先日、当社のクライアントの先生から「ブログで高齢者の筋力と栄養についての記事を取り上げてほしい」というリクエストをいただきました
リクエストをいただけるなんて嬉しい限りです
そこで今回は、「オメガ3系脂肪酸摂取による高齢者の筋肉維持効果」について研究している論文をご紹介します
オメガ3系脂肪酸は高齢者の筋肉維持に役立つ
魚油由来のオメガ3系脂肪酸の摂取によって健康な高齢者の筋肉量の低下を遅らせることができる、という内容のワシントン大学薬学部による調査報告です。
目的
加齢に伴う筋肉量と機能の低下は、日常生活を送る能力低下、転倒、入院した後の回復が遅くなる、高齢者の死亡率の上昇などの主要なリスクである。
筋肉量と機能の低下を遅らせることは、高齢者の上記のようなリスクを軽減し、自立性を維持して状態を良く保つために必要だと考えられる。
がん患者や関節リウマチの人々、レジスタンス運動のトレーニングをしている人々が魚油由来のオメガ3系脂肪酸を摂取した試験によると、オメガ3系脂肪酸が筋肉の成長を刺激して筋力を高める事が出来ると示唆されている。
そこで、魚油由来のオメガ3系脂肪酸によって加齢に伴う筋肉量と機能の低下を遅くする事が出来るか評価する。
対象
60~85歳の高齢者(男女)60名
方法
60名の健康な高齢者をランダムに分け、魚油由来のオメガ3系脂肪酸(EPA:1.86g、DHA:1.50g)を40名に、コントロール(コーン油)を20名に6か月間摂取させたランダム化二重盲検比較臨床試験。
太ももの筋肉量、握力、1回だけ持ち上げられる最大重量(1-RM)、等速脚エクササイズ中の平均電力を試験の前後で評価。
結果】
コントロール食摂取群と比較してオメガ3系脂肪酸摂取群でみられた効果は以下の通りです。
・大腿筋肉量が3.6%増加した
・握力が2.3㎏増加した
・1RMが4.0%増加した
・平均等速電力は5.6%増加する傾向にあった
・血圧や血中脂質、肝臓の酵素濃度、耐糖能には影響を与えなかった
まとめ
魚油由来のオメガ3系脂肪酸の摂取によって加齢によって普通に起こる筋肉量と機能の低下を遅くさせてサルコペニアを予防し、高齢者の身体的な自立の維持に役立つ可能性のある事が分かった。
論文要旨
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25994567
筋肉量を維持するためにはレジスタンス運動のトレーニングやテストステロン、成長ホルモン、DHEAなどのホルモン補充も良いと言われています
しかし、高齢者がレジスタンス運動をやり遂げるのは難しく、ホルモン補充は副作用の心配があります
一方でオメガ3系脂肪酸は、現代人に不足している栄養素なので積極的な摂取が勧められています
また、安全性が高いので安心して摂取できるのも魅力的です
EPAやDHAは青魚に豊富なので、お肉もいいですが魚を意識して摂取してみるのがお勧めです
さらに、体内では亜麻仁油に豊富なα-リノレン酸からEPAやDHAを合成することができます。
α-リノレン酸は亜麻仁油の他にしそ油(えごま油)などにも含まれるので、こういった油を摂取してみるのも良いですよ
(さ)