妊婦さんの食生活が産まれてくる子供に影響与える事が知られています
しかし、妊娠前から食生活によって肥満や糖尿病になると、その影響がひ孫にまで及ぶ可能性があるかもしれません
今回は、「妊娠前からの不摂生と後世に与える影響」について調べている論文をご紹介いたします
●妊娠前からの脂肪や糖の摂り過ぎの害はひ孫まで続く
「妊娠前から高脂肪、高糖質で栄養過剰な食事を摂ることによる代謝性疾患は、3代先の子孫のミトコンドリア機能障害を起こしうる可能性がある」という内容の、アメリカにあるワシントン大学医学部の研究者らによる報告です
【目的】
肥満の母親から生まれた子供は巨大児として産まれ、成人期に肥満、心血管疾患、糖尿病を発症する危険が高く、その子孫に肥満がどんどん伝達されてしまうが、そのメカニズムは完全に分かっていない。
また、最近の研究では子孫のBMIは父親ではなく母親のBMIと相関することが示されており、母性遺伝し、代謝性疾患との関わりのあるミトコンドリアが関与しているのではないかと考えられている。
そこで、食事によってもたらされる母親の代謝性疾患の影響が、どのように子孫に伝わるのかを調べる。
【方法】
妊娠前の雌マウスを2つのグループに分けてそれぞれに以下のような食事を与え、その後に産まれてきた子供は3世代(子、孫、ひ孫)まで普通食を与えて育て、代謝や骨格筋のミトコンドリアの状態などを調べた。
①普通食
②高脂肪・高糖質食(代謝性疾患を引き起こさせた)
【結果】
・普通食を食べたマウスと比較し、高脂肪、高糖質食を食べたマウスは有意に肥満して耐糖能異常があり、空腹時高血糖、高中性脂肪、高コレステロールであった。
・普通食を食べた母親から産まれた子と比較し、高脂肪、高糖質食を食べた母親から産まれた子は肥満しなかったが、有意に耐糖能異常があり空腹時のインスリンレベルが高かった。
・高脂肪、高糖質食を食べた母親から産まれた子供のヒラメ筋では、ミトコンドリアが無秩序に存在し、ほとんどが脂肪滴と結合しており、筋肉内の脂質が有意に多かった。
また、腓腹筋のミトコンドリアの機能が低下し、卵母細胞のミトコンドリアの形態も変化していた。
・高脂肪、高糖質食を食べた母親の孫、ひ孫のマウスでも骨格筋ミトコンドリアの形態変化や機能が低下していた。
【まとめ】
食生活の乱れによって母親が代謝性疾患を患うと、3世代に渡りミトコンドリアの健康を損ない、普通の食事をしても代謝性疾患を発症するリスクを上げる可能性がある。
<論文要旨>
http://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(16)30663-5
この研究はマウスを用いており、結果をそのまま人に当てはめることはできませんが、食事の影響が3世代に及ぶ可能性があることに驚きです
以前のブログ(【論文紹介】食物繊維が少ないとひ孫にまで悪影響)で、「低食物繊維の食事だと腸内細菌の多様性が失われ、それは次の世代に引き継がれるだけでなく、失われた多様性は自然には戻らない可能性がある」とご紹介したことがありますが、もしかするとこの結果にはミトコンドリアだけでなく腸内細菌も関係しているかもしれませんね
やはり母親が妊娠前からどんな食事をしているのかはとても重要です
自分だけが満足できていればどんなものをどれだけ食べても良いのではなく、後世にも影響が及ぶ可能性があることを心にとめて食事の内容を考えないといけませんね
大人になって確立してしまった食生活を変えるのは難しいと思いますが、肥満や糖尿病、心血管疾患になってしまうような高脂肪、高糖質、高エネルギーの食事を控え、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維がたっぷり摂れる健康的な食事を心がけたいものです
(さ)