妊娠高血圧症候群や胎児の発育不全などで悩んでいる妊婦さんがいらっしゃいます
もしかすると、ナイアシン(アミド)を摂ることでそのお悩みが改善するかもしれません
今回は、「妊娠中のナイアシン摂取」について調べている論文をご紹介します
●ナイアシンアミドが胎児の発育不全と妊娠高血圧腎症の合併症を予防する
「ナイアシン(ナイアシンアミド)によって妊娠高血圧腎症の合併症である脳卒中や、胎児の発育不全を予防できるかもしれない」という内容の、日本の東北大学の研究者らによる動物実験による研究報告です
【目的】
妊娠20週以降産後12週までに高血圧を発症した場合を妊娠高血圧症候群と言い、高血圧のみの場合は妊娠高血圧症、高血圧とタンパク尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。
妊娠高血圧腎症は妊婦の約5%に発症すると言われ、妊娠に関連した妊産婦の主要死亡要因のひとつである。
妊娠高血圧症候群の最終的な治療としては誘発分娩があるが、それは未熟児や赤ちゃんの死亡につながってしまうことがある。
また、降圧剤による治療で母体の血圧コントロールをすることは可能であるが、それで胎児の発育不全や早産を防ぐことはできない。
なお、ナイアシンアミドは血管を弛緩させること、また、男性および非妊娠女性において高容量の経口摂取で広く試験されて安全であることから、妊婦でも安心して用いることができる可能性がある。
そこで、ナイアシンアミドの摂取は妊娠高血圧腎症の予防や治療、胎児の発育不全に有効なのかを調べる。
【方法】
異なるメカニズムに起因する妊娠高血圧腎症にかかった2種類のマウスモデルを用いて、ナイアシンアミド投与による母体と胎児への影響を調べた。
【結果】
・1日に体重1㎏あたり500㎎のナイアシンアミドの摂取によって高血圧、タンパク尿、腎糸球体毛細血管内皮細胞へのダメージに対して有意に良い効果が表れた。
・マウスのナイアシンアミド摂取によって在胎期間が延長し、妊娠喪失が予防された。
・妊娠高血圧症候群の症状を発症していないマウスにナイアシンアミドを与えても血圧低下は起きなかった。
・母体がナイアシンアミドを摂取することで胎児のナイアシンアミド濃度が高まった。
【まとめ】
妊婦のナイアシンアミドの摂取で、母体の妊娠高血圧腎症と胎児の発育不全を防ぎ、母子共に良い影響を与える可能性がある。
<論文>
Nicotinamide benefits both mothers and pups in two contrasting mouse models of preeclampsia
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMC5127378)
これは動物での実験であるため、この結果をそのまま人に当てはめることはできません
また、1日に体重1㎏あたり500㎎のナイアシンアミドの摂取の場合、例えば体重45㎏の人が摂るとすると22.5gも必要になります
日本人の場合、12歳以上の女性のナイアシンアミドの耐用上限量は1日250㎎であるため、もし妊婦さんがナイアシンを摂る場合には250㎎以内にするのが良いと思います
なお、妊娠中は様々な栄養素の必要量が増加するため、ナイアシンだけでなく他の栄養素も十分に補う必要があります
基本的には妊婦さんにはサプリメントの摂取はお勧めしておらず、バランスの良い食事をすることをお勧めします
しかし、長引くつわりや食事の管理がうまくできない場合には、添加物をあまり含まないマルチビタミン・ミネラルのようなサプリメントを活用するのもひとつの手です
※妊婦さんがサプリメントを検討する場合には、必ず主治医に相談し、主治医の管理下で摂取するようにしましょう!
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット(http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=57709&-lay=lay&-Find)
・日本産科婦人科学会サイト(http://www.jsog.or.jp/public/knowledge/kouketsuatsu.html)
・日本人の食事摂取基準2015年版