緑茶は私達日本人にとって親しみやすい飲み物であり、日常的に飲んでいるという人が多くいます。
その緑茶に関する研究では、緑茶に含まれている特定の栄養成分単体を摂取するのではなく、「緑茶」として栄養素を複合的に摂取することで認知症予防にも役立つのではないか、というものが数多く報告されています。
そこで今回は、「緑茶と認知症予防」についてまとめます。
●緑茶ってどんなお茶?
緑茶は平安時代に中国(唐)から日本に伝わり、当時は貴重な「薬」として重宝されました。
今では日本各地で栽培され、特に静岡県、鹿児島県、三重県の 3 県で全国の栽培面積の約 7 割を占めると言われています。
全国的に茶葉の消費が年々減っている一方で、ペットボトル入りの緑茶の消費量は増加していることから、手軽に緑茶を楽しみたいという方が増えていることがわかります💡
栽培や製造方法などによって緑茶は様々な種類に別れ、味や香り、淹れ方なども異なってきます🍵
代表的な緑茶は以下の通りです。
●緑茶に含まれる栄養素
緑茶にはビタミン、ミネラル、食物繊維、タンパク質の他、渋み成分であるカテキン類、苦味成分であるカフェイン、旨味成分であるテアニンなどのアミノ酸が含まれています。
このうち、カテキン類に抗酸化作用、抗がん作用、抗アレルギー作用、血圧上昇抑制作用、コレステロール低下作用、骨粗鬆症予防など様々な生理作用があることが多く報告されています😃
一般的によく飲まれている 急須で入れた せん茶(浸出液)には、多種類の栄養素が含まれていますが、それぞれの量は特に多いわけではありません。
一方で、茶葉を丸ごと摂取することのできる粉末茶や抹茶は栄養素が全体的に多めです。
●緑茶と認知症予防に関する論文紹介
<緑茶(浸出液の摂取と認知症)>
石川県に住む60 歳以上の認知機能が正常な方を対象として行ったコホート研究。
認知機能の評価にはミニメンタルステート(MMSE)と認知症の国際的評価法である臨床的認知症尺度(CDR)で認知症を判断した(MMSEは24未満、CDRは1:軽度認知症、2:中等度認知症、3:重度認知症)。
結果、緑茶(浸出液)を毎日飲む人は全く飲まない人よりも認知症になるリスクが74%も低く認知機能低下症状 (MCIまたは認知症)になるリスクも68%低いことがわかった。
緑茶の消費量は、認知機能低下リスクの低下と有意に関連していることを示している。
(PLOS ONE May 2014 Volume9 Issue5 e96013)
<緑茶末と認知症>
介護老人福祉施設に入所中の物忘れを訴える65歳以上の方を対象として、3ヶ月間、1日2g 緑茶末摂取を行い、前後の認知機能を評価して比較した前後比較試験。
認知機能の評価にはミニメンタルステート検査日本語版(MMSE-J)を用い、MMSE-Jのポイントが28点未満の者について評価した。
結果、3ヶ月間の緑茶末の摂取によってMMSE−Jの得点の合計が有意に改善した。また、評価領域に基づくドメインごとの比較では短期記憶の得点が有意に改善したが、他の得点には有意な差は見られなかった。
日常的に摂取可能な量の緑茶は認知機能低下に対して抑制的な作用を持つことが示唆された。
(「茶及びその成分を利用した補完代替医療の臨床的展開」静岡県立大 薬食生命科学総合総合学府博士論文)
普段飲んでいる緑茶で認知症が予防できるかもしれないなんて嬉しいですね✨
毎日飲むものだからこそ、農薬や化学肥料が使われていない有機栽培の物や、栄養素が多く含まれて手軽に飲める粉末茶を選ぶのもおすすめです😁
最後に、緑茶にはカフェインが含まれており、カフェインの影響を気にされる方がいらっしゃいます。
しかし、欧州食品安全機関(EFSA)では、健康な人のカフェイン摂取量は1日 400mg まで、妊婦・授乳婦は 1 日 200mg程度であれば健康リスクは増加しないと評価しています。
「影響が心配だから絶対にカフェインを摂らないようにする」のではなく、「影響に気をつけてカフェインを摂る」というようにしすれば、日頃のストレスは少なくなるかもしれないですね😄
緑茶に含まれるカフェイン量をまとめておきますので、ぜひ、参考にしてみてください❗
(管理栄養士 さ)
【参考】
・農林水産省サイト「茶をめぐる情勢」
・農林水産省サイト「aff(あふ)17 年4月号」
・農林水産省サイト「カフェインの過剰摂取について」
・「日本食品標準成分表 2015 年版(七訂)