BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)は、筋肉量を増やすのに有効なアミノ酸と言われています。
しかし今回の論文では、BCAAだけでは筋力増強を最大限にすることができなかった、ということが紹介されています
●論文の概要
この試験は、10名の若年層(20.1±1.3歳)健常者を対象に行われました。
対象者には以下の2つの試験飲料を用意し、運動後にいずれかを摂取してもらいます。
・BCAA含有試験飲料(ホエイタンパク20gと同等のBCAAを含む)
・プラセボ飲料
運動などの条件を同一にした試験を2回行い、試験飲料摂取回とプラセボ摂取回のそれぞれの試験結果を比較します(1回目の試験終了から3週間後に2回目を行う)。
【実験の流れ】
①対象者は一晩の絶食後、朝食摂取前に身長・体重・血液データを採取。
②朝食の摂取
*試験食:7kcal×現体重(エネルギー比 タンパク質30%、脂質20%、炭水化物50%)
③運動
*朝食摂取後、105分後よりウォームアップを開始。その後25分間のレジスタンス運動と2分間の休憩を4回繰り返す。
④運動直後に血液を採血、筋肉は生検で採取し、その後試験飲料かプラセボ飲料を摂取。
*血液サンプルは、運動終了後(0分)を目安に-240、-145、-85、-25、0、15、30、45、60、75、90、120、150、180、240分で採血
*筋肉の生検での採取は、飲料摂取直前・飲料摂取後から1時間後・4時間後の3回採取
【結果】
他の必須アミノ酸、たんぱく質、栄養素などを摂取せずにBCAAのみ摂取することで、プラセボ群より筋原線維たんぱく質合成が22%増加するということが示唆された。
●BCAA『も』大切
今回紹介した論文では、BCAAが筋原線維たんぱく質合成を促進する効果があることが示唆されましたが、この結果は同量のBCAAを含むホエイタンパク摂取時よりも50%程度低い反応であることが言及されています。
他のアミノ酸が必要である証拠に、運動後にBCAA試験飲料を摂取した群で、3時間後の血液中フェニルアラニン濃度が低下する結果が得られました。
それらの結果から、筋原線維たんぱく質合成時には、フェニルアラニンを含む他の必須アミノ酸が律速要因であると考えられています。
今回の試験の結果として、BCAAは筋原線維たんぱく質を増加させる効果は期待できるが、その効果を最大限にするためにはBCAAのみの摂取では不十分であるという風にまとめられています
今回の試験で比較されたのはホエイタンパクですが、高齢者を対象とした別の試験では、ホエイタンパクと同じ量の必須アミノ酸で比較した場合には、必須アミノ酸の方が著しく筋タンパク質を合成することが確認されています。
●筋肉の増加や正常な働きの維持のために摂りたい栄養素
筋肉を増やすには、BCAAだけでなく、その他の必須アミノ酸や栄養素も大切であることが分かってきました。
BCAA以外で筋肉の増加や正常な代謝に必要と言われている栄養素を、以下に記載いたします。
●『単一』よりも『複合的』に
上記のように、「筋肉を作る・増やす・正常に機能させる」ためには、様々な栄養素が必要です
また、市販されている「BCAA含有の清涼飲料水」を摂取しても、ほとんどの製品に含まれている糖質の影響で脂肪燃焼はほとんどできなかった、という報告もあります。
「筋力アップにはBCAA!」だけではなく、タンパク質を始めとした栄養素をバランスよく摂取することをお勧めしたいと思います
(あ)
アクティブシニア「食と栄養」研究会 筋肉と栄養成分
独立行政法人 農畜産業振興機構 スポーツ選手の食事法 (https://sugar.alic.go.jp/japan/view/jv_0106b.htm)
国立循環器病研究センター 栄養に関する基礎知識 (http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/treatment/diet01.html)
㈱大塚製薬工場 栄養素の役割 (http://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/nutrition/)
岐阜市立女子短期大学 市販アミノ酸飲料摂取後の運動における脂肪消費 (http://www.gifu-cwc.ac.jp/tosyo/kiyo/57/zenbun57/shihan_aoki.pdf)
文部科学省 食品成分データベース (https://fooddb.mext.go.jp/ranking/ranking.html)
栄養の基本がわかる図解事典 成美堂出版