難聴と聞くと高齢者が多いイメージですが、最近では若い女性でも難聴の人が増えているようです
また、若い女性で足りていない栄養素と言えば特に鉄が挙げられますが、難聴と鉄不足は関連しているかもしれないようです
今回は、「難聴と鉄不足」について調べている論文をご紹介します
●難聴の原因は鉄不足?
「難聴は鉄欠乏性貧血と関連があるようだ」という内容の、アメリカにあるペンシルバニア州立大学からの研究報告です
【目的】
アメリカでは成人の約15%が聴力障害を訴えており、高血圧、糖尿病、喫煙などは難聴と関連していると言われている。
また、内耳における鉄の役割はハッキリしていないが、動物実験では突発性感音難聴は鉄欠乏性貧血が原因である可能性が示唆されている。
鉄欠乏性貧血は一般的で治療可能な状態であるため、鉄欠乏性貧血と難聴との関連を深く理解することで、難聴の早期発見と適切な治療の可能性がある。
そこで、アメリカ人の成人における感音難聴、伝音難聴と鉄欠乏性貧血との関連を調べる。
【対象】
21~90歳(平均年齢50.1歳)のアメリカのペンシルべニア州ハーシーに住む成人男女305,339名(男性:132,555名、女性:172,784名)。
【方法】
2011年1月1日~2015年10月1日の期間でペンシルベニア州立ミルトン・S・ハーシー医療センターの電子カルテから得られたデータを用いた後ろ向きコホート研究。
難聴は感音難聴、伝音難聴、混合性難聴に分けられ、鉄欠乏性貧血はヘモグロビン値 (男性: 21~49歳 <13.7 g/dL、50~69歳 <13.3 g/dL、70歳以上 <12.4 g/dL 女性: 21~69歳 <12.0 g/dL、70歳以上 <11.8 g/dL)とフェリチン値(<12.0ng/mL)から推定した。
【結果】
・対象者のうち0.7%で鉄欠乏性貧血がみられた。
・対象者のうち難聴は1.6%でみられ、感音難聴(0.7%)は伝音難聴(0.2%)よりも多かった。
・鉄欠乏性貧血は感音難聴と混合性難聴と有意な正の相関があった。
・鉄欠乏性貧血は統合失調症の罹患率増加と関連していた。
【まとめ】
鉄欠乏性貧血は感音難聴と混合性難聴と関連している可能性がある。
<論文>
Association of Iron Deficiency Anemia With Hearing Loss in US Adults
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28033450)
これはアメリカ人における調査であるため、結果をそのまま日本人に当てはめる事はできません。
しかし、日本人の場合でも70歳未満の女性と15歳未満の男性は鉄の摂取量が推奨量に満たず、15~49歳の男性でも推奨量ギリギリしか鉄が摂れていません。
推奨量とは、この値の付近かそれ以上を摂取していれば不足のリスクがほとんどないものと考えられる量であり、十分足りている量ではありません。
推奨量程度摂っていても不足している人もいると考えられます
特に足りている方が鉄を過剰に摂ることは体の負担となるためお勧めできませんが、難聴の有無にかかわらず、ほとんどの女性、外食や加工食品の摂取量が多い男性、食事の摂取量が少ない痩せている人などは鉄の補給を心掛けた方が良いかもしれないですね
また、統合失調症を患っている人は鉄不足していないか確認してみるのも良いかと思います。
なお、鉄分が豊富に含まれる食品は、レバー、赤身の肉、魚介類、大豆製品などです。
食品で十分な補給が難しい場合には、サプリメントを活用するのもひとつの手ですよ
※補足※
難聴は聴こえの障害が起こる部位によって種類が異なり、以下のように分けられます。
<難聴の種類>
①伝音難聴
音が外耳や中耳を伝わっていく途中で、何かが音を遮る(障害が起こる)ことによって生じる。
外耳道の途中の塞がり、鼓膜の傷、中耳に水が溜まっている場合(滲出性中耳炎)や中耳の感染(急性中耳炎)などが伝音難聴の原因。
伝音難聴のほとんどは医学的に治療が可能だと言われている。
②感音難聴
内耳の細胞が振動を感じとることができない場合や、信号を脳の聴こえの中枢へ伝えることができない場合に生じる。
妊娠中の感染や遺伝的な要因はこのタイプの難聴を引き起こすと言われている。
感音難聴は一般に、医学的な治療によって聴力を回復させることは困難であり、伝音難聴は「音の損失」、感音難聴は「聴覚の損失」とも言われる。
③その他
伝音難聴と感音難聴の両方にまたがったものを混合性難聴という。
また、老人性難聴はどちらかといえば感音難聴に近いものの、混合難聴の特徴も合わせ持っている。
年をとると鼓膜や耳小骨が固くなって動きが悪くなり、音の伝達効率が低下するだけでなく、有毛細胞や聴神経の数も減り、大脳での音の情報を処理するスピードも遅くなる。
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット(http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=57817&-lay=lay&-Find)
・独立行政法人国立病院機構 東京医療センター サイト(http://www.ntmc.go.jp/ntmc2/nancho/syoni/syoni_main.htm)
・国立大学法人 筑波技術大学サイト(http://www.a.tsukuba-tech.ac.jp/ce/xoops/modules/tinyd4/index.php?id=15&tmid=73&tmid=72)
・平成27年「国民健康・栄養調査」の結果(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000142359.html)
・国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報サイト(https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail675.html)