最近、肥満や糖尿病などの生活習慣病が問題となってきているためか、レプチンというホルモンについてよく見聞きするようななった気がします
皆さんはレプチンについてご存知ですか
今回は、レプチンについて簡単にまとめたいと思います
●レプチンとは
インスリンの刺激を受けて脂肪細胞から分泌されるホルモンで、体脂肪が多いほど血液中の濃度が多いので、男性よりも皮下脂肪の多い女性の方がレプチンの分泌量が多いと言われています<
名前の由来は、ギリシャ語の「痩せる」を意味する「leptos」にちなんでレプチンとなったそうです
現在分かってきているレプチンの働きは以下の通りです
・脳の視床下部に作用して満腹サインを送り、食べ過ぎを防ぐ
・交感神経に働きかけて中性脂肪の蓄積を抑制し、エネルギー消費を増やす
・交感神経を活性化させ、血圧を上昇させる
・免疫を調節する など
●レプチンの不思議
上記の説明を読んで何かおかしな点に気づきませんか
そうです
本来なら体脂肪が多いほどレプチンが多いので、食べ過ぎを防いでエネルギー消費を増やすため、痩せ易くなるはずなんです
でも、そんなことはないですよね
それは何故かというと…
“肥満が進むとレプチンの働きが悪くなってしまう”からです
通常であればレプチンは血液から脳に伝わって満腹中枢を刺激しますが、肥満していく中でレプチン抵抗性が出てしまっている場合には、脂肪細胞から作り出される他の物質(CRP)が邪魔をしてレプチンが脳へ届かない(血液脳関門を通りにくくなる)ため、満腹を感じにくいのです
また、肥満者の5~10%では、体重に比べてレプチン濃度が低いようです
こういった方々は、レプチンが少ないために食べ過ぎたり中性脂肪が蓄積して肥満になると考えられます
この他にレプチン産生が少なくなる原因には、「脂肪萎縮症」という疾患や、ダイエット目的などでの厳しい食事制限があります
脂肪萎縮症は、脂肪組織が少ないことによる外見上の問題もありますが、脂肪組織から分泌されるレプチンが不足した状態となって代謝異常が引き起こされるため、糖尿病や脂質異常症、非アルコール性脂肪肝などの危険があり、寿命も30~40歳とされる難病です
レプチンはこの疾患の治療薬として注目されています
ダイエットの場合では、厳しい食事制限をするとレプチンが少なくなってしまうと言われており、食事制限の後は激しい食欲に襲われてしまうことがあります
そのため、食事制限のダイエットは成功率が低い(リバウンドしやすい)とも考えられています
食事制限を厳しくして短期間で痩せようとすると、レプチンが減ってリバウンドしやすいだけでなく、食事制限を継続することには精神的にとても苦痛です
さらに、目的とする内臓脂肪は減らずに、大切な筋肉や骨が減ってしまうこともあります
痩せるためには消費エネルギーよりも摂取エネルギーを減らすことが大切ですが、極端な食事制限は危険です
肥満者の場合には、ビタミン、ミネラル、タンパク質、脂質をバランス良く取り入れて、さらに体を動かす習慣をつけ、少しずつ体重を落としていくのが理想ですね
ちなみに、夜遅い食事が習慣化するとレプチンの作用が低下し、これに伴って血糖値や中性脂肪の値が上昇しやすくなることが知られています
この現象は夜食症候群(Night Eating Syndrome)と呼ばれ、メタボリックシンドロームをまねく原因のひとつと考えられています
夜食症候群にならないよう、早めに夕食を摂ることを心掛けたいですね
しかし、夜遅くまで残業をしなければならないなど、個人の努力では解決しにくいということもあります
夜中まで残業をする社員が多い会社では、「早めに残業夕食」を支給するなどの社員の健康を守るような企業の取り組みが行われると良いですね
(さ)
<参考>
・厚生労働省のホームページ
・国立循環器病研究センターのホームページ
・イラストレイテッド ハーパー・生化学[原書29版] P286
・YAKUGAKU ZASSHI 131(11)1557-1562(2011)
・http://www.senshiniryo.net/column_a/17/