日本人女性における乳がん罹患数は顕著に増加しており、女性が罹るがんのトップです
有名人でも乳がんに罹ったと話題になることがありますが、身近な人や自分自身が乳がんになってしまったという方も少なくないかと思います
今回は、「父親の食事と娘の乳がんの関係」について調べている論文をご紹介します
●父親の食事が娘の乳がんリスクを高める
「父親の食習慣は娘の乳がんリスクに影響するかもしれない」という内容の、ブラジルにあるサンパウロ大学の研究者らによる研究報告です
【目的】
乳がんは世界的な健康問題であり、その罹患率は今後20年間で大幅に増加すると予測されている
乳がん罹患率の増加理由は明確になっていないが、西洋型の食事、摂取エネルギーの増加と消費エネルギーの減少、野菜や果物の摂取不足、飽和脂肪酸やオメガ6系脂肪酸の摂取量増加などが関わっているのではないかと言われている。
また、子供の遺伝情報の半分は父親に由来するが、精子形成は栄養失調、肥満、毒性への暴露などによって影響を受ける可能性があり、父親が健康であることは子孫の健康に関わる重要な因子だと考えられる。
そこで、父親が高脂肪食を摂った場合の娘の乳癌リスクについてラットを用いて調べる
【方法】
60匹の雄ラットを3群に分け(各20匹)、飽和脂肪酸の豊富なラードを多く含むラード食、オメガ6系脂肪酸の豊富なコーン油を多く含むコーン油食(ともに脂肪エネルギー比は60%)、コントロール食(脂肪エネルギー比16%)を与えて育てた。
その後、通常の食事によって飼育された雌ラットと交配し、産まれた娘ラットも通常の食事によって飼育し、7,12-dimethylbenz[a]anthraceneによって乳がんを誘発した。
なお、娘ラットの腫瘍発現までの期間、発生率、個体ごとの腫瘍数、腫瘍の体積を乳がんリスクの指標とし、娘ラットの乳腺におけるmiRNA※とタンパク質の発現も調べた。
※miRNA(マイクロRNA)とは?
18~25塩基という小さな一本鎖のRNAで、細胞や器官・臓器の分化だけでなく細胞のがん化にも深く関わっていると言われている。
詳しくは、以前のブログでまとめていますので参考にしてみてください⇒マイクロRNA(miRNA)って何?
【結果】
・コントロール食の雄ラットと比較し、ラード食とコーン油食を食べた雄ラットは毎日のカロリー摂取量が約7%高く、体重が重く、腹部と後腹膜と精巣上体の脂肪が多く、空腹時血糖が高かった。
・コントロール食の雄ラットの娘ラットと比較し、ラード食とコーン油食を食べた雄ラットの娘ラットは出生体重と体重増加と後腹膜脂肪が多く、空腹時血糖が高かった。
・ラード食の雄ラットの娘ラットは乳がんリスクが高く、コーン油食の雄ラットの娘ラットは乳がんリスクが低かった。
・コーン油食の雄ラットの娘ラットは、がん抑制的にタンパク質が発現していた。
【まとめ】
飽和脂肪酸の豊富なラード食を父親ラットが食べることで、娘ラットの乳がん発症リスクを高める可能性がある。
<論文要旨>
http://breast-cancer-research.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13058-016-0729-x
これは動物での研究であるため、結果をそのまま人に当てはめることはできません。
しかし、食事が精子に、そして子供の健康に影響を与える可能性は大いにありそうです
日本人男性は、不妊や子供の健康に対して男性はあまり関係ないと思っている方が多いようですが、男性の影響も大きいと考えられます
子育て世代は仕事が忙しかったり、お金に余裕がないなど食生活に気を使っている方が少ないです。
自分の健康のためにも子供の健康のためにも、野菜や果物の摂取量を増やす、肉(飽和脂肪酸)の摂取はほどほどにする、運動量を増やすなど心掛けたいものです
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット(http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=55741&-lay=lay&-Find)
・平成26年「国民健康・栄養調査」の結果(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000106405.html)