妊娠を計画している女性や妊娠の可能性がある女性は「葉酸」が含まれるサプリメントを摂っている方が多いですね
また、不妊治療中の女性では「葉酸」のサプリメントよりも「マルチビタミン・ミネラル」を摂っている方が妊娠しやすいといった報告(Reproductive BioMedicine Online.2012 Jan;24(1):54-60)があります
普段、当社にお問い合わせいただく内容をみると、妊娠前にサプリメントで栄養補給している方が増えている印象ですが、妊娠中のサプリメント摂取については不安を感じている方が多いようです
今回は「妊娠中のマルチビタミン・ミネラル摂取と子供の認知力」について調べている論文をご紹介します
妊婦のマルチビタミン・ミネラル摂取で子供の認知力アップ
「母親が妊娠中に微量栄養素の補助食品(マルチビタミン・ミネラル)を摂っていた場合、子どもの9-12歳時の認知機能が向上した」という内容の、インドネシアで行われた研究の報告です
研究の目的
妊娠(受胎)から2歳までの1,000日間における子供の脳や認知力の発達は、栄養、衛生、教育、刺激などの複数の生物医学的、社会環境的な要素に影響されると言われている。
特に妊娠中の母親の微量栄養素の欠乏は子供の発達に影響を与える危険があり、世界的に妊婦には鉄と葉酸の補給が推奨されている。
動物モデルにおいては、鉄と葉酸に加えてヨウ素、亜鉛、ビタミンB6などの微量栄養素が子供の神経発達に重要であることが示されている。
ヒトにおいては、子供の発達と妊娠中の栄養失調との関連が指摘されているが、母親がマルチビタミン・ミネラルで栄養素を補給した場合の長期間に及ぶ子供への影響は調べられていない。
そこで妊娠中に母親がマルチビタミン・ミネラルで微量栄養素を補給した場合、子供が成長したとき(9~12歳)の認知機能にどのような影響があるかを調べる。
研究の対象
インドネシアに住む9~12歳の2,879名の子供。
研究の方法
「鉄と葉酸(IFA)」か「マルチビタミン・ミネラル(MVM)」のサプリメントを母親が補充した無作為化二重盲検試験である複数栄養素補充療法(SUMMIT)試験のフォローアップ試験。
母親に妊娠中から出産後の3か月間、毎日IFAかMVMを摂ってもらい、子供が9~12歳になった時に認知能力、陳述記憶※1、手続き記憶※2、実行機能、学業成績、微細運動能力※3などを調べた。
なお、母親の栄養不良は上腕周囲径23.5㎝未満、貧血はヘモグロビン110g/L未満で判断し、摂取したIFAとMVMのそれぞれに配合されていた栄養素は以下の通り
<鉄と葉酸(IFA)>
・鉄 …30㎎
・葉酸 …400μg
<マルチビタミン・ミネラル(MVM)>
・ビタミンA …800μg
・ビタミンD …200IU(5μg)
・ビタミンE …10㎎
・ビタミンC …70㎎
・ビタミンB1 …1.4㎎
・ビタミンB2 …1.4㎎
・ナイアシン …18㎎
・ビタミンB6 …1.9㎎
・葉酸 …400μg
・ビタミンB12 …1.6μg
・鉄 …30㎎
・亜鉛 …15㎎
・銅 …2㎎
・セレン …65μg
・ヨウ素 …150μg
※1:陳述記憶とは
言語、計算則、歴史的事実などの「事実に関する記憶」と、自分が経験した出来事に関する「エピソード記憶」のこと。
※2:手続き記憶とは
自転車に乗ったり楽器を演奏するなど「体が覚えている記憶」のこと。
※3:微細運動能力とは
ボタンをかけたり、ハサミを使ったりといった「手先の操作」のこと。
研究の結果
・MVMを摂っていた母親から産まれた子供はIFAを摂っていた母親から産まれた子供と比較し、手続き記憶のスコアが有意に高かった。
・MVMを摂っていて貧血であった母親から産まれた子供は一般的な知的能力のスコアが有意に高かったが、MVMを摂っていて栄養不良な母親から産まれた子供はMVMによる効果は得られなかった。
・MVMを摂っていた母親から産まれた子供はIFAを摂っていた母親から産まれた子供と比較し、偶然ではなく全体的に評価のスコアが高かった。
・早産や低出生体重はどのスコアとも関連がなかったが、子供のヘモグロビン値は微細運動能力と有意に関連していた。
研究のまとめ
妊娠中の母親のマルチビタミン・ミネラル摂取は長期的な利益をもたらし、9~12歳の子供の認知機能の発達に良い影響を与える可能性がある。
<論文>
Maternal multiple micronutrient supplementation and other biomedical and socioenvironmental infl uences on children’s cognition at age 9–12 years in Indonesia: follow-up of the SUMMIT randomised trial
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28104188)
まとめ
この論文の詳細を見ると、母親のマルチビタミン・ミネラル補給以外で子供の認知機能に影響を与えるものとして、「妊娠中の母親のうつ状態」や「家庭の社会経済的地位」などもあるようです
また、妊娠中の栄養補給は食事からが基本であるため、食事をないがしろにしてサプリメントに頼ってしまうのはお勧めできません
※妊娠前~妊娠初期の葉酸補給(1日400μg)はサプリメントからが推奨されています。
しかし、妊娠中は「つわり」や「食の好みの変化」、「便秘」、「子宮による胃腸の圧迫により食欲が低下する」などの影響で満足に食事が摂れないことが多いです
妊婦さんは鉄や葉酸の補給を心掛けている方も多いとは思いますが、可能であれば添加物が少なく質の良いマルチビタミン・ミネラルで不足しやすい微量栄養素を補うことも良いと思います
なお、その際は以下の点に気を付ける事をお勧めします。
・タンパク質が不足して栄養不良にならないように肉や魚、卵、大豆製品などをきちんと補う
・日本人は海藻をよく食べることからヨウ素は十分補給できているため、ヨウ素が含まれないマルチビタミン・ミネラルを選ぶ
最後に、私(さ)は3月14日から産休に入ります。
食事に気を付けるのはもちろんのこと、マルチビタミン・ミネラルをはじめとするサプリメントを活用しつつ、元気な子供を産んで帰ってきたいと思っています!
今後のヘルシーパスブログは(あ)さんが定期的に更新していきますので、これからもお付き合いの程よろしくお願い申し上げます
追記:無事元気な男の子が生まれました。
(さ)