以前、生活習慣病専門のクリニックで栄養指導を行っていた(あ)ですが、その時に経験した様々な失敗や試行錯誤が、現在の自分の糧になっていると思います。
今後、【栄養指導のこぼれ話シリーズ】として、自身の体験した悩みや失敗、試行錯誤などについてご紹介させていただきますので、ぜひご覧ください。
1回目の今回は、「栄養指導は月に100件」を目標としていた時に、栄養指導件数が伸びず、悩みに悩んだ時期についてご紹介します。
●栄養指導は嫌われもの?!
栄養指導を行っているときにつらいのが、患者様から「めんどくさい」「わかっているからいらない」「時間がない」などと言われ、指導を拒否されることです
拒否されるのは仕方ないことですが、特に糖尿病などの生活習慣病では、毎日の食事・運動が病態に直結します。
「食事の話をできないことで、体の状態がより悪くなってしまう可能性もあるのに…。」と、日々悶々としていました
●「指導」をやめよう!
栄養指導を嫌がる患者様に共通していたのは、「言われることはわかっている」「怒られる」「時間がかかる」というイメージを持っていることでした
そこで、そのイメージを変えることが一番最初の課題でした。
まず、自分の意識を変え、そして患者様のイメージを変えるために行ったのは、「指導」という言葉を使わないようにすることです。
作成したプリントにも、患者様にお声かけする際にも、あえて意識し「指導」ではなく「相談」という言葉を使うようにし、「ぜひ、お話しを聞かせて下さい。」とお伝えするようにしました。
そして実際、自分が話す量を意識して減らし、患者様のお話を聞くことを優先するようにしました。
●「出会いのきっかけ」を作ろう!
また、「指導に入りたがらない人」は、お会いすることやお話しすること自体が出来ず、イメージを変えることが出来ないことにも悩んでいました。
そこで始めたのは、「ポスター掲示」と「栄養ニュース」の作成です。
「ポスター」も「ニュース」も、こまめに新しいものを作成し、目に付きやすい場所や手に取りやすい場所に置かせてもらいました
「季節のネタ」や「健康ネタ」、「地域に根差した情報」は、比較的興味を持って下さる方も多く、そのポスターやニュースをきっかけにして、
①(質問などで)まずお話しする、顔を覚えて頂く
②お見かけするたびに挨拶するなど、声をかけることを続けていく
③「ちょっと聞いてみようかな」と思った時に、気軽に声をかけてもらえる
こんな風に、ちょっと声をかけづらかったイメージの「栄養士」から、「いつでも話しかけられる」というイメージを持って頂けるように働きかけてみました。
始めてすぐにそうなる、ということではありませんし、実際にそう感じるまでかなりの期間が必要だったのが正直なところですが、それでも徐々に変わってきていることを感じられました。
最終的には「よっ!今日もヒマそうだね~!」などと声をかけて下さる患者様もいらっしゃり、そのおかげか待合室などを通りかかると声がかかることが増えてきました。
●結果として…
最初のころは、月に60件程度だった栄養相談ですが、徐々に件数が増え、月に120件、多いときは130件を超えることもありました。
嬉しいのは、毎月のようにリピートしてお話をしに来てくださる方が多くいらっしゃったことです。
「栄養相談」や「食事指導」、「カウンセリング」などは、導入してすぐに件数が増えたり、アプローチの結果がすぐに出る、ということの方が少ないのではないでしょうか。
私自身、「生活習慣病専門のクリニックなんだから、黙っていても毎日指導はある」という風に考えていた時期もありました。
でも、そんな風にしていても件数が伸びず、指導のない時間には部屋に閉じこもり資料作成ばかりをせっせと行っていました。
それを見かねた院長先生に「自分で栄養指導を増やすように、もう少し頑張ってね。」お叱りを受けたことも…
「そんなこと言われても、待合室に行って話しかけて嫌がられたらつらいし、それに恥ずかしいし…。」なんて思っていた、若かりし頃の私。
今では、そんなこと思って話しかけに行かなかった自分が恥ずかしい、と思うお年頃になりました
(あ)