日本人(特に子供たちや就労者)の睡眠時間は世界で最も短いと言われています
また、女性は家事や育児の負担が大きいため男性よりも睡眠時間が短く、平日・週末を問わず慢性的な寝不足状態にあると考えられます
睡眠不足が続くと意欲や記憶力が低下することを実感されている方も多いかもしれませんが、さらに風邪をひきやすいということも調べられています。
今回は「睡眠時間と風邪の関係」について調査している論文をご紹介します
●睡眠時間と風邪
睡眠時間が短いと風邪をひきやすくなるという内容の研究です
【目的】
6~7時間未満という短い睡眠時間と断片的な睡眠は、数多くの慢性疾患の発症や進行、急性感染症の感染などと関連していると言われている。
上記のように、睡眠時間が短い場合や断片的な睡眠では、T細胞の増殖抑制、NK細胞の細胞障害性減少、炎症誘発性経路の活性化などが起きて抵抗力を下げてしまうことが分かってきている。
しかし、従来の研究では睡眠時間を自己申告してもらうという主観的な評価であり、実際の睡眠時間が不正確な場合もあった。
そこで本研究では、手首に巻いて体の動きを測定する装置(アクティグラフ)を用いて客観的に睡眠時間を測定し、睡眠と風邪の発症の関係を調べる。
【対象】
アメリカのペンシルベニア州のピッツバーグの大都市圏に住む18~55歳の健康な男性94名、女性70名の合計164名。
【方法】
客観的評価であるアクティグラフと主観的評価である睡眠日誌によって睡眠行動を1週間評価し、その後、ライノウイルスを含む点鼻薬を投与して風邪の症状を発症するかどうか5日間にわたってモニターした。
アクティグラフでは睡眠時間と睡眠の断片化を測定し、睡眠日誌で睡眠時間と睡眠効率を報告してもらった。
※ライノウイルス…
大人のカゼの2分の1から3分の1は、ライノウイルスが原因と言われている。
このため欧米では、ライノウイルスのことを(鼻)カゼウイルス( common cold virus )と一般では呼ぶ場合もある(横浜市衛生研究所)。
【結果】
・164名の参加者のうち124名(75.6%)がレイノウイルスに感染し、さらにそのうちの48名(29.3%)が風邪を発症した。
・睡眠時間が短い(アクティグラフ測定)場合、風邪の発症が有意に増加した。
(7時間以上の睡眠と比較して5時間未満では風邪の発症リスクが4.5倍、5~6時間の睡眠では4.24倍も高く、6.01~7時間の睡眠では1.66倍と風邪の発症リスクはそれほど高くなかった。)
・睡眠が断片化していることや自己申告で睡眠時間が短い場合には、風邪の感受性に影響がなかった。
※結果は、年齢、抗体レベル、性別、BMI、人種、季節、収入、教育、社会経済的地位、喫煙、身体活動、アルコール消費量、ストレス、同調性、外交性、前向きな感情とは無関係だった。
【まとめ】
6時間以下の短い睡眠時間が風邪の発症率と強く関連している可能性がある。
<元論文>
・http://docs.dpaq.de/9524-prather_et_al.pdf
睡眠時間が短いと風邪にかかりやすいだけでなく、死亡率が高くなるとも言われています
実際に睡眠時間と全死因死亡率との関係を調べた論文(Sleep. 2010 May 1; 33(5): 585–592.)を見てみると、7~8時間睡眠が最も死亡率が少なく、6時間未満や9時間以上の睡眠では死亡率が高くなると言われています。
もちろん6時間以下という短い睡眠時間はよくありませんが、9時間以上という長い睡眠時間も好ましくないようです
忙しくてなかなか十分な睡眠時間を確保するのが難しい方も多いと思いますが、できれば7時間程度は眠れるようにしいたいものです
また、休みの日の寝だめも良くなさそうですね
寝つきを良くするためのポイントには以下のようなことがあります
【寝つきを良くするポイント】
・起床時間は早く(遅くとも午前7時までに起床)
・起床後に朝日を浴びる
・日中はできるだけ体を動かす
・昼寝をする場合には30分以内
・夕食は就寝の3時間前までに済ます
・入浴は就寝1~2時間前にぬるめのお湯につかる
・就寝前はお酒、カフェイン入りの飲料を控える
・就寝時間が近づいたらテレビ、パソコン、携帯のモニターなどを見ない
・部屋を暗くして寝る
また、睡眠と関係の深い栄養素にはトリプトファンやビタミンB6、鉄などの栄養素があります
トリプトファンは睡眠ホルモンであるメラトニンの材料となり、トリプトファンからメラトニンを作り出すためにはビタミンB6や鉄などが必要です
こういった栄養素は、大豆製品や魚、肉などに多く含まれています。
ダイエットのためにと肉や魚を控えているというような方もいらっしゃるかもしれませんが、睡眠のため、健康のために是非大豆製品や肉、魚を食事に取り入れてみてください
最後になりますが、夜勤をされている方は十分な睡眠がとりにくく、ストレスも大きいと言われています
医療従事者は夜勤をしている方も多いですが、以前、医療従事者52名に当社のマルチビタミン・ミネラルを3ヶ月間摂ってもらった試験を行ったことがあります。
その結果、夜勤をしている方では以下の症状が有意に改善しました
・胃痛
・咳や痰
・下痢
・頭痛
・自信を失った
(抗加齢共通問診表)
ビタミン、ミネラルを十分に摂ることで、風邪症状、精神状態が改善し、さらに酸化ストレス度も有意に下がりました
どうしても睡眠時間が確保できない場合には、健康レベルを上げるために十分な量のビタミン、ミネラルが配合されているマルチビタミン・ミネラルを摂るのがお勧めですよ
(さ)
<参考>
・厚生労働省HP
・http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-008.html
・健康づくりのための睡眠指針 2014
・「いい睡眠があなたを10歳若くする」青木晃 著(青春出版社)