以前、赤ワイン(ブドウ)やピーナッツなどに含まれているレスベラトロールがサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させるという研究結果が発表され、レスベラトロールに注目が集まりました👀
アメリカやインドでは、レスベラトロールを上回る効果が期待できると言われている成分に「プテロスチルベン」がありますが、日本ではあまり馴染みがありません。
そこで今回は、「プテロスチルベンにはどんな効果が期待されるのか」をまとめます💡
目次
プテロスチルベンはどんな成分?
プテロスチルベンはポリフェノールの一種で、レスベラトロールと似た形をしています。
違いとしては、プテロスチルベンはレスベラトロールに付いている2か所の水酸基(-OH)が、メチル化されてメトキシ基(-OCH3)に置き換わっています。
プテロスチルベンもレスベラトロールと同様に赤ワイン🍷やブドウ🍇などに含まれ、インドの伝統・民間療法であるアーユルヴェータでは、古くからプテロスチルベンを多く含むマメ科の植物が糖尿病治療のひとつとして用いられていると言われています😳
体内での利用率
ラットにおけるプテロスチルベンの体内利用率は66~94%だという報告があります🐭
一方でレスベラトロールは17~29%程度であり、体内の滞留時間はレスベラトロールと比較してプテロスチルベンの方が約2倍も長いことが示されています。
プテロスチルベンとレスベラトロールの構造上の違いはわずかですが、プテロスチルベンは水酸基が2か所メチル化されていることで油に溶けやすくなっています。
油に溶けやすくなることで、レスベラトロールと比較して体内に留まる時間が長く体内で利用されやすいと考えられています❗
※グラフはIzet M Kapetanovic et al., Cancer Chemother Pharmacol. 2011 Sep;68(3):593-601.Fig.2を筆者一部修正
プテロスチルベンの効果
炎症性腸疾患の予防・治療
プテロスチルベンはレスベラトロールよりも効果的な免疫抑制作用を持ち、現状では完治が難しい潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患に対する新たな予防法、治療法の開発につながる可能性があるという報告があります(Takuya Yashiro et al.,FASEB J. 2020 Sep 22. )。
プテロスチルベンはナイーブCD4T細胞の増殖とTh1への分化を抑制し、制御性T細胞の分化を促進するだけでなく、大腸炎マウスモデルの腸炎の病態形成に関わる腫瘍壊死因子(TNF-α)の発現も抑制することが示されています。
抗がん作用
がん細胞に対して、プテロスチルベンはレスベラトロールよりも効果があるのではないかとの報告があります(Hee Jeong Shin et al., Molecules. 2020 Jan 6;25(1):228. )。
また、レスベラトロールおよびプテロスチルベンが、がん抑制的なmiRNA※1であるmiR-141、miR-143、miR-200cの発現を上昇させることが明らかになっています(キューピー㈱,RNA干渉によるmRNA発現の抑制を促進する促進剤およびその用途,6155191,2017年6月28日)。
※1:マイクロRNAと読む。以前のブログでmiRNAについてまとめているので、詳細はこちらをご確認ください➡️「マイクロRNA(miRNA)とは?」
脂質代謝・糖代謝
動物レベルですが、プテロスチルベンは脂質代謝、糖代謝に有効だというデータが出ています。
その作用メカニズムのひとつに、プテロスチルベンは核内受容体(PPARα※2)のアゴニスト(効果を発揮する物質)として作用し、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を強力に活性化することが挙げられます(Guang Ren et al., Biochem Biophys Res Commun. 2018 Apr 6;498(3):640-645. )。
AMPKは骨格筋や肝において糖脂質代謝を制御し、インスリン抵抗性を改善することから、肥満や2型糖尿病の治療において注目されています👀
※2:PPAR-αは抗炎症作用や脂肪酸代謝に関与しているタンパク質
認知機能向上
加齢促進モデルマウスにレスベラトロールとプテロスチルベンを摂取させたところ、細胞ストレス、炎症、アルツハイマー型認知症病態のマーカーがプテロスチルベンによって正に調節され、PPARα発現を増やすと報告されています(Jaewon Chang et al., Neurobiol Aging. 2012 Sep;33 (9):2062-71.)。
また、βアミロイド(Aβ)※3によって誘導される神経細胞のアポトーシスに対するプテロスチルベンの効果を調べた研究では、プテロスチルベンは抗アポトーシス活性を示し、細胞生存率の向上、アポトーシス率の低下、細胞内活性酸素の減少が観察されています(Zheng Fu et al.,Food Funct. 2016 Feb;7(2):1014-23.)。
※3:Aβはアルツハイマー型認知症の発症に深く関与していると考えられている
抗カンジダ菌作用
カンジダ菌をプテロスチルベン溶液にさらすとカンジダ菌バイオフィルムの形成が阻害され、成熟したバイオフィルムが維持できなくなることが報告されています🧫
ラットでの中心静脈カテーテル感染モデルを用いて、カンジダ菌バイオフィルムに対するプテロスチルベンの効果も確認されており、プテロスチルベンはカンジダ菌バイオフィルムに対して強い活性があると示されています(De-Dong Li et al.,Antimicrob Agents Chemother. 2014 Apr; 58(4): 2344–2355.)。
まとめ
プテロスチルベンに、こんなにも色々な効果があるなんて驚きですね❗
しかし、サーチュイン遺伝子は食事の摂取量を減らすことでも活性化されると言われています。
健康のためには、まずは普段の食生活を見直すことが一番です。
ただし、もしプテロスチルベンの効果が気になったり、レスベラトロールでは体感が得られない場合には、補助としてプテロスチルベンを試してみる価値はあるかもしれません😄
さとこママ
管理栄養士