前回は、「平成29年 国民健康・栄養調査結果のまとめ①」と題して、平成29年の11月に行われた国民健康・栄養調査結果についてまとめました。
今回は続編の②ということで、①でまとめた「不足している栄養素による体の不調」についてまとめようと思います💡
目次
日本人に不足している栄養素は?
前回のまとめでは、日本人に不足しがちな栄養素には「ビタミン A(ベータカロテン)」「ビタミン B1」「ビタミン B2」「ビタミン B6」「ビタミン C」「カルシウム」「マグネシウム」「鉄」「亜鉛」などがあると分かりました。
それでは、それぞれの栄養素について、不足するとどのような不調が現れる可能性があるのかを以下にまとめていきます。
ビタミンA(ベータカロテン)
脂肪便症や胆道系障害などの脂質吸収不良、タンパク質欠乏症、エネルギー欠乏症などにより、ビタミンAの欠乏症が起こることがあります。
また、過度のアルコール摂取は、貯蔵されているビタミンAを消耗します。
ビタミンAが不足すると、体内ではベータカロテンがビタミンAに必要な分だけ変換されますが、ベータカロテンも足りなくなると目の角膜や粘膜がダメージを受け、症状が悪化すると視力が落ち、最悪の場合には失明することもあります。
ビタミンB1
食事からの摂取が不足した時、糖質の多い食品やアルコールを多量に摂取した時など、ビタミンB1の需要が高まると不足しやすくなります。
糖質の代謝に関わるビタミンB1が不足すると、糖質を主なエネルギー源としている神経や脳に影響が現れます。
欠乏症としては、精白米を常食している東洋人では脚気、アルコールを多飲する西洋人ではウェルニッケ脳症などがみられます。
<脚気の症状>
全身倦怠、体重低下、四肢の知覚障害、腱反射消失、心悸亢進、心拡大など
<ウェルニッケ脳症の症状>
眼球運動麻痺、歩行運動失調、意識障害
※ウェルニッケ脳症は慢性化するとコルサコフ症という精神病に移行
ビタミンB2
食事からのビタミンB2摂取量が不足した時、代謝異常、疾患(肝疾患、下垂体疾患、糖尿病など)、薬物の影響 (テトラサイクリンなどの抗生物質、クロルプロマジンなどの精神安定剤、副腎皮質ホルモン、経口避妊薬を連用した時) などで不足すると言われています。
ただし、ビタミンB2不足は単独ではあまり起こらず、他のビタミン不足と同時に起こります。
ビタミンB2が不足すると、成長障害、口角炎、舌炎、咽喉炎、皮膚炎などの症状がみられます。
ビタミンB6
ビタミンB6が不足した食生活を続けた時、薬物の影響(デオキシピリドキシン、イソニアジド、ヒドララジン、ペニシラミンなどのビタミンB6阻害剤)などに不足します。
しかし、ビタミンB6が単独で不足することは少なく、他のビタミンが不足したときに同時に起こります。
ビタミンB6が不足すると、湿疹、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎、貧血、麻痺性発作、聴覚過敏、脳波異常、免疫力低下などがみられます。
また、ビタミンB6依存症として貧血、キサンツレン酸尿症、ホモシスチン尿症などが知られています。
ビタミンC
アルコール中毒者、野菜やフルーツの摂取が少ない人 (1人暮らしの男性や高齢者など) 、薬物中毒者はビタミンCが不足しやすいです。
ビタミンCが不足すると初期症状として、疲労感、倦怠感、歯肉炎が出てきます。
ビタミンC欠乏が進行するにつれて、痣ができやすくなる、関節痛、傷が治りにくい、過角化症、捻転毛などの症状が現れます。
さらに、うつ状態、歯肉の腫れや出血、歯のぐらつきや脱落、鉄欠乏性貧血(出血の増加、鉄吸収低下のため)も発症します。
カルシウム
カルシウム不足は、食事からの摂取不足や腸からの吸収不良によって起こります。
また、カルシウムの吸収にはビタミンDを必要とするため、ビタミンD不足によってもカルシウム不足が引き起こされることもあります。
カルシウムの血中濃度は厳密に調節されるため、カルシウム摂取量が足りなくても短期的には顕著な症状が発現することはありませんが、長期に渡ってカルシウムが不足すると、小児のくる病、骨量減少症、骨粗鬆症などを引き起こします。
また、高血圧、動脈硬化、認知障害、免疫異常、糖尿病、肥満、腫瘍、軟骨の変性と変形性関節症、筋肉の痙攣など多くの疾病を引き起こす可能性があります。
マグネシウム
消化器疾患の人、2型糖尿病患者、アルコール依存者、高齢者は十分な量のマグネシウムを摂取していない場合が多いか、または腸管でのマグネシウム吸収を低下させたり、体外へのマグネシウム喪失量が増加したりするような病状がある(または薬剤を服用している)ため、マグネシウム不足のリスクが高いと考えられています。
また、カルシウムの摂取量に対するマグネシウムの相対的摂取不足が、様々な疾患の誘因として重要視されています。
マグネシウムが不足すると、骨粗鬆症、神経疾患、精神疾患、不整脈、心疾患、筋肉収縮異常などが起こることが知られています。
鉄
鉄不足は世界的に最も多く見られる栄養欠乏症であり、特に生後6ヶ月以上の乳幼児、月経のある女性、妊婦・授乳婦、腎不全で特に透析を受けている人、ビタミンA欠乏者などは鉄不足が多く見られます。
また、食物からの摂取不足(摂取した食事中の鉄量が少ない、全体の食事量が少ない、鉄の吸収に影響を与える物質の摂取量の過不足)によっても起こります。
鉄不足の代表的な症状は貧血です。
さらに、運動機能や認知機能の低下、体温保持機能の低下、 免疫機能の低下の他、小児では豊かな感情の減退、集中力の低下、イライラ、学習能力の減退などが指摘されています。
亜鉛
消化器疾患などがある人、菜食主義者、妊婦と授乳婦、鎌形赤血球患者、アルコール依存者、薬剤(亜鉛と錯体を形成する薬剤)の服用なとは、食事からの摂取不足、必要量の増加、排泄の促進により亜鉛不足が起こります。
亜鉛が不足すると、味覚障害や皮膚炎、食欲不振などが起こることが知られています。
小児で不足すると、成長障害、性腺発育障害がみられます。
この他、免疫機能低下、皮疹、創傷治癒障害、慢性下痢、貧血、催奇形性、精神障害などが起こる可能性もあります。
いかがでしょうか❓
日本人では上記の栄養素の摂取が不足しているため、もしかすると、今悩んでいる体の症状が栄養素の不足による症状に当てはまる方もいるかもしれませんね😣
乱れた食生活の場合には、単一の栄養素だけが不足することは少ないため、バランスの良い食事を心掛けるようにすると良いでしょう。
もし、食生活の改善が難しい場合には、マルチビタミン・ミネラルなどのサプリメントを活用するのもお勧めです😄
(管理栄養士 さ)
<参考>
・国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 サイト 「健康食品」の安全性・有効性情報
・厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』「統合医療」情報発信サイト
・日本人の食事摂取基準(2015年版)