糖尿病は世界中で増えている疾患であり、2035年には世界の糖尿病患者は6億人に到達すると言われています。
その糖尿病の発症要因の一つに「酸化ストレス」が関わっている可能性がある、という研究報告がありましたのでご紹介します。
●酸化ストレスとインスリン感受性の関連
大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学より発表された研究報告です。
(目的)
酸化ストレスが肝臓の脂肪蓄積やインスリン抵抗性にどのように関与するかを調査する
(方法)
脂肪細胞に特異的
それぞれの食餌誘発性肥満における代謝特徴を評価。
(結果)
Fat ROS排除マウスでは、異性所脂質の蓄積が減少し、インスリン感受性が改善されたが、反対に特にグルタチオンを減少させたFat ROS増強マウスでは異性所脂質の増加やインスリン感受性の低下が見られた。
これらの結果から、研究グループは正常な脂肪増殖や異性所脂質蓄積およびインスリン抵抗性における脂肪酸化ストレスの影響を明らかにし、脂肪細胞を標的とした抗酸化療法の可能性を示唆しています
●脂肪肝と糖尿病
脂肪肝が糖尿病の発症や悪化に影響することは、以前から言われてきました。
肝臓に脂肪が溜まりはじめると、インスリン抵抗性が生じ、その結果として高血糖や高インスリン血症が生じやすくなります。
また、高血糖などによるインスリン分泌過多で内臓脂肪蓄積が促されることもわかっており、高血糖と内臓脂肪蓄積は糖尿病発症への負のスパイラルだと考えられています。
しかし、肥満であっても糖尿病にならない人(代謝的に健康な肥満:MHO)がいることから、単に脂肪蓄積のみが発症リスクではない可能性についても言及されていました
今回の研究では、同じような肥満体型であっても、体内の抗酸化機構の働きによって糖尿病を発症するかどうかの分かれ道になる、ということが示唆されています
●酸化ストレスを軽減するには?
今回ご紹介した研究はマウスでの調査だったため、そのままヒトに当てはまるとは限りませんが、それでも酸化ストレスが糖尿病や高血圧、動脈硬化などの生活習慣病、心疾患、消化器疾患、精神疾患などの多くの疾患の発症や進展に関与していることは以前より知られていました。
そういった酸化ストレスを軽減する方法として挙げられるのは、食事や運動、環境やストレス状態などの改善と、抗酸化作用のある栄養素、もしくは体内での抗酸化をサポートする栄養素を摂取することです。
【お勧めの栄養素】
※ピクノジェノール®はホーファーリサーチ社の登録商標です。
抗酸化作用のある栄養素は、それ単品で摂取しても効果が期待できますが、相性の良い栄養素同士を組み合わせるとさらに良い効果が期待できます
β-カロテンとビタミンE、ビタミンCは相性が良く、ピクノジェノール®はビタミンE、ビタミンC、グルタチオン、コエンザイムQ10との相性が良いことが報告されています。
また、最新の研究では「ビタミンD(25‐ヒドロキシビタミンD)」の血中濃度が高いと糖尿病のリスクが低くなることが報告されています(Plasma 25-hydroxyvitamin D concentration and risk of type 2 diabetes and pre-diabetes: 12-year cohort study)。
そのため糖尿病のリスクを低減させるためには、抗酸化作用のある栄養素以外の栄養素も不足に注意して摂取することが大切だと言えます
せっかく摂った栄養素が体内で効果を発揮できるよう、栄養素や食べ物は偏らずに摂取できると良いですね
(管理栄養士 あ)