一般的に「骨の健康にはカルシウムが良い」と言われており、年配の方で骨粗しょう症対策としてカルシウムを積極的に摂っている方が多いですね
しかし、カルシウムの摂取量を増やしても骨は強くならない(骨折は防げない)かもしれません
今回は、「高齢者のカルシウム摂取と骨折の関係」について調べている論文をご紹介します
●高齢者がカルシウムをとっても骨折は防げない?
高齢者が食事やサプリメントでカルシウムの摂取量を増やしても骨折リスクは低下せず、骨折リスクを下げうる骨塩濃度(BMD)の上昇も期待できない、ということをメタ分析で示している論文です
【目的】
食事やサプリメントでカルシウムの摂取量を増やすことで骨折を防ぐことができるのかを調べる。
【方法】
骨折とカルシウム摂取についての無作為化比較試験とコホート研究をメタ分析(ランダム効果モデル)した。
※なお、カルシウムの摂取源は食事やサプリメントで、サプリメントにはビタミンDを含むものと含まないものがあり、被験者は50歳以上であった。
【結果】
・食事性カルシウム摂取量と骨折との関係を調べた研究では、両者に関連性はみられなかった。
・牛乳や乳製品の摂取と骨折についても関連性はみられなかった。
・カルシウムサプリメント摂取では総骨折と脊椎骨折のリスクを低下させた(臀部と前腕の骨折リスクは低下しなかった)が、その結果には公平性が欠けている可能性があり、公平性に欠けるリスクが最も低い時のランダム化比較試験(4件の研究、被験者44,505名 )ではカルシウムサプリメント摂取は骨折リスクに影響を与えなかった。
【考察】
食事性カルシウムの摂取量は骨折リスクとは関連しておらず、カルシウム摂取を増加させることで骨折を防ぐ事ができるという臨床試験報告はない。
また、カルシウムサプリメントが骨折リスクを低下させるという根拠は乏しく、一貫性がない。
<論文要旨>
http://www.bmj.com/content/351/bmj.h4580
骨の構成成分は主にカルシウム、マグネシウム、リン、タンパク質(コラーゲン、オステオカルシン)などです。
そして、骨へのカルシウムの沈着にはビタミンD、コラーゲンの合成にはビタミンCや鉄、オステオカルシンの合成にはビタミンKが必要です。
さらに、食べたタンパク質(アミノ酸)を代謝して体内で新しいタンパク質に作り替えるためにはビタミンB群などが、細胞の生まれ変わりには亜鉛なども関わってきます
こうやって考えると、骨のためにカルシウムだけをとってもあまり意味がなく、様々な栄養素が必要だと分かります
不足しがちなカルシウムを意識して摂ることも重要ですが、その他のビタミン、ミネラル、タンパク質もしっかりと補いたいですね
また、骨をもろくする原因のひとつに「糖化」という現象もあります。
骨のしなやかさに関わるコラーゲンが糖化すると、骨がもろく骨折しやすくなると言われています。
体の糖化を防ぐには、「糖質を摂りすぎない」「急激な血糖値の上昇を防ぐ」「抗糖化物質を摂る」「適度な運動をする」などがあります。
栄養素の摂取だけではなく、体の糖化にも気を付けたいものです
体の糖化を防ぐ方法については、以前のブログでまとめているので是非そちらをご覧ください
体の糖化を防ぐ方法
(さ)
<参考>
・国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所HP
・http://www0.nih.go.jp/eiken/chosa/bone.html
・http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail672.html
・日本人の食事摂取基準2015年版
・アークレイ株式会社HP(http://ebn.arkray.co.jp/disciplines/glycation/ages-06/)