前回の「炭水化物の基礎知識【その①】」では、
『炭水化物』『糖質』『糖類』の栄養学上の違いについて説明をしました。
ではなぜ、このような様々な呼び方が食品の表示などに使われているのでしょう
今回は、『炭水化物』『糖質』『糖類』に関する食品表示の違いについてご紹介いたします。
●栄養成分表示って炭水化物や糖質の表示に対して、何か決まりはあるの
商品に栄養成分を表示する場合には、国が定める「栄養表示基準」をもとにしますが、
栄養成分表示で、『炭水化物』か『糖質』のどちらを表示するかは、基本的にはその商品を販売している会社が決めています。
通常、良く見かける栄養成分表示では、『炭水化物(g)』で記載されることが多く、皆さんもよく目にされていると思います。
食品に表示を行う際に栄養表示基準で定義される『炭水化物(製品100g中)』は、
【 炭水化物(g) = 100g - ( 水分 + たんぱく質 + 脂質 + 灰分 )】
とされ、表示上は、上記の()内のいずれにも分類されないものは炭水化物と計算されます。
そのため、『炭水化物』は食物繊維も含まれたものとして算出され、表示されています !!
ちなみに『糖質』は、栄養表示基準では
【 糖質 = 炭水化物 - 食物繊維 】
と、算出するように定義されており、
このように、『炭水化物』の代わりに糖質と食物繊維を分けて表示することも認められています。
●炭水化物、糖質、糖類…なぜ違う表示をみかけるの
健康志向や持病などの関係で、食品を選ぶ際に栄養成分まで意識する方が増えている中、多くの企業でも、『糖質』や『糖類』を減らした商品や、『食物繊維』を多く配合しているような商品を販売しています
このような栄養成分を強調表示した商品を販売する際には、その成分値の基準を満たすとともに、強調した成分を表示することが推奨されています。
例えば、“おなかすっきり玄米茶(食物繊維入り)”という商品の場合には、
このように、『食物繊維』を表示します。
こうした表示により、消費者がどの程度特定の栄養成分が入っているかを確認でき、商品を選びやすくなります。
最近では『糖類オフ』もしくは『糖類ゼロ』という表示もよく見かけるようになりました。
これも、
「糖(分)は極力摂りたくない… 」
と考える方が増えてきており、
「当社の商品は砂糖を減らして作っています!」
と謳いたい商品で表示されています
例として、“ダイエット炭酸(糖類ゼロ)”という商品があると仮定しますと、
このように表示されます。
特に『糖類ゼロ』や『糖類無添加』『砂糖不使用』などの表示を行う場合は、その商品の糖類の含有量を表示しなくてはいけません。
この商品の場合は、糖類を使用せず、スクラロースとアセスルファムKという合成甘味料を使用しているため、このような表示になります。
なお、「糖類ゼロ」や「砂糖不使用」の商品を試した時に、
「砂糖不使用なのに甘い 」や、
「この商品、糖類ゼロって書いてあるのに甘みを感じる 」
と思われることもあるかと思いますが、それは先程書いたような『合成甘味料』や『糖アルコール』を使用していることが多いからです。
前回のブログ内で紹介したように、『糖類』というのは、『単糖類』と『二糖類』の総称です。
『合成甘味料』や『糖アルコール』は『糖質』に分類されるため、『糖類』とは表示しません。
『炭水化物』『糖質』『糖類』の表記の違いは、商品をPRするツールとして企業がそれぞれの商品に表記することが増えた結果、様々な種類の表示を目にすることが多くなったのだと思います…
そういった表示について、各企業が独自の基準で勝手に誇大広告などしないよう、一定の基準を定め、消費者の混乱や誤認などを防いでくれるのが『栄養成分表示』なんですね
炭水化物、糖質、糖類…。
呼び方は色々ですが、それぞれの分類を覚え、食品のパッケージに書かれている栄養成分表示や原材料名をチェックし、普段の栄養管理の参考にしてみて下さい
次回は、「『栄養成分表示』を活用している方がどの程度いるのか」などについて、国民健康・栄養調査のデータを基にご紹介したいと思います
(管理栄養士 あ)
【参考】
信州大学『生化学 炭水化物(糖)の科学と代謝』
独立行政法人 農畜産業振興機構『砂糖類情報』
消費者庁 栄養成分表示のためのガイドライン
東京都福祉保健局 『栄養成分表示ハンドブック』
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト
アサヒ飲料 なぜなぜ豆辞典『炭水化物・糖質』