一昔前に「長寿遺伝子を活性化する」として脚光を浴びたレスベラトロールですが、もしかすると高脂肪食や高糖質食によって起こる筋肉への悪影響を打ち消してくれるかもしれません
今回は、「レスベラトロールと骨格筋」について調べている論文をご紹介します
●レスベラトロールは高脂肪で砂糖が多い食事の筋肉への影響を和らげる
「赤ワインなどに含まれるレスベラトロールは、高脂肪で砂糖が多い食事がもたらす負の影響を打ち消すのに役立つようだ」という内容のアメリカにあるジョージタウン大学からの研究報告です
【目的】
骨格筋(筋繊維)はミオシンという繊維状タンパク質のタイプによって遅筋(赤筋:I型筋繊維)、遅筋に近い混合筋(Ⅱa型筋繊維)、速筋に近い混合筋(Ⅱx型筋繊維)、速筋(白筋:Ⅱb型筋繊維)の4種類に分けられる。
遅筋の割合が多い人は、「基礎代謝が高く、肥満しにくく、酸素を取り込む機能に優れていて疲労しにくい」が、速筋の割合が多い人は、「基礎代謝が低く、肥満しやすく、無酸素運動に適していて疲労しやすい」。
なお、骨格筋のミオシンは身体活動や神経活動の変化、加齢、食事、肥満によって発現量が変化し、高脂肪食では遅筋が減少することが分かっている。
また最近の研究では、赤ブドウの皮などに多く含まれているレスベラトロールを摂取することで、高脂肪食による体への悪影響が軽減できることが示されている。
そこで、レスベラトロール摂取と骨格筋の変化について調べる。
【方法】
24匹の大人のアカゲザルを以下の4つのグループに分けて2年間飼育し、骨格筋(足底筋、ヒラメ筋、長趾伸筋)の筋繊維の変化を調べた。
①若いアカゲザルに健康的な食事を与えた
②高齢のアカゲザルに健康的な食事を与えた
③高齢のアカゲザルに高脂肪で砂糖(ショ糖)が多い食事(高脂肪高砂糖食:脂質は摂取エネルギーの42.3%、砂糖は体重の27%)を与えた
④高齢のアカゲザルに高脂肪高砂糖食とレスベラトロールを与えた(レスベラトロールの摂取量:1年目は80㎎/日、2年目は480㎎/日)
【結果】
・健康的な食事を摂った高齢のアカゲザルと比較し、高脂肪高砂糖食を摂ったアカゲザルは有意に体重が増加した。
・高脂肪高砂糖食を摂ったアカゲザルのヒラメ筋においては、筋繊維が遅筋型から速筋型に変化したが、レスベラトロールを摂ることでその変化を抑えることができた。
・足底筋は高脂肪高砂糖食においても筋繊維が遅筋型から速筋型に変化することはなかったが、レスベラトロールを摂ることで速筋型から遅筋型に変化した。
【まとめ】
高脂肪高砂糖食を摂ると骨格筋が疲れやすい速筋型に変化するが、レスベラトロールによってその変化が抑えられ、筋肉が疲労しにくくなる可能性がある。
<論文要旨>
http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fphys.2016.00077/full
これは人での試験でないため、結果をそのまま人に当てはめることはできません。
しかし、レスベラトロールには抗酸化作用もあるため積極的に摂るのは良いかもしれないですね
なお、膝から踵までのふくらはぎの大きな筋肉であるヒラメ筋は、立ったり歩いたりする時など日常的に広く使われます。
足底筋は大腿骨外側上顆から起こり、アキレス腱の内側に付着している細長い筋肉であり、ひざ関節、足関節の働きに関わっています。
人でもレスベラトロールを摂ることでヒラメ筋の遅筋が速筋に代わるのを防いだり足底筋の遅筋が増えたら、より長めに活動できるだけでなく、身体活動や移動性、体の安定性の改善につながりますね
特に高齢者によさそうです
また、レスベラトロールと似た構造を持つプテロスチルベン(メチル化レスベラトロール)は働きもレスベラトロールと似ていますが、より吸収されやすく体内に留まりやすいため、レスベラトロールよりも効果が発揮されるかもしれませんね
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット(http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=54851&-lay=lay&-Find)
・金沢市医師会 サイト(http://www.kma.jp/ishikai/ishikai_0075.html)
・京都府立大学 生命環境科学研究科 分子栄養学研究室 サイト(http://nutrition.life.kpu.ac.jp/wp-content/uploads/2012/12/%E6%9C%88%E5%88%8A%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85-2015.pdf)