
水溶性食物繊維グァーガム分解物をご存知でしょうか?
グァーガム分解物は、腸内細菌叢を改善する効果が期待できることから、特定保健用食品(トクホ)の関与成分にもなっています。
今回は「グァーガム分解物の働きと効果」について紹介します。
目次
食物繊維の必要性
食物繊維は炭水化物のうち「ヒトの消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義されており、水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維に分けられます。
不溶性食物繊維 | セルロース、ヘミセルロース、キチン、キトサン |
水溶性食物繊維 | グァーガム、ペクチン、イヌリン、寒天 |
食物繊維は便の体積を増やしたり、大腸内の環境を改善する有用菌を増やす効果などが期待できるため「第6 の栄養素」とも呼ばれています。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日当たりの目標量が定められています。
「令和元年国民健康栄養調査」と比較すると男性では20代~50代、女性では10代後半~50代で不足していることがわかります。
食物繊維は豆類・野菜類・果実類・きのこ類・藻類などに多く含まれています。
令和元年国民健康栄養調査の結果からもわかるように、日本人の多くが食物繊維不足気味といわれており、厚生労働省では1日当たり3~4gを追加することを目標に、積極的な摂取をすすめています。
グァーガム分解物と働き
グァーガムはインド・パキスタン地方に自生するマメ科植物(グァー豆:yamopsis tetragonoloba)からとれる水溶性食物繊維です。
グァーガム分解物は、このグァーガムを酵素で分解し精製したもので、腸内細菌の栄養源(エサ)となり発酵分解され短鎖脂肪酸を産生するという働きがあります。
【豆知識】短鎖脂肪酸とは
腸内細菌が作る、酪酸、プロピオン酸、酢酸などの分子量の小さな有機酸のことです。
特に酪酸は腸上皮細胞の最も重要なエネルギー源であり、抗炎症作用など優れた生理効果をもっています。
短鎖脂肪酸は水溶性食物繊維などのエサとなる物質が必要であり、グァーガム分解物はほかの食物繊維よりもより多くの酪酸を産生するといわれています。
グァーガム分解物のエビデンス
グァーガム分解物はさまざまな効果から臨床現場などでも注目されています。
経腸栄養剤使用時の下痢症状の軽減
100名の経腸栄養患者に対し、グァーガム分解物20g/日を摂取したところ、下痢の原因に関係なく発生率が減少した。
胃腸の膨満感は大幅に増えたが、それは結腸内での可溶性繊維の発酵とそれに伴う短鎖脂肪酸の生成に起因するものと考えられる。
(H H Homann et al., JPEN J Parenter Enteral Nutr.1994 Nov-Dec;18(6):486-90)
インフルエンザ予防
入院患者188名に対し、グァーガム分解物5.2g/日を摂取して2ヶ月後の結果、インフルエンザ発症率、便pH、BSS(ブリストルスケールスコア)に有意差があったことから、グァーガム分解物が腸内環境に影響を及ぼし、インフルエンザ発症率 低下に寄与する可能性が示唆された。
(Chika Takahashi et al.,Clinical Nutrition ESPEN 42(2021) 148-152)
不妊症女性の妊娠
18名の不妊症患者に対し糞便サンプルを採取したところ、 妊娠可能群と腸内細菌叢に違いがあった。
うち12名に対し10g/日のグァーガム分解物を4週間摂取したところ、腸内細菌叢の異常が改善され、妊娠成功率は7名(58.3%)となり、不妊症女性の妊娠の成功に役立った。
(Shinnosuke Komiya et al., J Clin Biochem Nutr. 2020 Jul; 67(1): 105–111)
風邪症状の軽減
健康な成人96名に対し、グァーガム分解物5.2g/日を12週間摂取したところ、風邪症状がない累積日数、酢酸・短鎖脂肪酸量がプラセボ群よりも有意に多かった。
風邪様症状の 重症度、インターフェロンレベルもグァーガム分解物群が低かった。
(S.Sakai et al., Eur Rev Med Pharmacol Sci 2022; 26 (14): 5154-5163)
まとめ
グァーガム分解物の働きやエビデンスについて紹介しました。
食物繊維(特に不溶性繊維)を摂ると、特定のビタミンやミネラルの吸収が阻害されたりすることがありますが、グァーガム分解物は、鉄・マグネシウム・カルシウムといったミネラル吸収促進効果もあるようで一挙両得な食材です✨!
気になる方は原材料に注意しながら試してみるのも良いかもしれません🌟
e-ヘルスネット[情報提供]
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ゆーみん
管理栄養士