年齢を重ねる上で、多くの方が不安に思う疾患の1つに「認知症」があります。
今回は、そんな認知症の予防に繋がることが期待できる研究報告を、いくつかご紹介いたします。
●認知症予防にはコミュニケーションが大切
国立長寿医療研究センターが行った追跡調査で、「結婚している」「家族との交流がある」「友人とコンタクトをとっている」「社会活動への参加」「(賃金のある)労働をしている」のいずれかの項目に当てはまると、認知症のリスクが低下すること、項目が0-1個のグループと比較すると、5項目当てはまるグループは、認知症の発症リスクが46%低くなることが報告されました。
また、国立長寿医療研究センターと新潟県与板町(現在は長岡市と合併)が行った調査では、ほとんど家を出ない高齢者は、毎日外出する人たちに比べ、認知機能が落ちるリスクが約3.5倍も高いことが報告されています
そのため、認知機能の低下を少しでも予防できる方法として、(特に一人暮らしの高齢者では)家族以外とのコミュニケーションをとることや、社会的活動への参加、就労期間の延長などを積極的に考えていく必要があるといえます 。
●認知症予防におススメなのは、やっぱり野菜
米シカゴのラッシュ大学の研究では、緑色の葉物野菜の摂取は認知機能低下の遅れと関連していたことが報告されています。
この研究報告ではさらに、「葉物野菜の摂取が一番多いグループは、摂取が少ないグループと比較すると認知機能の低下が約11年遅いのと同等の結果となったこと」や「ビタミンK、ルテイン、β-カロテン、硝酸塩、葉酸、ケンフェロール、α-トコフェロールが豊富な食品の摂取は、加齢に伴う認知機能低下を遅らせることに役立つかもしれない」などが言及されています。
●MIND食は脳の老化を遅くする可能性がある
ラッシュ大学メディカルセンターでは、「MIND食」がアルツハイマー病を発症するリスクを下げるのに有効であることも発表しています
「MIND食」は、魚介類の摂取などを中心とした「地中海ダイエット」と、高血圧の改善のために提唱された「DASH食」を発展的に融合させた食事療法で、加齢に伴う認知機能低下の改善や認知症の発症リスクの低下などの効果もあることが示されています。
MIND食では、ファーストフードやチーズ、牛・豚肉、ケーキなどの摂取を控えることに加え、野菜類、ナッツ、豆類、全粒粉などの積極的な摂取を勧めています。
●今日から出来ることを
認知症の予防には、定期的な運動習慣が効果的であることも、数多くの論文等で報告されています。
このように、認知症の発症リスクを下げるには、日々の生活習慣の積み重ねが重要であると言えます。
野菜(できれば葉物野菜)を1日1品増やす、塩分を少し控えるようにする、少しだけ外出の機会を増やすようにする、周囲の人とコミュニケーションをとるようにする、など毎日の生活の中で取り入れられそうなことから意識してみることをお勧めいたします
突然「健康的な生活」に変えようとすると、長く続けられなかったり、ストレスを感じる方もいらっしゃるかと思います。
少しずつのコツコツとした積み重ねで、「健康的な生活習慣」がいつの間にか身についている、となるといいですね
ぜひ、できることから意識してみることをお勧めいたします。
(管理栄養士 あ)
国立長寿医療研究センター Influence of social relationship domains and their combinations on incident dementia: a prospective cohort study
老人研NEWS No.219 「高齢者リスク調査」について教えてください
Neurology Nutrients and bioactives in green leafy vegetables and cognitive decline
Rush Daily Leafy Greens May Slow Cognitive Decline
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