慢性的に腎機能が低下した状態を慢性腎臓病と呼び、慢性腎臓病が進行することで末期腎不全に至ります😰💦
透析は腎不全の方に対して、腎臓の機能の一部を代替する治療です。
今回は「血液透析治療を受ける患者さんに必要な栄養素」について紹介します。
透析と栄養状態
腎不全では腎機能の低下による排泄障害から、水分や電解質、老廃物が体に溜まりやすくなります。
この話を聞くと「今まで通りに食事をとれないのではないか😨」と心配される方がいるかもしれません。
しかし、実際には透析を受けられている方は低栄養状態に陥りやすいと言われており、十分に栄養素を補給することが大切になります🍴
低栄養の原因として、透析の導入前に食事療法として指導されていた低タンパク質食とのギャップや塩分・水分制限、透析治療後の倦怠感や食欲の低下、治療による栄養素の喪失などがあげられているため、下記に血液透析治療を受ける患者さんに必要な栄養素についてまとめました!
低タンパク質食とのギャップについて
タンパク質摂取量を抑えることで、腎機能の低下を遅らせることが期待できます。
そのため透析治療の開始までは、腎機能の低下を緩やかにさせることを目的とし、低タンパク質食をするように指導されます。
しかし、透析を始めると、透析中にタンパク質の原料となるアミノ酸が失われてしまうので、アミノ酸を補充するために一定量のタンパク質を取る必要があります。
このギャップが透析の導入前と後で患者さんが難しいと感じるひとつではないかなと思います。
必要な栄養素
エネルギー・タンパク質
透析治療を受けている方はエネルギー・タンパク質の消費状態が高頻度にみられ、これが重大な低栄養問題のひとつとなっています。
エネルギーやタンパク質が不足することで、体重や筋肉量の減少、それに伴う日常生活動作(ADL)の低下につながります。
さらに、透析導入前に低タンパク質食を実践していた方は、導入後の食事療法とのギャップに戸惑ってしまうことがあるため、導入前と導入後では食事療法の目的が異なることを認識することが大切です。
エネルギー・タンパク質をしっかりとるためには、エネルギー源となるごはんやパンなどの主食、タンパク質源となる肉や魚、卵といった主菜になる食品をバランスよく組み合わせましょう😋🍴
※肉や魚といったタンパク質を多く含む食品には「リン」という栄養素が含まれており、透析治療を受けている方にとっては高リン血症のリスクがあるため、多量摂取は注意※
水溶性ビタミン
水溶性ビタミンは透析での除去、カリウム制限から野菜や果物を避けることで、不足しやすい状態にあります。
一部の水溶性ビタミンは肉や魚、卵などにも多く含まれています🍖🐟🍳
例えばビタミンB₁であれば豚肉、ビタミンB₆ならマグロ、サケなどに多いです。
ほかに水溶性ビタミンを補う方法としてはサプリメントの活用もひとつの手段となりますので、サプリメントが必要な場合は主治医にご相談ください。
食物繊維
野菜や果物に多く含まれているため、水溶性ビタミンと同様の理由から、食物繊維も不足しやすいです。
食物繊維には整腸作用があり、不足することで便秘に繋がります。
また、透析治療では水分制限を行う必要があり、食物繊維の不足と合わせて便秘を悪化させる一因となる可能性があります。
野菜等はカリウムを多く含むからとすべて避けるのではなく、煮たり、切って水にさらしたりしてから食べるなど調理に一工夫をして取り入れるとよいでしょう。
※カリウムは水に溶けやすい性質を持つため、切って水にさらしたり、茹でるなどの調理方法がお勧め※
まとめ
透析治療では腎臓の全ての機能をまかなうことはできません
通常であれば、腎臓は毎日24時間、1週間に換算すると168時間働いています。
しかし、透析患者さんの場合は週に3回通院して1回に4~5時間程の透析を受けることを想定すると、週に12~15時間程しか働いていないことになります💦
全てをまかないきれないからこそ食事管理を行う必要性がありますが、過度な制限が低栄養を招く原因となります。
主治医や管理栄養士へ相談することで、現状の栄養状態やどの程度まで食事をとっていいのか把握することが大切です!
安武 健一郎, 西山 愛美, 本村 しほみ, 片山 正哉, 力武 修, 伊藤 孝仁, 日本透析医学会雑誌, 44 巻 11 号, p. 1077-1084, 2011
平良 知子, 曽田 彩夏, 坂口 翔一, 石松 隆志, 園田 昭彦, 平山 英雄, 成田 勇樹, 門脇 大介, 平田 純生, 日本腎臓病薬物療法学会誌, 1 巻 1 号, p. 15-25, 2012
一般社団法人日本腎臓学会, エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018, 株式会社東京医学社, 第1版, 14ページ, 2018
企画開発部
株式会社ヘルシーパス