
月経前になると、日常生活に支障をきたすPMS(月経前症候群)でお悩みの方も多いのではないでしょうか?
今回は、PMS(月経前症候群)の実態と栄養学的アプローチについて紹介します。
PMSとは?
PMSとはPremenstrual Syndromeの略であり、日本語では月経前症候群と言います。
月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものをいいます。
月経のお悩みでよく知られる、月経困難症との違いは症状の出るタイミングにあり、月経が始まっても症状が続く場合は月経困難症である可能性があります💦
なお、PMSと月経困難症は合併することもあります😱💥
【豆知識】PMSは仕事の質を落としている
PMS自体まだあまり知られていないことが多いですが、
日本医療政策機構が2018年に実施した「働く女性の健康増進調査」によれば月経や月経前症候群(PMS)により、全体の約45%の女性が仕事のパフォーマンス低下を経験していると回答しています。
女性の月経についての悩みを解決することで、仕事のパフォーマンスに直結し、社会全体の経済成長につながるかもしれません。
PMSの原因
はっきりとした原因はわかっていませんが、月経をコントロールする「性ホルモン」が関わっていると考えられます。
性ホルモンとはエストロゲンやプロゲステロン、テストステロンなど生殖機能を調節するステロイド骨格を持った有機化学物質を指します。
PMSは黄体期から出現するとされており、黄体期には、排卵を終えた卵胞が、黄体と呼ばれる状態に変化し、多量のプロゲステロンを分泌します。
また、黄体期の大半にわたって、エストロゲンの血中濃度は変動し、これらの性ホルモンの急激な変動がPMSの症状に影響を与えていると考えられています📈
くすりによる治療
PMS症状の重さによっては、薬の服用が必要な場合もあります💊
痛みに対しては鎮痛剤、むくみなどの水分貯留症状に対しては利尿剤や抗アルドステロン療法(尿量を増やす治療法)、精神神経症状や自律神経症状に対しては精神安定剤などを使用することが多いようです。
また、個人の症状や体質に合わせて、漢方薬を使用する場合もあり、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遥散、桃核承気湯、女神散、抑肝散加陳皮半夏などがよく選択されています🌿🌱
そのほか、OC錠(低容量ピル)と呼ばれる女性ホルモン製剤によってホルモンバランスを調節する薬剤も使用され ますが、 まれに副作用として 血栓症が現れることがあり、重篤な血栓症を患わった方もいるため、厚生労働省から注意喚起が行われています⚠
PMSと栄養学的アプローチ
忙しいとおそろかになりがちな食事ですが、PMSに影響を与えることが報告されています🍽
どのような食事がいいのか、おすすめの栄養素はどんなものか紹介します!
ビタミンB₁・ビタミンB₂
34~35歳のPMSを発症していない女性を10年間追跡し、期間中にPMSを発症した1057人と発症しなかった1968人について、食事内容のアンケートの回答を比較したところ、ビタミンB₁とB₂では、摂取量が多いほどPMSのリスクが低いという関連がみられました。
カルシウム
PMSに見られる不安や抑うつは、カルシウムの低下症状と似ており、PMS群では血中のカルシウム濃度が低いという報告もあります。
カルシウムの摂取は精神症状以外にも、むくみや特定の食べ物への渇望、痛みの緩和などに効果的といわれています。
マグネシウム
PMSで悩んでいる女性126名を対象に行った介入試験では、マグネシウム(250㎎/日、2か月間)摂取群で、PMSの症状が改善しました。
特に、むくみと痛みの症状が大幅に軽減されていました。
鉄
PMSは、アルコールの過剰摂取や喫煙、カフェイン、脂質の摂りすぎなどによっても引き起こされるといわれていますが、貧血もPMSの発症リスクを上げるといわれています。
日本人の月経がある女性は、鉄を1日に10.5〜12.0㎎摂取することが推奨されています。
しかし、令和元年国民健康・栄養調査によると、20~40代女性の鉄摂取量は6〜7㎎/日の摂取にとどまり、積極的に鉄を摂取する必要があります。
イソフラボン
18~20歳のPMSで悩んでいる女性60名を対象に、大豆イソフラボン摂取によるPMSの改善効果についてランダム化クロスオーバーデザインによる介入試験を実施したところ、身体症状は1日40mgの大豆イソフラボン摂取により軽減し、最も軽減した症状は頭痛でした。
精神症状は身体症状ほどの改善はみられなかったが、不安感は軽減した対象者が多かったようです。
バランスの良い食事と禁煙を心掛け、月経前は飲酒や刺激物の摂取を控えるようにしましょう🧐🍴
まとめ
長い間、PMSをはじめとする月経についての悩みは、暗黙の了解で「個人の我慢」として片付けられてしまいましたが、「あって当たり前」という考えはとても危険です😨!
PMSの症状と女性特有の病気の症状が似ているため、病院に行かずに我慢し続けていると、その間に病気が悪化してしまう危険があります。
長年、PMSをはじめとする月経についての悩みがある方は、一度主治医に相談し病気がないかどうか診てもらうことも良いと思います🍀
武谷雄二 月経前症候群 PMS 正しい知識を持つために 株式会社メジカルビュー社 2020年10月10日
Elham Ebrahimi et al.;J Caring Sci. 2012 Dec; 1(4): 183–189.
Ayla Acikgoz et al.;Saudi Med J. 2017 Nov; 38(11): 1125–1131.
日本人の食事摂取基準2020年版
令和元年国民健康・栄養調査
ゆーみん
管理栄養士