皆さんは普段、お酒を飲みますか❓
昔からお酒は「百薬の長」として、仲間との親睦を深めたり、祝い事や伝統行事などで用いられてきてきました。
しかし、現代ではお酒が安価で簡単に手に入るようになったことから、個人の嗜好レベルを超えて大量に飲んでしまう方がいらっしゃいます。
「少量の飲酒は体に良い」という考えもありますが、大量の飲酒になってしまうと、事故や暴力などの社会的な事から肝疾患、糖尿病、心血管疾患、認知症などの身体的なものまで様々な問題が発生してしまうことがあります。
こういった大量の飲酒の問題の中で、今回は「認知症」に着目してまとめます💡
●アルコール性認知症
多量に飲酒する人に認知機能の低下や認知症がみられることが知られています。
若い人でもアルコール依存症の場合には前頭葉機能が障害されていることは珍しくなく、やや高齢の依存症者では物忘れや認知症が高い割合でみられると言われています。
アルコールが関係する認知症の原因は以下の通りで、アルコール以外に認知症の原因がない場合にアルコール性認知症と診断されます。
<アルコールが関係する認知症の原因>
・多発性脳梗塞などの脳血管障害
・頭部外傷
・肝硬変
・糖尿病
・ウェルニッケ・コルサコフ症候群を含む栄養障害 など
※ウェルニッケ・コルサコフ症候群とは
ビタミンB1の欠乏症のこと。
多量の飲酒によって「食事を摂らずにお酒ばかり飲み栄養失調になる」、「下痢を起こしビタミンB1の吸収不良となる」、「アルコール分解にビタミンB1が使われる」などビタミンB1欠乏を招きやすくなる。
ビタミンB1は糖代謝に必須であり、特に脳内では主に糖質がエネルギーに変換されるため、ビタミンB1欠乏により脳内で糖からエネルギーが作られなくなって脳症を引き起こしてしまう。
●飲酒と認知症の関係(論文紹介)
アルコール使用障害(大量の飲酒)と認知症
<研究内容>
2008年から2013年にかけてフランス国内の病院に入院した患者のうち、認知症と認められた約110万人を対象としてアルコール使用障害との関係を調べているコホート研究。
<結果>
アルコール使用障害(飲酒による精神的および行動的障害の患者が直面する認知症発症の危険性は、そうではない患者と比べて男性は3.36倍、女性では3.34倍も高かった。
アルコール使用障害は、すべてのタイプの認知症(特に若年性認知症)の主な危険因子である可能性がある。
(Lancet Public Health. 2018 Mar;3(3):e124-e132)
少量~中等度の飲酒と認知症
<研究内容>
アメリカの4地域(ノースカロライナ州、カリフォルニア州、カリフォルニア州、ペンシルバニア州)に住んでいる65歳以上の心臓血管健康調査参加者5888名の男女を対象としてアルコールの摂取量と認知機能を調べたコホート研究。
<結果>
1週間あたりの飲酒量がビール1~6本の場合だと認知症発症のリスクは上昇しないが、7~13本や14本以上と飲酒量が増加すると認知症のリスクは高まった。
(ビール1本の量は350ml)
1週間にビール1~6本程度の飲酒は、全く飲酒しない人や1週間に1杯未満の人よりも認知症のリスクを低下させ、1週間に7杯以上の飲酒によって認知症のリスクが高まる可能性がある。
(JAMA. 2003 Mar 19;289(11):1405-13.)
過度な飲酒は認知症のリスクを高めるだけでなく、肝機能を傷害したり脳血管疾患などを引き起こす恐れがあります😣
お酒が好きでよく飲む人は、健康の維持や認知症の予防のためにもお酒の摂取量に気をつけたほうが良さそうです❗
しかし、全く飲まないよりは1週間に350mlのビールを1~6本飲んだ方が認知症のリスクが低くなる可能性があるため、それを理由に飲酒できるのは嬉しいですね🍺🍶🍷
ただし、アルコールを体内で代謝するためにはビタミンB1を始めとするビタミンB群が大切であり、アルコール代謝を行う肝臓を守るための抗酸化栄養素(ビタミンC、ビタミンE、CoQ10、グルタチオン、セレンなど)や良質なタンパク質の摂取はとても重要です。
脂ぎった肉ばかり食べてもこれらの栄養素は十分に補給することはできません。
脂身の少ない肉や魚、卵、レバーの他、野菜、果物、海藻、ナッツなどをバランスよく組み合わせるのがお勧めです🌟
お酒を飲む時は、お酒の量だけでなく一緒に食べる食事内容もしっかり考えてみてください😄
(管理栄養士 さ)
<参考>
・厚生労働省サイト e-ヘルスネット アルコールと社会問題
・国税庁サイト
・厚生労働省サイト e-ヘルスネット アルコール性認知症
・厚生労働省サイト e-ヘルスネット ウェルニッケ・コルサコフ症候群
・厚生労働省サイト e-ヘルスネット 認知症
・独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター サイト
・厚生労働省サイト e-ヘルスネット アルコールと認知症
・イラストレイテッド ハーパ・生化学 原書29版
・日本食品標準成分表2015(七訂)