近年、日本ではアレルギーを持つ人が急増しており、約30%の人が何らかのアレルギーを持っていると言われています
アレルギー疾患の最大の原因は環境の変化と考えられていますが、どの環境が原因なのかということは疾患によって異なります。
例えば、スギ花粉症はスギ花粉の増加、喘息は冷暖房設備の完備や気密性の高い住宅の増加によるダニの増加などです
実は私もスギ花粉症もちです…
そこで今回は、アレルギーの原因のひとつと言われる「衛生仮説」について簡単にまとめたいと思います
●衛生仮説とは
「衛生環境の改善や少子化にともなう乳幼児期の感染症リスクの低下がアレルギー増加の一因ではないか」という説です。
1989年にStrachanらが枯草熱(日本の花粉症にあたる)の発症は、同居家族の人数が関係することを報告したことが始まりで、その研究によると、兄弟が多い家庭では免疫を鍛える物質が増えることを指摘しています
それは、末の子どもでは兄や姉から胃腸炎や風邪をもらいやすく、これらを克服しながら抵抗力を鍛えて体が丈夫になるため、末の子どものアレルギー発症が少ないのではということです
※消化管の免疫細胞はたくさんのが病原体と戦いながら成熟していくため、特に下痢や胃腸炎などの消化管の感染症は、消化管粘膜の抵抗力を鍛えると言われています。
その他の衛生仮説としては、以下のようなものがあります
・生後1年以内に乳児が家畜小屋に出入りするか、絞りたてミルクを飲んでいると、喘鳴、鼻炎、アレルギー感作率が減少しました。
(von Ehrenstein OS, Elin Exp Allergy 2000;30:187)
・農家に生まれた子どもで、妊娠中の母親が農場に出入りしている場合には、生まれてきた子どものアレルギー発症が減りました。
(Lancet. 2001 Oct 6;358(9288):1129-33.)
・アフリカの子どもの話ですが、麻疹(はしか)にかかった子どもと、予防接種で麻疹にかからなかった子どもを追跡してアレルギー発症をみた研究があり、麻疹にかかった子ども達の方が皮膚反応の陰性が多く、アトピーの発症が有意に減少しました。
また、1年以上母乳栄養の子どもではハウスダストの皮膚反応が少なく、アトピーになりにくいことも分かりました。
(Am J Respir Crit Care Med 1997 ;156:1760-4)
・イタリアの若い青年兵士の成績によると、A型肝炎、トキソプラズマ感染症、ピロリ菌感染症の3種の感染症にかかったことのある兵士ほど、アレルギー疾患の有症率が減少しました。
(BMJ. 2000 Feb 12;320(7232):412-7.)
生後1歳半頃までの乳児を、動物園に連れて行くと良いと聞いたことがあります
主治医と相談し、動物園や牧場に行って子供と楽しむのもよさそうですね
ただ、感染症の中には命に関わったり後遺症を残してしまうような危険なものもあるため、乳幼児期に感染症になるのが必ずしもいいとは言えません
しかし、必要以上に清潔にし過ぎない方が良いかもしれませんね
ちなみに、私は子どもの哺乳瓶を煮沸や洗浄液で殺菌したことは一度もありませんでした。
使い終わってすぐにしっかり洗って乾燥させれば清潔ですから
※これはある助産院の助産師さんからの受け売りです
(さ)
<参考>
・千葉県のホームページ
・化学と生物 Vol.44,No.1,2006「アレルギーと衛生仮説」
・アレルギーはなぜ起こるのか(斎藤博久:著)