近年の私たちの生活は夜型化し、睡眠時間は減少傾向にあります
そしてそれは子供の生活にも影響を与え、「寝るべき時間に眠らない」「眠くても眠れない」子供が増加しており、睡眠不足や睡眠障害の持続によって肥満や生活習慣病、うつ病などの発症率を高めたり症状を増悪させる危険性が指摘されています
今回は「就学前の子供の睡眠と肥満リスク」について調べている論文をご紹介いたします
●就学前の早寝と思春期の肥満リスク低下が関連
「早い時間帯に眠る子供は思春期に肥満になりにくい可能性がある」という内容のアメリカにあるオハイオ州立大学の研究者らによる報告です
【目的】
子供が肥満になる前に肥満対策をすることが大切であり、健康管理が重要な役割を果たすことはよく知られている。
特に睡眠時間が少ない事や就寝時間が遅い事が肥満に関連していると言われている。
そこで、就学前に早い時間に就寝していると思春期に肥満になるリスクが減少するのかを調べる。
【対象】
1991年に、アメリカの9つの州にある24の病院から募集した1,364名子供を対象とした研究(Study of Early Child Care and Youth Development)に参加した子供のうちの977名。
【方法】
子供の平均的な就寝時間について54か月の間、電話や家庭訪問によって調査し、12~15.9歳(平均的に15歳)での子供の身体測定を行った。
【結果】
・1/4の子供は20時もしくはそれ以前に、半数は20~21時までに、残りの1/4は21時以降に就寝していた。
・白人でない人種や民族、低学歴の母親、低所得世帯では就学前に就寝時間が遅い可能性が有意に高かった。
・思春期の子供の肥満有病率は、20時までの就寝で10%、20~21時で16%、21時以降では23%であった。
・20時までに就寝する子供は21時以降に就寝する子供と比較し、思春期に肥満になるリスクが48%低かった。
【まとめ】
就学前の子供が早い時間帯に就寝することで、思春期の肥満リスクが減少する可能性がある。
<論文要旨>
http://www.jpeds.com/article/S0022-3476(16)30361-4/fulltext
共働き世帯や旦那さんの帰りが遅いお家は、子供を20時に寝かしつけるのは難しいかもしれないですね
しかし、小学校入学以降は就寝時間がどんどん遅くなっていく傾向にあるため、就学前に遅く眠る習慣がついていると子供の睡眠時間がどんどん減っていってしまいます
子供の就寝時間が遅く睡眠時間が短いと肥満につながるだけでなく、集中力、学習能力、運動能力の低下など様々な悪影響が考えられます
22時以降に眠る子もいるようですが、最低でも21時、できれば20時に子供が眠ることができるように、夕食や就寝の時間を決めて実行した方が良さそうです
親の生活リズムに子供が合わせるのではなく、子供の生活リズムに親が合わせる努力も必要ですね
(さ)
<参考>
・Yamanashi Nursing Journal Vol.5 No.2 (2007)
・大阪教育大学紀要 第Ⅳ部門 第61巻 第1号 263-270頁(2012年9月)
・保健医療科学 2012 Vol.61 No.1 p.11-17
・静岡大学教育学部研究報告(人文・社会・自然科学篇)第64号(2014. 3)143~157