肉や魚、卵、大豆製品などに多く含まれるタンパク質は、私たちが生きていく上で欠かせない栄養素です
タンパク質をサプリメントなどで補給する場合、タンパク質(プロテイン)以外にペプチドやアミノ酸などのタンパク質とは異なる形態で配合されていることがあります。
皆さんは、タンパク質とペプチドとアミノ酸の違いをご存知でしょうか
今回は、「タンパク質とペプチドとアミノ酸の違い」について簡単にまとめたいと思います
目次
アミノ酸とは
分子内にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)をもつ化合物の総称です。
アミノ基とカルボキシル基が結合する炭素の位置によって、α、β、γ、δ、εなど各種のアミノ酸が存在していますが、タンパク質を構成するアミノ酸は全てα-アミノ酸です。
α-アミノ酸の中心にある炭素は不斉炭素(結合している原子、基が4個とも異なっている炭素原子)であり、L体、D体という光学異性体を持ちます(グリシンのみ不斉炭素をもたない)。
タンパク質を構成しているアミノ酸は全てL体であるため、アミノ酸を表記するときにL-を省略することもあります。
自然界には500種類ほどのアミノ酸が存在し、このうち私たちが必要とする栄養素であるタンパク質を構成しているのは20種類です
20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸は体内で合成することができないため、これらを必須アミノ酸と呼び、食物から摂取する必要があります。
また、子供のうちは成長期にアルギニンの合成能力が不足するため、アルギニンは準必須アミノ酸と呼ばれます。
以前のブログで必須アミノ酸の覚え方についてまとめたことがありますので、是非参考にしてみてください
アミノ酸の体内での働きは、体を構成しているタンパク質の材料となる他に、神経伝達物質、ビタミンやその他の重要な生理活性物質の前駆体、エネルギー源などとしても利用されます
アミノ酸の良い点
・消化の必要がなく、とても吸収されやすい
・特有の機能性のあるアミノ酸がある
・静脈栄養剤や経腸栄養剤として利用できる
アミノ酸の良くない点
・単一のアミノ酸を過剰摂取すると急性毒性を現すことがある
・腸管の浸透圧を上げるため、大量に摂ると下痢をしやすい
・タンパク質に比べて価格が高い
ペプチドとは
基本的には、2~50程度のアミノ酸がペプチド結合したものを指し、2つのアミノ酸がペプチド結合で結合したペプチドをジペプチド、3つはトリペプチド、4つはテトラペプチド…と呼ばれます。
また、2から20程度のアミノ酸が結合したペプチドをオリゴペプチド、もっと多くのアミノ酸が結合した物質をポリペプチドと呼ぶことがあります
ペプチドは体内では、ホルモンや抗酸化物質などとして働いているものがあります。
近年ではペプチドの様々な機能が注目されており、血圧降下ペプチド(アンジオテンシン変換酵素阻害ペプチド )、抗菌ペプチド(微生物を静菌または殺菌するペプチド:ラクトフェシリン)、経口免疫寛容ペプチド(アレルギーの成立に関与するがアレルギー反応を引き起こさないペプチド)などが活用されています
さらに他にも血栓抑制ペプチド、エイズウイルスプロテアーゼ阻害ペプチド、中枢神経鎮痛作用ペプチドなど多種多様な機能性ペプチドが見出されています
ペプチドの良い点
・タンパク質よりも吸収されやすい(長さが短いペプチドはアミノ酸と同等かそれ以上に吸収されやすいこともある)
・特有の機能性のあるペプチドがある
・経腸栄養剤として利用できる
ペプチドの良くない点
・タンパク質に比べて価格が高い
タンパク質(プロテイン)とは
生物の重要な構成成分のひとつであり、20 種類の L-アミノ酸がペプチド結合してできた化合物です。
タンパク質は構成するアミノ酸の数や種類、またペプチド結合の順序によって種類が異なり、分子量 4,000 前後のものから、数千万から億単位になるウイルスたんぱく質まで多種類が存在します
一般にアミノ酸の数が50まではポリペプチド、50以上はタンパク質と呼ばれますが、区分に明確な定義はなく10のアミノ酸からなるタンパク質(シニョリン)も発見されています
そのため、安定した固有の立体構造をしており、その立体構造が変化(変性/再生)するものがタンパク質であるとも考えられます。
体内では、酵素やホルモンとして代謝を調節したり、物質輸送、生体防御などの働きをし、エネルギー源にもなります
タンパク質の良い点
・肉や魚、卵、大豆製品など、食品から簡単に補給できる
・ペプチドやアミノ酸と比較すると価格が安く入手しやすい
タンパク質の良くない点
・消化されないと吸収できない
・アレルゲンとなることがある
タンパク質、ペプチド、アミノ酸の吸収
食べ物として摂取されたタンパク質は以下のような流れで消化を受けて体内に吸収されていきます
①胃で胃酸(塩酸)、ペプシンによって変性、分解される(まだ分子量が大きい)。
②小腸(十二指腸)で分泌される膵液中の酵素(トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ)によってさらに分子量の小さなペプチドにまで分解される。
③小腸の粘膜上皮に存在するペプチダーゼによってアミノ酸に分解され、すぐに吸収される(膜消化)。
※ペプチド(ジペプチド、トリペプチド)の状態でもペプチド輸送単体によって体内に吸収されることが分かっています。
胃腸が弱っている場合にはタンパク質をとってもほとんど消化されず、吸収できずに排泄されてしまう可能性が考えられます
また、腸に炎症が起こっている場合には腸壁の隙間から未消化のタンパク質がそのまま体内に吸収され、アレルギーの原因になってしまうこともあります[腸管壁浸漏症候群(リーキーガット症候群)]
タンパク質もペプチドもアミノ酸も、その種類によって働きやメリット、デメリットがあります。
自分の状態、補給したい目的によって何を摂るのか選択が必要ですね
(さ)
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20081027/nr20081027.html)
タンパク質・アミノ酸の科学(㈱日本必須アミノ酸協会:編者)
日本理化学薬品株式会社サイト(http://www.nipponrika.co.jp/amino/detail01/)
文部科学省サイト
あいち産業科学技術総合センターサイト(http://www.aichi-inst.jp/shokuhin/other/shokuhin_news/s_no23_03.pdf)
タンパク質・アミノ酸の新栄養学(講談社サイエンティフィク:編集)