昔は栄養がないと言われていた食物繊維ですが、最近ではその重要性が見直されています
今までのブログでも食物繊維を摂ることによる健康効果について何度か取り上げてきました
・【論文紹介】食物繊維が少ないとひ孫にまで悪影響
・【論文紹介】食物繊維で健康に年を重ねる
今回は、「食物繊維とアレルギー」について調べている論文をご紹介したいと思います
●高食物繊維食でアレルギーの重症化を防ぐ
「食物アレルギーは腸内細菌が何を食べたかに関係し、食物繊維をたくさん摂ることでアレルギー症状の重症化を防ぐことができるかもしれない」という内容のオーストラリアにあるモナッシュ大学の研究者らによる報告です
【目的】
西洋諸国における食物アレルギーの発症率はここ数十年で劇的に増加しており、口から入ってきた食品などの体の維持に必要な成分に過剰な免疫反応を起こさないようにアレルギーを抑える仕組みである「経口免疫寛容」の維持や、消失についてそのメカニズムは正確に分かっていない。
また、食物の中で特に食物繊維を摂ることは腸内細菌の生態や多様性、機能のために重要であると言われ、食物繊維を食べた腸内細菌によって作り出される短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸など)は、免疫寛容の維持に係る制御性T細胞の働きを促進する事が示唆されている。
そこで、食物繊維をたくさん摂ることで食物アレルギーを抑えることができるかを調べる。
【方法】
マウスに高食物繊維食と食物繊維無し食を2週間以上与え、免疫細胞を調べた。
また、ピーナッツアレルギーを持つように人工的に造られたマウスを用い、高食物繊維食と食物繊維無し食を与えて育てた。
そして、そのマウスから採取した細菌を無菌マウスに移植して普通食で育て、それぞれについて免疫細胞やアレルギーの状態を調べた。
さらに、ナイーブT細胞から制御性T細胞への分化にはビタミンAが関与しているため、マウスにビタミンA欠乏食を12週間与えた後、ビタミンA欠乏高食物繊維食を2週間与えた場合についても同様に調べた。
※ナイーブT細胞や制御性T細胞などの免疫細胞については以前のブログでまとめていますので参考にしてみてください
免疫にかかわる細胞などの説明
【結果】
・食物繊維無し食を与えたマウスと比較し、高食物繊維食を与えたマウスはナイーブT細胞から制御性T細胞への分化が促進された。
・食物繊維無し食を与えたマウスと比較し、高食物繊維食を与えたマウスはアレルギーの指標となる血清IgEとアレルギー反応のひとつであるアナフェラキシー症状が有意に減少した。
・高食物繊維食を与えたマウスと比較し、食物繊維無し食を与えたマウスでは腸内毒素症の指標が大きかった。
・食物繊維無し食を移植された無菌マウスと比較し、高食物繊維の細菌を移植された無菌マウスでは血清IgEが低く、ナイーブT細胞から制御性T細胞の分化が促進される傾向にあった。
・高食物繊維食を与えたマウスと比較し、ビタミンA欠乏高食物繊維食を与えたマウスでは血清IgEが増加傾向で、アナフェラキシー症状が有意に増加した。
・ビタミンAよりも食物繊維の摂取量の方が腸内細菌組成に影響を与えた。
・短鎖脂肪酸を豊富に含む水をマウスに与えた場合、血清IgE、アナフェラキシー症状が減少した。
【まとめ】
ビタミンAを不足させずに食物繊維をたくさん摂ることで、経口免疫寛容と保護を促進し、アレルギー症状を抑えることができる可能性がある。
<論文要旨>
http://www.cell.com/cell-reports/abstract/S2211-1247(16)30630-1
これはマウスでの実験であるため、結果をそのまま人に当てはめることはできません。
しかし、平成26年の国民健康栄養調査結果を見てみると、日本人はビタミンAも食物繊維も全ての年代で摂取量が不足していることが分かります
日本でも食物アレルギーを持つ人が増加していると言われているため、ビタミンAと食物繊維の摂取を心掛けるのは試してみる価値があるかもしれませんね
ビタミンA、体内でビタミンAに変換されるベータカロテン、食物繊維を多く含む食材の例は以下の通りです
<ビタミンA>
レバー、うなぎ、卵黄 など
<ベータカロテン>
緑黄色野菜、海草 など
<食物繊維>
野菜、果物、海草、キノコ など
なお、ビタミンAは妊婦さんにおいては摂り過ぎによって胎児奇形の報告があるため摂取を控えている方もいらっしゃるかと思います
しかし、ビタミンAが不足しても赤ちゃんの成長に影響を与えてしまうため、全く摂らないのも良くありません
ベータカロテンには胎児奇形の報告はないため、ビタミンAの摂り過ぎが心配な方はベータカロテンで補うことをお勧めします
また、食物繊維は目標量と比較して5g程度不足しており、理想的な摂取量(1日24g以上)を摂るためには、成人(特に20~40歳代)では10g以上余分に摂らないといけません
食事で補うのが難しい場合にはサプリメントなども活用しつつ、ビタミンAを不足なく、食物繊維をたっぷり摂って免疫力を高めましょう
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット(http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=55092&-lay=lay&-Find)
・平成26年「国民健康・栄養調査」の結果(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000106405.html)
・日本人の食事摂取基準 2015年版