一般的に窒素酸化物は光化学スモッグや酸性雨の原因のひとつとなる大気汚染物質ですが、その中でも一酸化窒素(NO)は体内でとても重要な働きをしています。
みなさんは一酸化窒素が体内でどんな働きをするのかご存知でしょうか
そこで今回は、「体内で一酸化窒素がどのように働いているのか」を簡単にまとめたいと思います
●一酸化窒素とは
窒素(N)と酸素(O)から成る化合物で、酸化窒素とも呼ばれ、常温において無色、無臭の気体で存在します。
一酸化窒素の他に酸化窒素には一酸化二窒素(N2O)、三酸化二窒素(N2O3)、二酸化窒素(NO2)、四酸化二窒素(N2O4)などが知られていますが、特に環境問題に関連する窒素酸化物をNOx(ノックス)と呼ぶことがあります。
体内では、活性酸素でもありますが、細菌やウイルスを攻撃したり、血管拡張作用があったり、神経伝達物質としても働きます。
●注目の血管拡張作用
一酸化窒素の働きの中で、血管拡張作用に着目してその作用を説明します
体内で一酸化窒素はアルギニンや硝酸から作られます。
一般的には酸素(O2)がある状態でアルギニンから作られることが多く、アルギニンから生成した気体の一酸化窒素は主に血管内皮細胞から拡散します。
一酸化窒素が血管平滑筋細胞に到達すると、c-GMPと呼ばれる物質を増やして筋繊維を緩めるため血管が拡張するのです
【一酸化窒素の筋弛緩作用】
●体内での一酸化窒素の合成
上記でも説明した通り、体内では主に一酸化窒素合成酵素(NOS)によってアルギニンから一酸化窒素が作られます。
このアルギニンは食事で補われる他に尿素回路と呼ばれるアンモニアを尿素に変えて無毒化する経路においてオルニチンやシトルリンなどからも作られます
そのため、一酸化窒素の量を増やして血管を拡張し、血流を良くするためにはアルギニンの他にオルニチンやシトルリンなどを補給するのが良いと言われています
【尿素回路】
<アルギニンが多く含まれる食材>
赤身の肉・魚、大豆製品、ナッツ類 など
<オルニチンが多く含まれる食材>
しじみ、魚、チーズ、エノキタケ など
<シトルリンが多く含まれる食材>
スイカ、キュウリ、ゴーヤ、メロンなどのウリ科の植物
今の時期はスイカやキュウリ、ゴーヤなどウリ科の野菜が旬で栄養価が高いです
ゴーヤチャンプルーに豚肉と豆腐、エノキタケ、チーズなんかを入れるとアルギニン、オルニチン、シトルリンが補給できて良いと思います
一般的にアルギニンはあまり注目されない栄養素ですが、血管拡張作用以外に成長ホルモンの分泌促進やコラーゲンの合成促進、創傷治癒などの効果も知られています
是非、積極的に補ってみてください
※ヘルペスウイルスが増殖する際にアルギニンを必要とするため、理論的にアルギニンを摂取することでヘルペスの感染症を悪化させてしまう可能性がありますので、口唇ヘルペスなどを発症している方は要注意です
(さ)
<参考>
・コトバンク
・東洋化学株式会社のHP
・ダイナミックメディシン3 カラー版 (西村書店)
・https://www.jstage.jst.go.jp/article/radioisotopes1952/42/7/42_7_443/_pdf
・国立研究開発法人 科学技術振興機構HP
・滋賀医科大学のHP(http://www.shiga-med.ac.jp/~koyama/analgesia/subs-transm.html)
・YAKUGAKU ZASSHI 127(4)743-748(2007)
・国立健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報
・協和発酵バイオHP