前回のブログでは、平成26年の国民健康栄養調査の結果をまとめ、現代人は栄養不足だと分かりました今の若者は栄養不足
その中でも触れていますが、日本人の食物繊維の摂取量は年々減少しており、成人では現状の食事にレタス1個分の食物繊維(約5g)を追加しても目標量に足りない年代もあります
今回は、「食物繊維の摂取量が少ないことは子孫の腸内細菌に影響を与える」という内容の研究論文を見つけましたので、その論文を簡単にご紹介します
●食物繊維の摂取量が少ないと子孫の健康に影響を与える
「食物繊維が少ない食生活を送っていると、子や孫の代の腸内細菌にまで悪影響を及ぼすかもしれない」という内容のアメリカのスタンフォード大学からの報告です
【目的】
腸には数百兆個もの細菌が棲んでいると言われ、その腸内細菌は人の代謝や免疫機能の調節を含む様々な役割があるが、その働きには菌の多様性が重要だと言われている。
しかし西洋人の腸内細菌は、狩猟採集民のような伝統的な生活習慣を送っている人々と比べてかなり多様性が減少している。
西洋の食事は伝統的な食事と比較して食物繊維が著しく少ないため、この腸内細菌の多様性の違いの1つは、摂取する食物繊維の量が関わっていると考えられている。
そこで、食物繊維の少ない食事が本当に腸内細菌の多様性を失わせてしまうのかを調べる。
【方法】
ヒト化マウスを2つのグループに分け、1つのグループには高食物繊維食を与えた。
もう1つのグループには高食物繊維食を6週間与えた後に低食物繊維食を7週間与え、再度高食物繊維食を6週間与えた(高食物繊維食 →低食物繊維食 →高食物繊維食)。
また、低食物繊維食を与え続けたマウスから産まれた仔やその子孫(4世代にわたって)の腸内細菌の状態を調べた。
※低食物繊維食を与えたマウスは仔の離乳後には高食物繊維食を食べさせた。
【結果】
・高食物繊維食を食べたマウスでは腸内細菌の多様性に大きな変化はなかったが、高食物繊維食から低食物繊維食に変えたマウスでは腸内細菌の種類が60%も減少し、高食物繊維食に戻しても元々いた細菌種の3分の1は戻らなかった。
・低食物繊維食を食べたマウスは、4世代に渡って腸内細菌の多様性が喪失し続け、仔の離乳後に食物繊維の摂取量を増やしても菌の多様性は回復しなかった。
しかし、高食物繊維食を食べたマウスでは、子孫の腸内細菌に変化はなかった。
・低食物繊維食を与えた4世代目のマウスに、高食物繊維食の腸内細菌を与えて高食物繊維食で育てたところ、腸内細菌の多様性が回復した。
【まとめ】
食物繊維の摂取量が足りないと腸内細菌の多様性が失われ、それは次の世代に引き継がれるだけでなく、失われた多様性は自然には戻らない可能性がある。
<論文要旨>
http://www.nature.com/nature/journal/v529/n7585/abs/nature16504.html?lang=en
日本人の食物繊維の摂取量はすべての年代で不足していますが、15歳~40歳代の不足が目立ち、最も足りないのは男女とも20歳代です
20歳代男性では7.7g、女性では6gも目標量に足りません
子供を産む準備をする年代から一般的な出産する年代で食物繊維が足りていないことが分かりますね
今回紹介した論文はマウスでの実験なので、この結果をそのまま人に当てはめることはできませんが、今の自分のためにもこれから生まれてくる子供のためにも食物繊維の摂取量を増やした方が良さそうです
また、すでに私たちの腸内細菌の多様性が失われている可能性が高いため、様々なビフィズス菌や乳酸菌などの有用菌も合わせて取り入れるのがお勧めです
ちなみにですが、体のサインから見た食物繊維の必要量は「1日に1回、規則的に排便がある」ことが1つの目安になるそうです
野菜やきのこ、海藻類を食事に取り入れて食物繊維を摂っているつもりでも、毎日定期的な排便がない場合は食物繊維が足りていない可能性があります
栄養素の補給の基本は食事からですが、有用菌のエサとなる水溶性食物繊維は食事で十分補うことが難しいため、サプリメントの活用もひとつの手です
水溶性食物繊維のサプリメント(健康食品)は、グアーガムや難消化性デキストリン、イヌリン、ペクチンなどがありますよ
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット 世界の最新健康・栄養ニュース(http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=52678&-lay=lay&-Find)
・http://www.docin.com/p-1427114489.html
・平成26年「国民健康・栄養調査」の結果(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000106405.html)
・e-ヘルスネット(http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html)