昔は栄養素とはみなされていなかった食物繊維ですが、最近ではその必要性が見直されてきています
前回のブログでは、「【論文紹介】食物繊維が少ないとひ孫にまで悪影響」というタイトルで、腸内細菌の多様性と食物繊維について調べている論文をご紹介しました
今回は、「若い時の食物繊維摂取量と乳がんリスクの関係」について調べている論文をご紹介します
●高校時代の食事が乳がん発症リスクと関連する
「高校生の時に食物繊維が豊富な食事を食べていた女性は、乳がん発症リスクが低下するようだ」という内容のアメリカにあるハーバード大学からの研究報告です
【目的】
女性ホルモン量と乳がん発症は関連していると言われている。
また、食物繊維の摂取量が多いと腸管での女性ホルモンの再吸収が抑えられ、血液中の女性ホルモン量が減少することが分っている
そして胸の細胞は、特に幼少期、思春期の発がん物質や抗発がん物質の影響を受けることが知られている。
そこで高校時代(思春期や成人早期)の食物繊維摂取と将来の乳がん発症リスクの関係を調べる。
【対象】
看護師健康調査(NHSⅡ)に参加し、1991年に27~44歳だった女性90,534名。
【方法】
食物摂取頻度調査を4年毎に行い、高校生の時の食事情報は1998年に収集した(前向きコホート研究)。
また、食事内の食物繊維の摂取量と、乳がんの発症率を人種や乳がんの家族歴、体格指数(BMI)、体重変化量、月経の頻度、アルコール摂取量などの要因で調整し、乳がん発症率との関連を検討した。
【結果】
・調査期間中、90,534名の女性のうち2,833名が乳がんになった。
・思春期に食物繊維を多く摂っていた女性は24%、成人早期に多く摂っていた女性は23%も閉経前の乳がんリスクが低下した。
・思春期に1日10gの食物繊維を追加すると14%、成人早期に追加すると13%も全ての女性における乳がんリスクが低下した。
・水溶性食物繊維も不溶性食物繊維も乳がん発症リスク低下と関連していた。
・果物や野菜から食物繊維を多く摂っていると、乳がん発症リスクが低い傾向にあった。
【まとめ】
高校時代に食物繊維を多く摂ることで将来の乳がん発症リスクを下げる可能性がある。
<論文要旨>
http://pediatrics.aappublications.org/content/early/2016/01/28/peds.2015-1226
著者らは、食物繊維を多く摂ることで血中のエストロゲン値が高くなるのが抑えられ、乳がんリスクの抑制に働いたのかもしれないと推測しているようです。
ちなみに、この研究で食物繊維が多かった人は1日に25g程度の食物繊維を摂取していますが、日本人の女子高校生(15~19歳)は1日に12g程度しか食物繊維が摂れていません
そのため、今の食事にプラスして1日10g以上の食物繊維を摂ることが勧められます
10gの食物繊維が摂れる食品の目安量は以下の通りです
≪10gの食物繊維を摂るには…≫
・ごぼう 175g(きんぴらごぼう 約3.5人前)
・切り干し大根 47g(切り干し大根の煮物 約3人前)
・キャベツ 550g(約1/2個分)
・干しひじき 20g(ひじきの煮物 約2.5人前)
3食の食事毎に食物繊維を多く含む食材を使った料理を1品以上追加すれば、10gの食物繊維を余分に取れそうですね
最後に、女性ホルモンはコレステロールからできており、体内で使われなくなったものは肝臓から胆汁を介して腸へ排泄されます
しかし、胆汁(女性ホルモン)は食物繊維に吸着されて便として排泄されますが、食物繊維が少ないと再吸収されてまた体内に戻ってしまいます
この流れは一般的な血液中にあるコレステロールも体内に溜まっている水銀も同じだと言われています
女性ホルモンを過剰にしないだけでなく、コレステロール値を下げたり重金属のデトックス、腸内細菌の多様性の維持など、私たちの健康に関する様々なことに食物繊維は重要です
野菜や果物を摂っているつもりではなく、しっかりと食事に取り入れたいものです
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット 世界の最新健康・栄養ニュース(http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=53012&-lay=lay&-Find)
・平成26年「国民健康・栄養調査」の結果(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000106405.html)
・日本食品標準成分表2015年版(7訂)
・カラー版 一品料理500選 治療食への展開 第2版(宗像伸子:編著)