最近はスーパーなどでも見かけるようになってきた「グルテンフリー」の商品。
「グルテン」がどう悪いのか、なぜ避けられているのか…。
今回は、「グルテン」に関する情報をご紹介いたします。
●グルテンってなに?
「グルテン」は、「パンをこねたもののように、小麦粉が水と混ぜられ物理的に操作されると形成されるたんぱく質の特異的複合体」と定義されており、この「特異的複合体」はグリアジンおよびグルテニンの両方から構成され、その両方ともほとんどの 小麦の品種においてほぼ同じ割合で存在しています。
小麦粉中には蛋白質が6~15%含まれており、いろいろな特性を持つ蛋白質が混在していますが、その約85%はグリアジンとグルテニンです。
グリアジンは弾力は弱いが粘着力が強くて伸びやすい性質を持っており、グルテニンは弾力に富むが伸びにくい性質があります。
この2つが結びつくと、両方の性質(粘着性と弾性)を適度に兼ね備えたグルテンになります
小麦を粉砕して利用するのは、このグルテンを形成しやすくするためです。
●なんで、「グルテンフリー?」
「セリアック病」と呼ばれる慢性的な小腸の炎症性疾患は、「グルテン過敏性腸症」とも呼ばれています。
セリアック病の患者がグルテンを含む食品を摂取すると、グルテンが小腸の絨毛を傷つけることがわかっており、摂取し続けることで栄養素の吸収が悪くなり、栄養欠乏を始めとした多くの健康問題を引き起こします。
米国では約300万人、欧州でも約500万人のセリアック病患者がいると推定されており、その数は年々増え続けています
セリアック病は、現時点では治療法が見つかっておらず、セリアック病の患者は食事においてあらゆるグルテン摂取を控えるように指示されます。
そういった「必要に迫られて」グルテンフリー食を選択する人に加え、「グルテンに関する様々な健康情報を受け入れている」消費者も増えているようです
例えば、
①グルテン含有食品はADHD(注意欠如多動性障害)や自閉症、IBS(過敏性腸症候群)へのリスクが高まるという情報
②健康志向の高い人たちの間でのブーム(漠然と腸に良い、という扱いでの利用)
③グルテンフリーはヘルシーである、といった志向に合わせ、元々グルテンが含まれていない食品にも「グルテンフリー」という表記がされるようになった
こういった影響により、グルテンフリーの市場が拡大し、またプレミアム価格で販売できることから、多くの食品企業が加入してきていると考えられます。
●日本でも「グルテンフリー」の基準はあるの?
コーデックス、FDA(米国食品医薬局)、カナダ保健省、EU連合、FSA(英国食品基準庁)などでは、基準としてグルテン含有量20ppm未満(1㎏あたり20㎎未満)を適用しています。
非営利公益法人GFCO(グルテンフリー認証機構)は、27か国700以上の企業の商品を承認していますが、グルテン含有量が10ppm以下であることを認証の基準にしています。
日本では現時点で「グルテンフリー」に関する基準や規格はありません。
「小麦」をアレルギー表示対象食品としているので、10ppm以上の小麦総タンパクを含む食品であれば、「包装容器に小麦のアレルギー表示」をしなければなりません。
ですが、「大麦」や「ライ麦」など小麦以外でのアレルギー表示の必要はありません。
しかし、市場が拡大し、国内でも「グルテンフリー」を表記する商品が増えているため、農林水産省では「ノングルテン」と表示するためのガイドラインを作成しているそうです
●グルテンフリーにした方がいいの?
グルテンに対する日本人への影響については科学的根拠がまだ十分に整っていないというのが現状です。
しかし、セリアック病やグルテンアレルギーのある方は、グルテンフリーの商品を選ぶ必要があると思います
一方で、グルテンフリーの商品は、パンや麺などに必要な粘着性や弾性が不足していることを補うため、でんぷんや加工でんぷんの他、増粘剤や結着剤などが使われている商品も多くみられます。
グルテンや小麦にアレルギーのない場合は、「なんとなく体に良さそう」といった理由でグルテンフリーの商品を選ぶより、添加物が少なく、天然由来の原料で作られた食品を選ぶ、というのも一つの「健康的な食品の選び方」だと思います
(あ)
製粉振興会 小麦特有のたんぱく質グルテン (http://www.seifun.or.jp/kisochishiki/tanpakusituguruten.html)
農林水産省 食品におけるグルテンフリー表示規則(https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2016/30725e9852782d55/rp_disprule_gfreeUS201603_r.pdf)
消費者庁 食品規格の適正化に向けた取り組みについて(グルテンフリー表示項目)(http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pdf/160623_pressrelease_0003.pdf)
NPO法人 国内産米粉推進ネットワーク グルテンフリー表示に係る調査報告書(http://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/komeko/attach/pdf/index-15.pdf)
日本家政学会誌 妊娠ラットにおける小麦グルテン投与の影響 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1987/44/9/44_9_731/_pdf)
農研機構 グルタチオンを利用したグルテンフリー米粉パンの製造基盤技術 (https://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/nfri/2010/nfri10-05.html)
農林水産省 米粉をめぐる現況について (http://www.maff.go.jp/j/seisan/keikaku/komeko/pdf/komeko2.pdf)