細菌が比較的高い占有率を示していることがわかり、奄美長寿者の腸内細菌叢は比較的高い多様性を有していました
一方、健康状態の悪化にともない、多様性が減少することも確認されています。
徳洲会グループ 医師リクルートサイト

アッカーマンシア・ムシニフィラを増やす方法

健康な成人では菌叢全体の0.5–5%とアッカーマンシア・ムシニフィラは体内にごく少量で存在しています!
肥満や糖尿病を患うとより少なくなると考えられていますが、アッカーマンシア・ムシニフィラと相性の良いオリゴ糖やポリフェノール、グアガム(水溶性食物繊維)などを摂取することで、存在量を増やすことが可能だといわれています(マウス実験)🐁🔬
アッカーマンシア・ムシニフィラを増やすために、日頃の食生活を見直してみてはいかがでしょうか。

まとめ

まだヒト試験も少なく、研究段階ではありますが、アッカーマンシア・ムシニフィラは、食の欧米化が進む日本において、生活習慣病対策になる可能性があります🧐✨
また、有用菌の摂取は腸内環境の改善に有効ですが、生活や食生活の改善を実行してこそ効果を発揮することができるということも忘れないようにしましょう!

西谷光広 透析会誌 52(5)271~279,2019

公益財団法人 腸内細菌学会

芦田 久 化学と生物 2016 54 P901 – 906 .

Amandine Everard et al.;Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 May 28; 110(22): 9066–9071.

Diana E. Roopchand et al.;Diabetes. 2015 Aug; 64(8): 2847–2858.

この記事の著者

ゆーみん

管理栄養士

株式会社ヘルシーパス 企画開発部 / ためになる栄養講座・ブログ・お問い合わせ担当

自分自身のアレルギーと偏食がきっかけで管理栄養士を志向。大学卒業後は給食委託会社に就職し介護食からスポーツ栄養まで幅広い食に従事。

読んでいただいた皆さんに「ためになった」「面白かった」と思っていただけるようなブログづくりを心掛けています。

自己紹介ブログ ⇒ 新しいメンバーの自己紹介(管理栄養士:荒木)

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