赤身の肉や魚などに豊富に含まれている栄養素のひとつに鉄があり、その鉄は「ヘム鉄」という形をしています。
皆さんはヘム鉄のヘムとは何か知っていますか❓
今回は「ヘム鉄のヘムとは何なのか」についてまとめます💡
ヘム鉄の「ヘム」って何?
ヘムは、ポルフィリンと鉄から生合成される成分です。
つまり、サプリメントの素材で用いられるヘム鉄はヘムの状態になっている鉄を指します。
ポルフィリンは4個のピロール環がメチン橋(=HC-)によって結合してできた環状化合物であり、金属イオンがピロール環の窒素原子と結合した構造の複合体を作るという特徴があります。
金属ポルフィリンにはヘム(鉄とポルフィリン)の他に、クロロフィル(マグネシウムとポルフィリン)などもあります。
ヘム鉄の吸収について
私達が摂取する鉄には、ヘム鉄の他に非ヘム鉄と呼ばれる鉄があります。
非ヘム鉄は腸管から吸収される際に、ビタミンC、動物性タンパク質などによって吸収が促進されます。
しかし、カルシウム、食物繊維、フィチン酸、タンニンなどによる吸収阻害を受けるため、吸収率は2~20%だと言われています。
さらに、むき出しのままの鉄によって胃壁や腸管を荒らすこともあり、胃痛、便秘などの副作用に悩まされてしまう方が多くいます。
それに対してヘム鉄は、鉄イオンがポルフィリンに囲まれているため、胃壁や腸管を荒らしにくく、食物繊維などからの吸収阻害も受けにくいという特徴があります。
ヘム鉄は食事内容による影響をあまり受けないことから、非ヘム鉄より吸収されやすく、吸収率は15~35%もあります。
さらに、ヘム鉄はヘムオキシゲナーゼで吸収量が調節されるため、鉄の過剰摂取にもなりにくい素材だと言われています。
鉄不足問題について
鉄不足は、世界的に最も多く見られる栄養の欠乏症です。
特に、急激な成長を伴う生後6ヶ月以上の乳児や幼児、月経のある女性、妊婦・授乳婦で鉄不足が多く見られます。
この他、鉄不足は食物からの摂取不足、出血による鉄の喪失、吸収障害などによって起こります。
この中でも食物からの摂取不足は、摂取した食事中の鉄量が少ない場合や、全体の食事量が少ない場合の他、鉄の吸収に影響を与える物質の摂取量の過不足によっても起こります。
また、習慣や経済的理由、宗教、文化的理由によって鉄分の少ない食事を摂取することにより、鉄不足になることもあります。
鉄不足による症状
・貧血
・運動機能や認知機能の低下
・体温保持機能の低下
・免疫機能の低下
・豊かな感情の減退(小児)
・集中力の低下
・イライラ
・学習能力の減退
貧血について
血液中に含まれる血色素 (ヘモグロビン) 量が減少した状態のこと貧血と言いますが、鉄欠乏が重度にならないと症状や徴候は現れません。
鉄欠乏性貧血の症状が現れたときには、既に貯蔵鉄(血清フェリチン)の枯渇や血清鉄の減少が進んでいると考えられます。
ヘモグロビン濃度が正常値であっても、女性の場合には血清フェリチン濃度が15 μg/L以下であれば鉄欠乏性貧血が確認されたことになり、鉄補給が必要となる可能性があります。
※CDC(米国疾病管理予防センター)による
フェリチンの濃度については、30μg/Lを目安に鉄の補給を検討するドクターもいらっしゃいます。
ヘムについての知識は深まったでしょうか❓
先日のブログ「平成29年国民健康栄養調査結果のまとめ①」にもあるように、日本人は鉄の摂取量が不足している年代がとても多いです。
ヘム鉄は非ヘム鉄に比べて吸収されやすいため、鉄不足が疑われる方は是非、ヘム鉄が多く含まれる食品(レバー、赤身の肉や魚、卵黄など)を毎日の食事に取り入れてみてください😃
(管理栄養士 さ)
<参考>
・イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書29版
・国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報
・ILS㈱サイト
・厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』「統合医療」情報発信サイト
・日本食品標準成分表2015(七訂)