同じ部位の筋肉であっても、疲れやすい筋肉や疲れにくい筋肉など人によって違いがあることをご存知でしょうか?
今回は、『筋肉(筋繊維)の種類』について簡単にまとめたいと思います。
筋肉とは
筋肉は大きく「骨格筋」「心筋」「平滑筋」の3種類に分けられます。
骨格筋
腕や足など、自分の意志で動かすことのできる随意筋である。
光学顕微鏡で見ると、筋肉の繊維とは横向きに(垂直に)線が入っているように見えるため、横紋筋という種類に分類される。
心筋
心臓の筋肉で横紋筋に分類されるが、自分の意志で動かすことができない不随意筋である。
平滑筋
内臓や血管壁など、自分の意志で動かすことのできない不随意筋。
しかし、光学顕微鏡で見ても横紋は見られない。
筋繊維について
電子顕微鏡で筋肉を見てみると、筋原繊維という細い繊維が束になって筋繊維を構成し、筋原線維は2種類の縦に長い繊維で成り立っていることが分かります。
1つはミオシンというタンパク質がつながってできているミオシンフィラメントと呼ばれる太い繊維、もう1つはアクチンというタンパク質がつながってできているアクチンフィラメントと呼ばれる細い繊維であり、筋肉の収縮に重要な役割を果たしています。
そして、骨格筋をつくる骨格筋線維は、ミオシン(重鎖)の種類の違いによって「遅筋」「速筋」「混合筋」に分けることができます。
遅筋
・赤筋とも言う
・ミオシン重鎖の種類:Ⅰ型タイプ
・ミオグロビンが多い
・ミトコンドリアが多い(エネルギー産生が多い) →基礎代謝が高い
・ほとんどの部位の筋繊維が細い
・脂質をエネルギー源とする
・乳酸を産生しにくく、乳酸を代謝できる
・疲労しにくい
・酸素を使う有酸素代謝(酸化系)
・筋肉の収縮速度が遅い →長距離、遠泳などの持久運動に向いている
速筋
・白筋とも言う
・ミオシン重鎖の種類:Ⅱb型タイプ
・ミオグロビンの量が少ない
・ミトコンドリアが少ない(エネルギー産生が少ない) →基礎代謝が低い
・ほとんどの部位で筋繊維が太い
・糖質をエネルギー源とする
・乳酸を産生しやすい
・疲労しやすい
・糖尿病によって筋力低下しやすい
・酸素を必要としない無酸素代謝(解糖系)
・筋肉の収縮速度が速い →短距離、ジャンプなど瞬発的な運動に向いている
混合筋
・ピンク筋とも言う
・ミオシン重鎖のタイプ:Ⅱa型タイプ、Ⅱx型タイプ
・Ⅱa型 →遅筋に近い性質
・Ⅱx型 →速筋に近い性質
以前は、筋繊維の組成は遺伝的に決まっており、遅筋から速筋へ、速筋から遅筋へと筋繊維が変化することはないと考えられていました。
また、骨格筋の中でも部位によって遅筋と速筋の割合が異なり、例えばふくらはぎにあるヒラメ筋では遅筋が多く、足底筋は速筋が多いそうです。
遅筋と速筋の相互変換
しかし最近の研究で、運動や食事などによって遅筋と速筋の間で相互変換が起こるということが指摘されています。
ギプス固定や宇宙滞在など筋肉を使わない場合や高脂肪食を食べた場合などは、遅筋(Ⅰ型、Ⅱa型)が減少して速筋(Ⅱx、Ⅱb)が増え、トレーニング(持久、筋力)やレスベラトロール摂取によって遅筋が増加して速筋が減少するそうです。
※筋肉ムキムキのマッチョの場合、筋力トレーニングで速筋の割合が増加しているのではなく、速筋の体積が増加(肥大化)しているのです💪
特に高齢者の場合には、速筋は代謝が悪く疲れやすいため、代謝が良く疲れにくい遅筋が多い方が良いのではないかと考えられます。
美容や健康のためだけでなく、筋繊維のためにもバランスの良い食事や運動が大切ですね😀
ちなみに、レスベラトロールの摂取によって、骨格筋の筋肉を疲れにくい筋肉(遅筋)に維持増進するという内容の論文もあります💡
(さ)
・科学技術情報発信・流通総合システム サイト(https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/42/8/42_42-8_022/_pdf)
・東京工業大学附属図書館 サイト(http://tdl.libra.titech.ac.jp/hkshi/xc/contents/pdf/117099652/6)
・日本生理学会 サイト(http://physiology.jp/wp-content/uploads/2014/01/075050248.pdf)
・科学技術情報発信・流通総合システム サイト(https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2013/0/2013_0901/_pdf)
・http://ci.nii.ac.jp/els/110001850203.pdf?id=ART0002014891&type=pdf&lang=en&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1466751733&cp=
・http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fphys.2016.00077/full