最近注目を集めている「腸内細菌」や「ベージュ脂肪細胞」ですが、これらは関連している可能性があるようです
今回は、「寒さで腸内細菌叢が変化することによる脂肪細胞への影響」について研究している論文をご紹介したいと思います
脂肪細胞については以前のブログでまとめていますので、是非参考にしてみてください白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞とベージュ細胞
※ベージュ脂肪細胞とベージュ細胞は同じ細胞を指します。
●寒さで腸内細菌が変化して脂肪が燃焼する
「寒冷刺激は腸内細菌の組成を大きく変え、この細菌によって有益な健康効果が表れるようだ」という内容のスイスにあるジュネーブ大学からの研究報告です
【目的】
脂肪細胞の中で、白色脂肪細胞は中性脂肪をエネルギーとしてため込むため肥満の原因となり、褐色脂肪細胞は脂肪を熱に変換するため肥満を防ぐ働きがある。
そして、白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞化したベージュ脂肪細胞と呼ばれる脂肪細胞も存在し、寒冷刺激や運動によって白色脂肪細胞がベージュ脂肪細胞に変わることが分かっている。
また、腸内細菌が肥満に関わっていることが分かっている。
そこで、寒冷刺激による白色脂肪細胞のベージュ脂肪細胞化に腸内細菌が関わっているのかどうかを調べる。
【方法】
6℃の寒い場所でマウスを飼育(寒冷刺激)し、エネルギーの取り込みや、体重、体脂肪量、腸内細菌などの変化を調べる。
【結果】
・10日間の寒冷刺激によってエネルギー消費量が増加し、体重や白色脂肪細胞量の増加が抑制された。
また、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)が大きく減少した。
・無菌マウスに寒冷刺激を受けたマウスの腸内細菌を移植すると、インスリン感受性が改善し、白色細胞のベージュ脂肪細胞化が増加した。
・長期間の寒冷暴露では体重減少が抑制され、腸の絨毛や微絨毛の長さが増えて栄養を吸収する腸の表面積が増加した。
また、そのマウスの腸内細菌を移植したマウスでも同様の結果だった。
・寒冷刺激によって抑制される腸内細菌のアッカーマンシア・ムシニフィラを移植すると、栄養素の取り込みが減少した。
【まとめ】
腸内細菌が人のエネルギーバランスを直接調節することで、環境に適応する能力に重要な役割を果たしている可能性がある。
<論文要旨>
http://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(15)01484-1?_returnURL=http%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0092867415014841%3Fshowall%3Dtrue
人を構成する細胞の数は約37兆個(Annals of Human Biology, Vol 40, Issue 6, 2013)ということが分かっていますが、なんと腸内細菌の数は100兆個にも及ぶと言われ、ヒトの細胞数よりも腸内細菌の細胞数の方が断然多いのです
それを念頭に置いて考えると、この論文の結果も納得がいくような気がしますね
腸内環境を整えるためには、十分な食物繊維を摂ることや、様々な種類の有用菌を普段から取り入れることが大切だと言われます
日本人の食物繊維の摂取量は年々減っており、なんと20代の女性では6g、男性では約8gも目標量に達しておらず、食物繊維の不足が深刻です
せっかく有用菌を取り入れてもそのエサとなる食物繊維がないと腸内で有用菌は生きられませんので、是非、野菜、キノコ、海藻、果物などを食物繊維が豊富な食材を積極的にお食事に取り入れてみてください
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット 世界の最新健康・栄養ニュース(http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=52368&-lay=lay&-Find)
・厚生労働省サイト(http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html)
・平成26年「国民健康栄養調査」の結果(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000106405.html)