先日、社内で会話をしているときに「アゴニスト」と「アンタゴニスト」の話題になりました。
すると一人の管理栄養士が「アゴニストってアントニオ猪木みたいな人でしょじゃあ、アンタゴニストはどんな人だろう」と言い出したのです
管理栄養士でも薬理学の授業を受けるためご存知の方が多いかとは思いますが、すっかり忘れてしまっている人もいるようです
そこで今回は、「アゴニストとアンタゴニストとはどんなものなのか」を簡単にまとめたいと思います
アゴニストとは?
アゴニストとは、受容体に結合することでその情報を細胞の内部に伝達する物質のことを言います。
薬では作動薬とも言います。
例えば、イソプレナリンという気管支拡張剤は、アドレナリン受容体に結合してアドレナリンと似た作用を示すため、アゴニストに分類されます。
この他、糖尿病のインスリン分泌促進薬やGLP-1受容体作動薬、抗炎症作用のあるステロイド剤などもアゴニストです。
アゴニストには、完全アゴニストや部分アゴニストなどの種類があります
完全アゴニスト
細胞表面にある受容体と完全にかみ合い、アゴニストが受容体と結合している割合(占有率)にしたがって反応率が変化するもの。
最大の効果を持ち、受容体を100%占有すると100%の反応率となる。
部分アゴニスト
構造の変化により細胞表面の受容体と完全にかみ合わず、受容体の占有率よりも反応率が低いもの。
受容体を100%占有しても100%の反応率を示さない。
アンタゴニストとは?
アンタゴニストはアンチアゴニストという意味であり、アゴニストとは逆の働きをする(受容体に結合するものの細胞の内部には情報を伝達しない)物質のことです。
薬では阻害薬と言います。
例えば、プロプラノロールという不整脈用剤は、アドレナリン受容体に結合してアドレナリンの作用が起きないようにするため、アンタゴニストに分類されます。
この他、糖尿病のDPP-4阻害薬、脂質異常症のHMG-CoA(エイチエムジーコーエー)還元酵素阻害薬、高血圧のカルシウム拮抗薬などもアンタゴニストです。
アンタゴニストには競合的アンタゴニスト、非競合的アンタゴニストなどがあります。
競合的アンタゴニスト
受容体に結合する能力はアゴニストとは変わらず、アゴニストに競合するアンタゴニストのこと。
受容体への結合力は濃度によって変化し、アゴニストの濃度を上げていけばアゴニストによって結合している競合的アンタゴニストが追い出され、アゴニストの結合が復活する(可逆的競合的アンタゴニスト)。
受容体のアゴニストの受容体に1度結合すると受容体から外れなくなってしまうアンタゴニストもある(非可逆的競合的アンタゴニスト)。
非競合的アンタゴニスト
受容体のアゴニストとの結合部位とは違う部位に結合し、受容体の性質や立体構造を変化させてしまうもの。
アゴニストの濃度を上げてもアンタゴニストが受容体から外れないため、アゴニストの反応率は回復しない。
いかがでしょうか
アゴニストとアンタゴニストについて理解が深まったでしょうか
ご存知の方は再確認としてご覧いただけましたら幸いです
(さ)
http://plaza.umin.ac.jp/ycumed/data/B2-4-1_shikeprie.pdf
科学技術振興機構 サイト
http://www.jst.go.jp/pr/info/info403/yougo.html
イラストでまなぶ薬理学 第2版(医学書院)
アステラス製薬㈱ サイト
https://www.astellas.com/jp/