先日、静岡市内の歯科で勤務されている管理栄養士の資格を持つ歯科衛生士さんのお話を聞きました
その方の話によると、偏食の子供は口腔内の状態が良くない傾向にあるそうです
また、子供の偏食はうつや不安リスク増加にもつながっている可能性があるそうです。
今回は「子供の偏食とうつ、不安との関係」について調べている論文を見つけましたのでご紹介します
●偏食の子はうつや不安リスクが高い
食べ物の好き嫌いがひどくなると、子供の栄養状態や精神状態の悪化などの原因になるようだ、という内容の研究報告です
【目的】
幼児における食べ物の好き嫌い(偏食)は正常な発達と言われているが、偏食によって体に影響が出てしまうことがある。
中度から重度の偏食は、抑うつや不安症のような深刻な問題を引き起こし、医師の介入が必要になることがあるため、中度と重度の2つのレベルの偏食が精神障害のリスクと関連しているかどうかを調べる。
【対象】
2~5歳の子供917名。
【方法】
アメリカのデューク大学医療センターによるコホート研究。
特定の食べ物が嫌い、というレベルの偏食(例えばニンジンが嫌い、ブロッコリーが嫌い)は偏食に含めなかった。
限られた範囲の好きな食品しか食べない場合を中度の偏食とし、その中でも偏食がひどすぎて他人と一緒に食事をすることができない場合を重度の偏食とした。
【結果】
調査した集団の17.7%が中度の、3%が重度の偏食に分類された。
偏食のない子供と比較して偏食のある子供では、以下のような精神障害のリスクと関係があった。
・中度の偏食のある子供たちは、正式に精神的な障害の診断を受けることは少なかったが、重度の偏食の場合は抑うつ症のリスクが2倍以上高かった。
・中度と重度の偏食では、抑うつ、全般的不安障害、社交不安障害のリスクが有意に上昇した。
・重度の偏食では、分離不安障害と注意欠陥多動性障害のリスクが有意に上昇した。
【まとめ】
中度から重度の偏食は、うつ、社交不安障害、全般的不安症状といった精神的障害の症状のリスク上昇と関連していた。
米国の最新の精神障害の診断と統計マニュアルによれば、中度から重度の偏食は、回避性・制限性食物摂取障害(ARFID)に分類され、中度の偏食であっても医療が介入すべきである。
<論文要旨>
Psychological and Psychosocial Impairment in Preschoolers With Selective Eating. Pediatrics. Published online August 3, 2015
今回紹介した論文はアメリカ人を対象としていますが、静岡市の保育園児を対象に偏食と生活環境との関連を調べた調査も発見しました(Jpn J Health & Human Ecology 2008;74(6):279-289)。
この調査では3~6歳の保育園児1,161人を対象に体格、健康状態、生活習慣、食事の状況、授乳方法や離乳食の与え方、子供の食事で困っていることなどをアンケート形式で質問しています。
アンケートの結果、偏食がある幼児では以下の様な特徴がみられました
<3,4歳児>
・離乳食開始時期が「分からない」または「生後7か月以降」
・授乳方法が人工乳
・親子で食事作りをすることがほとんどない
・夕食を摂る時刻が決まっていない
<5,6歳児>
・朝食を「時々食べる」または「ほとんど食べない」
・親子で食事作りをすることがほとんどない
・離乳食期に食品の種類を増やすことを心掛けなかった
また、偏食がある場合には「虫歯」「やせ型」「食欲がない」割合も高いようです。
家庭では、子供が食べ物に興味を持てるように食事を一緒に作ったり、家庭菜園で野菜を育てたりするのもよさそうですね
私も子育てをしながら働いているのでよく分かりますが、子育てをしながら家事や仕事をこなしていくのはとても大変です。
しかし、子供の健康のために「朝食を食べる」「休みの日には子供と料理をする」「食事を用意する時に品数を一品増やす」など、今の状況を考えて無理のない範囲でできる事から始めてみてはいかがでしょうか
ちなみに、偏食とは「特定の食品を嫌ったり、反対に極端に好むために食事が偏ること」と考えられていますが、はっきりとした定義はありません
子供には何でも食べて栄養をしっかりと補給し、元気に成長してほしいと願う事もあると思いますが、幼児は、食品本来の味、匂い、食感(舌触り)などの影響で野菜類や魚、肉類を嫌う傾向にあります
単なる「ピーマンが嫌い」「魚は嫌」というレベルの好き嫌いは、年齢が上がるにつれて食体験が広がると食べられるようになることが多いため心配し過ぎる必要はないと思われます。
しかしあまりにも偏食がひどく、「好き嫌いが多すぎて、代替する食品がない」、「お菓子しか食べない」など体の成長や生活に支障が出てしまうような場合には専門家(保健所や掛かりつけの小児科)に相談することも大切です
もし心配な事があっても、お母さん一人で悩まないでくださいね
(さ)
<参考>
・リンク・デ・ダイエット 世界の最新健康・栄養ニュース
・http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=50483&-lay=lay&-Find