分岐鎖アミノ酸(BCAA)とは分子構造中に分岐構造を持つ必須アミノ酸であり、バリン、ロイシン、イソロイシンの3種類を指します。
BCAAには「運動後の筋肉痛の抑制」、「タンパク質の合成や分解を調節する作用」、「耐糖能やインスリン感受性の改善(糖代謝の調節)」などの生理機能も認められており、注目している方もいらっしゃいますね
今回は、「BCAAと筋力低下の関係」について調べている論文をご紹介します
●BCAAの不足は筋原線維タンパク質の低下を招く
「BCAA摂取により加齢などによる筋力の低下を予防することができるかもしれない」という内容の、日本の名古屋大学を中心とした研究グループによる動物を用いた研究報告です
【目的】
筋タンパク質はタンパク質の合成と分解のバランスで維持されており、栄養素やホルモンによって調節されている。
また、哺乳類においてBCAAは必須アミノ酸であり、タンパク質代謝や糖代謝の調節において重要な役割を果たすが、BCAAが不足した場合のタンパク質代謝への影響については分かっていない。
そこで、低タンパク質食摂取における筋肉への影響をマウスを用いて調べる。
【方法】
筋肉において特異的にBCAAが欠損したマウス(BCAA欠損マウス)を作り、正常なマウスとBCAA欠損マウスそれぞれを2群に分け、普通タンパク質食(タンパク質エネルギー比:20%)と低タンパク質食(タンパク質エネルギー比:8%)を与えて骨格筋の筋原線維を調べた。
また、3%のBCAAを含む水(ロイシン:バリン:イソロイシン=2:1:1)でBCAAを補充した場合の骨格筋の筋原線維の状態についても調べた。
【結果】
・低タンパク質食を与えられたマウスは普通タンパク質食を与えられたマウスよりも食餌摂取量が有意に多かったが、BCAAを補給した場合には食事摂取量に差がなかった。
・骨格筋重量は、どのマウスにも有意差は見られなかった。
・低タンパク質食を食べたBCAA欠損マウスで筋原線維タンパク質が有意に減少したが、BCAAを補給した場合には有意な差がみられなかった。
【まとめ】
BCAA不足は筋原繊維タンパク質を減らし筋力低下を招く可能性がある。
<論文>
Muscle-specific deletion of BDK amplifies loss of myofibrillar protein during protein undernutrition.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMC5209746)
これは動物 を用いた試験であるため、結果をそのまま人に当てはめることはできませんが、BCAAを日々の生活でしっかりと補給して体内のBCAA量を維持すれば、加齢などによる筋力の低下を予防することができるかもしれないですね
なお、水を除くとヒトの体の大部分はタンパク質が占め、生きていく上でタンパク質はとても重要です
特に食事制限でダイエットをしている人や高齢者などではどうしてもタンパク質の摂取量が少なくなり、相対的にBCAAの摂取量も少なくなってしまうため、注意が必要です
やはり、食事はタンパク質不足に気を付けて色々なものをバランス良く摂るのが良さそうですね
もし、食事で十分な量のタンパク質の補給が難しい場合には、BCAAを含むタンパク質(プロテイン)やアミノ酸のサプリメントで補うのもひとつの手です
(さ)
<参考>
・日本の研究.com(https://research-er.jp/articles/view/54342)
・生化学 第84巻 第11号 2012年 11月 分岐鎖アミノ酸の生理機能の多様性