ケトジェニックダイエット(ケトン食、ケトジェニック食)は、主にてんかんの治療食として知られていましが、
近年では、低糖質食としてダイエット時の食事法のひとつとして捉えている人もいるようです。
なお、ケトジェニックダイエットによって身体に良い効果が出ることもありますが、場合によっては悪影響が出ることも分かってきています。
今回は、「ケトジェニックダイエット」についてご紹介します!
※この記事はケトジェニックダイエットを肯定・否定する記事ではありません。
ケトジェニックダイエットを行う際は専門医の指示のもと適切に行ってください。
ケトジェニックダイエットについて
てんかんは、脳の神経細胞の電気活動が過剰興奮することにより、発作が繰り返し起こる疾患で、ケトジェニックダイエットは古代(ヒポクラテスの時代)から「てんかん発作の抑制」に有効なことが知られていました。
てんかん発作には絶食がいいことが以前からわかっていましたが、1921年に、絶食の効果はケトン血症によるものだという考えから、「Woddyattの理論(向ケトン物質:反ケトン物質が2:1以上の食事はケトン血症を起こす)」をもとに「(古典的)ケトジェニックダイエット」が誕生しました!
※ケトン体については、以前のブログ「ケトン体とは?」をご覧ください。
現代のケトジェニックダイエットは、「修正アトキンズ食」「低グリセミック指数食」など、より制限を緩和し継続しやすい方法も報告されています。
「高タンパク質、高脂質、低糖質」を摂取することで、エネルギーの生成を糖質から脂質に切り替え、効率よく脂肪を燃やすとして注目を浴びており、対象疾患もてんかんの他、「2型糖原病」「脳腫瘍」「アルツハイマー病」などへの治療効果が報告されています。
ケトジェニックダイエットは健康食?
ケトジェニックダイエットの健康効果
ケトジェニックダイエットが様々な疾患に有効であるという考えが広まり、研究も行われています。
・認知機能
20gの中鎖脂肪酸を含むケトジェニックダイエットとコントロール食を摂取した際の血中ケトン体濃度の変化と複数の認知機能テストの成績を比較した試験で、コントロール食を摂取した時に比べてケトジェニックダイエットを摂取した時に血中ケトン体濃度が高く推移し、さらに作業記憶、遂行記憶に関する成績が高いという結果が得られた(Miho Ota et al.,Psychopharmacology (Berl). 2016 Oct ; 233(21-22):3797-3802.)。
・がん
がん細胞は糖質の取り込みが多いことに注目し、糖質制限の厳しいケトジェニックダイエットを用い、化学療法との併用で臨床での安全性と効果を調べた試験で、3か月間の短期間であるが、進行がん患者(ステージ4の大腸がんと乳がん患者)に対しても安全な食事療法であるということが示唆された(古川健司et al.,日本静脈経腸栄養学会雑誌 32(3):1154-1161:2017)。
・その他
ケトジェニックダイエットでは肥満の改善(板東 浩 日内会誌 103巻 P2609~2612 2014年)や糖尿病の改善(奥山治美et al., 脂質栄養学 第26巻,第 1 号 P47-57 2017年)などの効果が報告されている。
ケトジェニックダイエットは本当に健康?
しかし、ケトジェニックダイエットのリスクも報告されていることから、単純に「ケトジェニックダイエットが健康食である」とはいえません。
・2型糖尿病リスク増加
マウスを用いた研究によると、ケトジェニックダイエットと通常の高脂肪食を与えた群で、肝臓でのインスリン抵抗性を比較したところ、ケトジェニックダイエット群では高脂肪食群よりもグルコース不耐性の発現が急激だったという結果が報告されている(Gerald Grandl et al.,J Physiol. 2018Oct;596(19)P4597-4609.)。
・無酸素的運動への悪影響
16名の男女に、ケトジェニックダイエットまたは高炭水化物食を4日間摂取させ、無酸素的運動パフォーマンスに与える影響について検討した結果、短期間のケトジェニックダイエットは、嫌気性運動(特に高強度で短期間の活動やスポーツ)のパフォーマンスを低下させることがわかった(Kymberly A Wroble et al.,JSports Med Phys Fitness. 2019 Apr;59(4)P600-607)。
・微量栄養素の欠乏
ケトジェニックダイエットを6か月以上継続した症例では、セレンの血清濃度の有意な低下、亜鉛と銅においても低下傾向がみられたことから、長期間のケトンフォーミュラ食でのケトジェニックダイエット療法ではセレン、亜鉛、銅などの微量元素の欠乏症に注意が必要という報告がある(林杏里et al.,脳と発達 45巻4号P288-293 2013年)。
まとめ
ケトジェニックダイエットは疾患の種類や体質によっては健康効果が期待できる食事療法ですが、単に炭水化物を控えるための食事として安易に取り入れると、逆に疾患へのリスク増大や栄養素欠乏を引き起こしてしまう可能性があります。
また、食事制限だけのダイエット法では成功するどころか、筋力も落ちてしまいます。
まずは自分の食事を見直して「摂りすぎているもの」や「不足しているもの」がないかを考え、トレーニングも組み合わせて実践していきましょう🏋️♀️🏋!
※個人判断での極端な制限を行ったり、食事療法をすることはお体の不調につながる可能性がありますのでご注意ください。
企画開発部
株式会社ヘルシーパス