これからの寒い時期はノロウイルスの食中毒が流行しますね
ノロウイルスについては以前のブログでまとめたことがあるので、是非参考にしてみてください
ノロウイルスについて
さて、一般的に細菌やウイルスの消毒にはアルコールを用いることが多いですが、実はノロウイルスにはアルコールはほとんど効果がありません
そこでノロウイルスの殺菌には塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)か加熱(85度以上で1分以上)が行われます。
しかし、塩素系漂白剤は体に良いとは言えない成分なので、あまり使いたくないという方もいらっしゃいます
「レモン果汁のノロウイルスへの効果」について調べている論文を発見しましたので、今回はその内容を簡単にご紹介致します
●レモン果汁のノロウイルスへの効果
「レモン果汁などに多く含まれているクエン酸が、ノロウイルスの感染性の低下につながる可能性がある」という内容の研究報告です
【目的】
ノロウイルスは、病院や学校などの集団給食施設における食中毒(胃腸炎)の集団発生の主な原因である。
ノロウイルスの対策には次亜塩素酸ナトリウムが使われるが、できれば安全で無害なノロウイルスに対する殺菌剤が望まれる。
そこで、レモン果汁などに多く含まれているクエン酸にノロウイルスの殺菌効果があるのかを調べる。
【方法】
ヒトノロウイルスと同じ表面特性を持つウイルス様粒子を使用し、クエン酸緩衝液の影響を検討。
※ヒトノロウイルスは、細胞培養では増殖しません
また、X線結晶構造解析によりノロウイルス粒子の立体構造の変化をみる。
【結果】
・ノロウイルス様粒子はクエン酸緩衝液によって、環状構造の直径が大きくなるというような粒子の変化が起きた。
・X線結晶構造解析により、レモン汁やクエン酸塩含有の殺菌剤から得られたクエン酸が、ノロウイルスの感染の要因となる組織の血液型抗原結合ポケットに結合していた。
【まとめ】
レモン汁などに含まれるクエン酸はノロウイルスの感染力を弱める可能性があるかもしれない。
<論文要旨>
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0042682215003281
今回の論文は要旨しか読むことができなかったので実験の詳細は分かりませんが、今後はノロウイルスに感染した人の症状を緩和できるかどうかを調べる研究を計画もされているようです。
もし本当にクエン酸でノロウイルスの感染力を弱めることができればとても嬉しいですね
ちなみに、ノロウイルスの感染率は血液型で異なり、O型の人での感染率が高く、B型では感染率が低いと言われています
また、血液型をさらに細かく分類し、唾液や精液といった分泌液中に血液型物質を分泌する「分泌型」の人と分泌しない「非分泌型」の人では、非分泌型の人は感染しなかったという報告もあります(Nat Med. 2003 May;9(5):548-5)。
ノロウイルスにも数多くの種類があるため、どの血液型でも感染するタイプもあるようですが、同じものを食べてノロウイルスの食中毒を発症した人といない人が出た場合には、血液型を比べてみるのも興味深いかもしれないですね
ちなみに私はこの論文要旨を読んで、生ガキを食べる時には絶対にレモン汁をかけて食べようと思いました
生ガキにレモン汁をかけるのは風味を付けるため以外の意味もあったんですね
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット 世界の最新健康・栄養ニュース(http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=50989&-lay=lay&-Find)
・厚生労働省HP(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html)
・ウイルス 第57巻 第2号,pp.181-190,2007