筋肉量を増やしたり筋肉の回復を助けるために、運動後にタンパク質(プロテイン、アミノ酸)を摂ってる方が多いですね
摂取するタンパク質の量は、筋肉量が多い人ほどたくさん必要だと思われがちですが、実はそうではないかもしれません
今回は、「運動後に必要なタンパク質量」について調べている論文をご紹介いたします
●運動後に必要なタンパク質量は筋肉量とは関係無い
「筋トレを行った後に必要なタンパク質は、その人の筋肉量ではなくトレーニングの内容による」という内容の、イギリスにあるスターリング大学からの研究報告です
【目的】
筋原線維タンパク質合成を刺激するためには、筋力トレーニングの後にタンパク質(アミノ酸)を補給するのが良いということが知られ、摂取するタンパク質の種類や摂取タイミングが筋原線維タンパク質合成に影響を与えるが、摂取量も影響を与えると考えられている。
また、運動後のタンパク質補給による筋原線維タンパク質合成に影響を与えるひとつの要因として総筋肉量が挙げられ、筋肉量が多い人ほどより多くのタンパク質摂取が必要なのではないかと想定されている。
しかし、運動後のタンパク質補給量の違いによる筋原線維タンパク質合成への影響はあまり調べられていない。
そこで、全身筋力トレーニング後のタンパク質補給量の違いによる筋原線維タンパク質合成への影響について調べる。
【対象】
健康な30名の男性。
(除脂肪体重65kg以下の平均年齢:21.3歳、除脂肪体重70㎏以上の平均年齢:23.2歳)
【方法】
参加者を「除脂肪体重65kg以下(LLBM)」と「除脂肪体重70㎏以上(HLBM)」の2群に分け、全身筋力トレーニング直後に乳清タンパク質を20gまたは40g含む500mlのドリンクを、それぞれの群を二つに分けて摂取させた。
<グループ分け>
・LLBM タンパク質20g摂取
・LLBM タンパク質40g摂取
・HLBM タンパク質20g摂取
・HLBM タンパク質40g摂取
なお、採血と骨格筋生検によってアミノ酸や尿酸の濃度や筋原線維合成速度などを調べた。
【結果】
・タンパク質を20g摂ったグループと比較し、40g摂ったグループではドリンク摂取後45分、60分、90分、120分で有意に血中ロイシン濃度が高かった。
・タンパク質を20g摂ったグループよりも40g摂ったグループの方がドリンク摂取後30分、45分、60分、90分で血中フェニルアラニン濃度が有意に高かった。
・筋肉量と筋原線維タンパク質合成には関連がみられなかった。
・タンパク質を20g摂取したグループよりも40g摂ったグループの方が筋原線維合成速度が有意に高かった。
※ロイシン、フェニルアラニン…筋原線維タンパク質の分解抑制作用があると言われている。
【まとめ】
筋肉量に関わらず、全身筋力トレーニング後は高用量のタンパク質摂取によって筋肉の発達と回復が見込まれる。
筋肉量が多い人ほど筋力トレーニング後にたくさんのタンパク質が必要という訳ではないんですね
なお、筋肉を最大限発達させるためのトレーニング後のタンパク質量は、重量挙げ選手で約25g以上は必要ないと言われているそうですが、タンパク質の推奨量の元になっている先行研究では、脚のトレーニングに対する反応しかみていないようです。
この研究では、被験者は全身の筋力トレーニングを行ってもらっており、トレーニング後に筋肉が必要とするタンパク質の量は、トレーニングのタイプやトレーニング量によって異なる可能性が考えられます。
以上より、筋肉量ではなく、どれだけ筋肉を使ったのかで必要なタンパク質量が異なり、全身筋力トレーニングのような全身の筋肉をたくさん使うような運動後は、今までの推奨量以上摂った方が良いかもしれないですね
また、この研究は若い男性が被験者となっており、女性や高齢者では違う結果になるかもしれません。
しかし、摂ったタンパク質(アミノ酸)を体内で代謝するためにはビタミン、ミネラルなどの栄養素が不可欠です。
運動直後のタンパク質摂取だけでなく、普段の食事にも気を付けて、バランスよく色々な栄養素を摂ることをお勧めします
※腎機能障害がある方の場合、タンパク質をたくさん摂ると腎機能障害が進行してしまう可能性があります。
腎機能障害がある方がタンパク質をたくさん摂る場合には、主治医に相談してください。
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット(http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=55973&-lay=lay&-Find)
・厚生労働省サイト(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042643.pdf)