注意欠陥多動性障害(ADHD)は学童期の子どもには3~7%存在し、男性の方が女性より数倍多いと報告されています。
男性の有病率は青年期には低くなると言われていますが、ADHDで悩んでいる方が多くいらっしゃいます。
そしてもしかすると、そのADHD症状はビタミン不足によって起きているかもしれないようです。
今回は「ADHDとビタミンの関係」について調べている論文をご紹介します💡
ADHDの発症や重症度にはビタミンが関連
「いくつかのビタミンレベルが低いことがADHDの発症や重症度と関連している可能性がある」という内容の、ノルウェーにあるベルゲン大学の研究者らによる研究報告です。
目的
ADHDは精神障害のひとつであり、世界での有病率は小児では5.3%、成人では2.5%と推定されている。
ADHDの原因は遺伝要因が考えられているが、それ以外の要因はあまり知られていない。
ビタミンはヒトが生きていくうえではなくてはならない栄養素であるが、ビタミンDとビオチン以外は体内で合成することができず、外から取り入れる必要がある栄養素である。
そのため、欠乏によって重い病気を患ってしまう可能性がある。
また、今までの研究でビタミンとADHDとの関連について指摘されているが、主要なビタミンの血中濃度とADHDの診断に関するデータはあまりない。
そこで、血中のビタミン濃度とADHDの発症や重症度との関連について調べる。
対象
ノルウェーに住むADHD患者133名(男性46.6%)と18~33歳(平均年齢22.7歳)のADHD患者ではない対照者131名(男性42.7%)の合計264名。
方法
参加者の血中のビタミン8種[ビタミンA、D、E、B2、B3(ナイアシン)、B6、B9(葉酸)、B12]と、喫煙状況を判断するためにニコチン酸代謝産物であるコチニン濃度を調べ、ADHD症状および併存疾患についてもまとめた。
なお、ADHDの診断は成人期の「ADHD自己記入式症状チェックリスト(ASRS)」を用いて行った。
結果
- ADHD患者のうち123名が治療を受けており、そのうち92%が中枢興奮薬を使用したことがあり、80%が採血時に薬を服用していた。また、患者の19%に抗うつ薬が処方されていた。
- ADHD患者の66.1%が喫煙者であり、そのうちの42%(患者の27.8%)がヘビースモーカーであった。
- 喫煙者ではビタミンB6、B9(葉酸)の血中濃度が有意に低かった。
- ADHDの症状がひどい患者はビタミンB2、B6の血中濃度が有意に低かった。
まとめ
ADHD患者では血中のビタミンB2、B6、B9(葉酸)の濃度が低く、こういった栄養素を含む食物の摂取量が不十分である可能性がある。
<論文>
Vitamin levels in adults with ADHD.
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27990293)
ADHDの判断基準
ADHDの判断基準は以下の「不注意」、「多動性」、「衝動性」のうちのいくつかが7歳以前に存在し、社会生活や学校生活を営む上で支障があるという事のようです。
○不注意
・学校での勉強で細かいところまで注意を払わなかったり、不注意な間違いをしたりする。
・課題や遊びの活動で注意を集中し続けることが難しい。
・面と向かって話しかけられているのに、聞いていないように見える。
・指示に従えず、また、仕事を最後までやり遂げることができない。
・学習などの課題や活動を順序立てて行うことが難しい。
・気持ちを集中させて努力し続けなければならない課題を避ける。
・学習などの課題や活動に必要な物をなくしてしまう。
・気が散りやすい。
・日々の活動で忘れっぽい。
○多動性
・手足をそわそわ動かしたり、着席していてもじもじしたりする。
・授業中や座っているべき時に、席を離れてしまう。
・きちんとしていなければならない時に、過度に走り回ったりよじ登ったりする。
・遊びや余暇活動におとなしく参加することが難しい。
・じっとしていない。または何かに駆り立てられるように活動する。
・過度にしゃべる。
○衝動性
・質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう。
・順番を待つのが難しい。
・他の人がしていることをさえぎったり、じゃましたりする。
個人的には、上記のような症状は7歳以前の子供ならいくつか存在することは普通であり、そういったことが全くない大人しい子供の方が心配な気もします。
しかし、大人になってからも症状が改善せずに普段の生活に支障が出ている場合には何らかの対処を考えた方が良いかもしれないですね。
まとめ
ビタミンは体内では作り出すことができず、また、食事に気を付けていても不足しやすい栄養素でもあります。足りない栄養素を補えばADHDの発症や重症度を下げることができるとは言い切れませんが、ビタミンは病気の治療だけでなく、健康の維持・増進にも必要です。
多めにとって損はないと思いますので、ADHDで悩んでいる方は不足しがちなビタミンを多く摂ることを意識してみるのも良さそうですね😄
なお、今回の論文でADHDの方で不足が見られたのはビタミンB2、B6、B9(葉酸)の3種類のビタミンB群ですが、ビタミンB群は他にもあり、体内ではそれぞれが関わりあいながら重要な働きをしています。
また、子供の場合にはADHD患者ではビタミンDの血中濃度が低い事が報告されています(Pediatr Int. 2014 Aug;56(4):515-9. /Atten Defic Hyperact Disord. 2014 Jun;6(2):73-8. )。
サプリメントでの栄養素補給を考えている場合には、3種類のビタミンB群だけでなくビタミンB群としてまとめて、更には、ビタミンD、亜鉛、カルシウム、マグネシウムといった他のビタミン、ミネラル類も含むようなマルチビタミン・ミネラルがお勧めです。
(さ)