精神疾患により医療機関にかかっている患者数は、近年大幅に増加してきているそうです。
精神疾患で医療機関にかかる人の人数は、平成8年は218万人、平成14年には258万人、平成23年は320万人となっています。
その中でも、うつ病が一番多く、次いで統合失調症、不安障害、認知症となっており、近年はうつ病や認知症などの著しい増加がみられます。
今回は、「うつ病」の予防に「魚介類の摂取」が効果的だという調査報告をご紹介いたします。
魚を1日111g摂取すると、うつ病のリスクが56%減少
今回の報告は、多目的コホート研究(JPHC研究)の一環として行われた調査結果です。
【調査方法】 追跡調査
【被験者】 長野県南佐久郡 8町村に在住していた男女(40-59歳)1,184名
【調査内容】
摂取した魚介類の量、脂質の種類と量別に5分類、4グループに分け、うつ病のリスクを比較
【結果】
1日に57g(中央値)魚介類を摂取するグループと比較し、1日111g(中央値)摂取するグループでうつ病のリスクの低下がみられた。
調査対象の1,184名の内、95名が精神科医によってうつ病と診断されました。
今回行なわれた研究では、対象者をn-3系脂肪酸の摂取量でグループ分けし、最も摂取量が少ないグループと比較した際の、他のグループとのうつ病のリスクの差を検証した試験です。
検証したのは、「魚介類」「α-リノレン酸」「エイコサペンタエン酸(EPA)」「ドコサペンタエン酸(DPA)」「ドコサヘキサエン酸(DHA)」の5分類です。
[多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告より引用]
結果として、魚介類の摂取もですが、エイコサペンタエン酸(EPA)は1日に200㎎(中央値)摂取するグループと比較し、1日307mg(中央値)摂取するグループでうつ病リスクの低下がみられ、
ドコサペンタエン酸(DPA)を1日に67mg(中央値)摂取するグループと比較して、1日123mg(中央値)摂取するグループでもうつ病リスクの低下がみられました。
n-3系脂肪酸とうつ病
近年、適切な栄養を摂取することは、うつ病の予防法の一つとして注目されており、栄養の中でも魚、特に青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸とうつ病の関連を調べる研究が欧米諸国で多く行われています。
うつ病に対してn-3系脂肪酸が効果を示すメカニズムは十分には明らかにされていませんが、n-3系脂肪酸には抗炎症、免疫調整、神経伝達物質調整、神経保護など多様な作用があり、それらが抗うつ効果を示すのではないかと考えられています。
また、複数の研究をまとめたメタ解析では、うつ病患者は健常者と比べて血液中のn-3系脂肪酸が低いこと、n-3系脂肪酸サプリメント(なかでもn-3系脂肪酸の一つであるエイコサペンタエン酸(EPA)含有率が高いもの)がうつ病治療に有益であることなどが報告されています。
しかし以前のブログでもご紹介したように、日本人の魚介類の摂取量は減少傾向にあります
今回ご紹介した試験では、1日111g(中央値)の摂取でリスクの低下がみられるということですが、男女合わせた1日平均摂取量は70gを下回っています。
「魚介類を積極的に摂ることでうつ病のリスクを低減することが出来る」と捉え、毎日の食卓に少しずつでも魚介類を取り入れ、摂取量を増やす意識を持つようにされると良いと思います
そもそも「うつ病」とは?
「うつ病」とは、抑うつ状態がある程度以上、重症の場合をそう呼びます。
憂鬱である、気分が落ち込んでいるなどの状態を「抑うつ気分」と呼び、「抑うつ気分」が強い状態を「抑うつ状態」と呼んでいます。
うつ病の分類方法の代表的なものは、原因から見て分ける方法です。
どんな症状があるのか?
以下に、うつ状態でみられる症状をまとめたものを示します。
うつ病は気分の落ち込み以外にも、疲れやすい、頭痛、動悸や食欲の低下など、身体的な症状も出ることで、日常生活にも支障をきたすことがあります。
様々な研究でも言われているように、うつ病の改善や予防には「適切な栄養素の摂取」が大切です。
ただ、「体調が優れず食欲がない」という際には、サプリメントなどを利用し、まず必要な栄養素を摂ることを意識してみるのも良いと思います
(あ)