妊娠中の母親の食事と産まれてくる赤ちゃんの健康について色々研究されていますね
今までのブログでもいくつかご紹介しています
・【論文紹介】妊娠中の鉄摂取と自閉症
・【論文紹介】妊婦が魚を食べると子供の脳形成に良い影響
・【論文紹介】妊婦の果物摂取で乳児の認知機能アップ
・【論文紹介】妊娠前からの不摂生はひ孫まで影響
・【論文紹介】妊娠中の食事が子のADHD原因になりうる
今回は、「妊娠中の母親の血中ナイアシン濃度と乳児のアトピー性湿疹」について調べている論文を発見しましたので、その論文の内容について簡単にご紹介します
●妊娠中のナイアシン摂取で乳児の湿疹を予防できる可能性
「妊娠中の母親の血中ナイアシン濃度が高かった場合、産まれてきた子供は生後12ヶ月時点でのアトピー性湿疹のリスクが低い」という内容の、イギリスにあるサウサンプトン大学からの研究報告です
【目的】
乳児のアトピー性湿疹は、母親の年齢、教育、喫煙、環境要因などと関連していると言われているが、妊娠中の母親の食事とも関連していることが示されている。
また、天然に存在する栄養素であるニコチンアミドはナイアシンやビタミンB3とも呼ばれ、ニコチンアミドやトリプトファンを食事からとることで体内で維持され、アトピー性湿疹を含む皮膚疾患の治療に使用されている。
※トリプトファンは、肝臓でキヌレニン経路を介してナイアシンに変換される。
そこで妊娠中の母親の血中ナイアシン濃度と乳児のアトピー性湿疹のリスク関係について調べる。
【対象】
イギリスのサウサンプトン女性調査という出生コホートに参加した妊娠女性497名とその人から産まれた子供。
【方法】
対象女性の血液中のキヌレニン、キヌレン酸、アントラニル酸、トリプトファン、ニコチンアミドおよびN1-メチルニコチンアミドの濃度を測定し、また、その女性から産まれた子供の生後6か月と12か月におけるアトピー性湿疹の状態を調べた。
【結果】
・生後6か月と12か月時における子供のアトピー性湿疹の有病率はそれぞれ10.7%と13.7%だったが、生後6か月の時点でのアトピー性湿疹のリスクは男児よりも女児の方が有意に低かった。
・母親のニコチンアミド及び関連代謝産物の血中濃度は、生後6ヶ月の時点での子供のアトピー性湿疹とは関連していなかった。
・母親のニコチンアミド及びアントラニル酸の濃度が高いことは、生後12ヶ月の時点での子供のアトピー性湿疹リスク低下と関連していた。
【まとめ】
母親の血中のナイアシン(ニコチンアミド)の濃度が高いことは、子供が1歳の時点でのアトピー性湿疹リスク低下と関連している可能性がある。
<論文要旨>
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cea.12782/abstract
今までにも、産まれてくる子供の健康のために妊娠中の母親の栄養補給の大切さをお伝えしてきましたが、やはり生きていくうえで欠かせないビタミン、ミネラルは十分に補給することが大切ですね
ちなみに、血液中のナイアシンの濃度を高めるためには、ナイアシンやトリプトファンを食事やサプリメントなどで補給する必要があります。
ナイアシン、トリプトファンを多く含む食品は以下の通りです
<ナイアシンを多く含む食品:100gあたりの量>
・たらこ(生):49.5㎎
・かつお節 :45.0㎎
・らっかせい(乾):17.0㎎
・くろまぐろ(赤身、生):14.2㎎
・するめ :14.1㎎
・豚肉(レバー):14.0㎎
<トリプトファンを多く含む食品:100gあたりの量>
・凍り豆腐(乾):750㎎
・きな粉(全粒黄大豆):510㎎
・しらす干し(半乾燥):470㎎
・ごま(乾):360㎎
・チェダーチーズ :320㎎
・くろまぐろ(赤身、生):300㎎
なお、ナイアシンはビタミンB群の仲間であり、ビタミンB群はチームで働くため、ナイアシン単体で摂るよりもビタミンB群としてまとめて摂る方がより働きが良くなると言われています
ナイアシンだけに注目するのではなく、ナイアシン不足に注意しつつ色々な食品をバランスよく摂るのがお勧めです
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット(http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=56597&-lay=lay&-Find)
・日本食品標準成分表2015年版(七訂)
・日本食品標準成分表2015年版(七訂) アミノ酸成分表編