以前のブログでは、栄養指導に入って頂くための方法や、指導時間を有効に使う工夫などをご紹介いたしました。
今回は、健診などで数値異常を指摘されても、治療の目的が分からず、指導を受けることに対して納得していない方に、「どうして指導を受ける必要があるのか」を納得していただくために、試行錯誤したお話をご紹介いたします。
●「痛くもかゆくもないのに、なんでこんなことしなきゃいけないのか」
糖尿病をはじめとした生活習慣病の中には、自覚症状がなく、検査を受けて初めて指摘されるものがあります。
そのため、「なんで」や「どうして」などの気持ちを持たれている患者様が少なくありません。
また、痛風発作など痛みがあるときにだけ頑張って、症状が出なくなると食事や生活を元に戻し、また発作をぶり返す、というような方も…
今現在、痛みがあったりするわけでもないので、毎日の生活を変える必要性や、栄養指導を受ける理由などがよく分からない、ということを仰る方が多くいらっしゃいました。
●患者様ご自身の「現在の身体の状態」を知ってもらいましょう!
納得しないまま指導に来られる方の中には「お忙しい先生に聞くのが申し訳なくて…。」と仰り、指摘された数値や、ご自身の疾患名なども曖昧な方がちらほら…。
検査結果の何が良くないのか、むしろ検査数値が何を意味するのかわからず、自覚症状もない患者様の中には「特に困ってないので、食事指導とか薬とかいらないんですけど…。」と仰る方もいました。
そのため、「お食事の話の前に、検査数値の説明や診断された疾患に関する説明、自覚症状と検査数値の関連などを説明することが必要なんだ!」と考え、指導の中に説明時間を設けるようにし始めました。
●まず、「どんな資料に興味を持つか」を見てみましょう
検査項目やその値についての説明を行う際には、いくつかの資料を用意すると思います。
その際に意識していただきたいのは、「どの資料を見せた時に、患者様が反応したか」という点です。
多くの患者様に接して気が付いたのは、それぞれ好みとする資料が違っている、という点です。
基本的には、図や絵などが多く、カラフルなものが好まれる傾向にありますが、人によってはデータを詳細にまとめてある資料や、疾患に関する本などの方が分かりやすい、と興味を持たれることもあります。
その為、その方の好みがわからない時には、様々な資料を並べ、どれが分かりやすいか手に取って見て頂くのも良いと思います。
●好みに合わせて、その場で描いてみましょう!
患者様の好みがわかりましたら、その患者様の検査結果や現状に合わせ、その場で絵や図を描いてみるのもお勧めです
<例① インスリンとは?>
可愛いキャラクターなどに例えると、親しみやすいようです
その他、車や船、人物など、その患者様のお仕事内容や趣味・興味に合ったものに例えると理解して頂きやすかったです。
<例② HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)って?>
出来る限り簡単に、数値の意味、現在の数値がどの位の状態なのか、などを説明します。
その場でストーリーを作って、紙芝居のように説明したこともありました
<例③ 血糖値とHbA1c>
今回測定した血糖値がどの位の値で、それがどういう意味なのか、などをHbA1cなどと合わせて説明する際に描いていました。
食後高血糖、空腹時高血糖、糖新生での高血糖などを説明する際にも、こうしてグラフなどを描いて説明すると納得して頂きやすかったです。
メーカーなどが作成した資料は、わかりやすくまとめられたものが多く、とても使いやすい資料だと思います。
ただ人によっては、その資料に書いてある内容を「自分のこと」と感じられず、お渡ししてもそのまま読まずに捨てられてしまうこともあります
しかし、「自分の状態を絵に描いて説明してもらった」というのは喜んでもらえることが多く、メモ書きのように描いたものでも、「これ、もらっていいですか?」と持ち帰りを希望された方がとても多かったです
●目標は「納得してもらうこと」です!!
最近では、モバイル端末を活用したりすれば、その場で情報を探すことも、必要な情報をその端末にまとめておくことも出来ると思います。
そういったものを活用することで、説明をスムーズに効率よく進めることも大切です
しかし患者様の中には、「多くの人に当てはまる情報」より「今、現時点での自分の体の状態」を説明する方が納得しやすかったり、理解しやすい方がいらっしゃいます。
ぜひ、患者様の目の前で描きながら説明することも試してみて下さい。
そういった説明をする際に大切なのは、説明を聞いた患者様が納得し、自ら積極的に指導や治療に臨まれることを目標にすることです
どれだけ周りがサポートしていても、結局ご自身が意識し、取り組まなくては治療も指導もなかなか効果は出てきません。
その「納得」を引き出す方法の一つとして、「手書きの資料」もぜひお試し頂ければ幸いです
(あ)